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ベルリン国際映画祭コンペ選出作品たち

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カンヌ映画祭のコンペ制覇にあわせて、ベルリン映画祭のコンペもゆるゆると書いていきます。2020年から始まったエンカウンターズ部門の記事も入れます。
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2023年10月の記事一覧

Alexandr Zolotukhin『Brother in Every Inch』ロシア、飛行訓練生の双子兄弟の絆

2022年ベルリン映画祭エンカウンターズ部門選出作品。アレクサンドル・ゾロトゥキン(Alexandr Zolotukhin)長編二作目。エンカウンターズ部門ががソクーロフ門下生の登竜門になりつつあるの、良き。と言いつつ、ウクライナ侵攻の直前にプレミアとなった結果、そっ閉じ状態で長らく放置されてしまっているようにも見える。理由は簡単だ。空軍のパイロット候補生たちの物語なのだ。主人公はアンドレイとミーチャという双子兄弟。あまりにもそっくりな上に、映像上で二人は区別されていないので

バス・ドゥヴォス『Here』ベルギー、世界と出会い直す魔法

人生ベスト。2023年ベルリン映画祭エンカウンターズ部門選出作品、作品賞受賞作品。バス・ドゥヴォス長編四作目。上映前メッセージでは"間違えて車から投げちゃってインカメ壊れちゃったんだ~"と謎のお茶目さを披露しながら、苔についてアツく語っていた(こんな人なんだ)。物語はブリュッセルに暮らすルーマニア人建設労働者シュテファンの日々を追っている。夏季休業によって4週間の休暇を言い渡された彼は冷蔵庫を空にするためスープを作り、世話になった人や友人たちに配り歩く(エンドクレジットにはス