三年千篇のツイッター小説 散の100篇

1日1篇、1ツイート分の長さの小説をツイッターに投稿している。この度どうやら300篇まで溜まったらしい。殊勝なことだ。前置きはともかく、ツイッター小説201篇から300篇までを始めよう。

201

刺すような日差し。まとわりつくような空気。ひまわりの畑は外から見れば綺麗だけれど、背よりも高い花たちはまるで迷路のようで。世界に一人だけ取り残されたようで。そのとき現れた君の、手を引いてくれた感触も覚えているのに、顔さえも思い出せない。白く揺れる夏のまぼろし。
#ツイッター小説

202

人類の存続を賭けた宇宙人との交渉は大成功に終わったのに、帰還した彼女は涙目で所長をひっぱたいた。
「ひどいなぁ」
頬をさする所長に副所長が訊ねる。
「なぜまだ新人の彼女を交渉役に?その……彼女が美人だからですか?」
「いや?向こうさんケイ素生命体だってことだし」
#ツイッター小説

203

「なんでそんなに悲しそうなの?」
聞かれた少女はむしろ不思議そうに答える。
「楽しい気分は高くて買えないじゃない」
そう言って気分屋のワゴンを見やった。
「買わなくても、自分で作ればいいじゃないか!ほら!」
そう言って笑う少年。銃声。
「駄目よ。気分の密造は重罪だもの」
#ツイッター小説

204

「世界の終わりツアー?また物騒なもんを持ってくるなぁ」
「ほら、VRMMOブームでVRワールドが乱立したでしょ?その日サービス終了するどこかのVRワールドに連れてってくれるんだって。ザ・シードが作る世界の終わりの『黄昏』って、ほんとに綺麗なんだよ。そこに二人きりなんて」
#ツイッター小説

205

「巨大フレア磁場嵐のせいで電磁的な記録が滅茶苦茶になって、残っているものが『事実』なのか『虚構』なのかが分からなくなった」
「それがどうかしたか?」
何を今更とばかりに言うお前にため息を吐く。
「それだけじゃない気がするんだよな……」
お前、ラノベの主人公だっただろ?
#ツイッター小説

206

「入るよ」
叱るように妻に言われて入った子供部屋では、みがわりだきぐるみが机に向かい座っていた。俺はみがわりに言う。
「宿題をやらなかったの?」
「だって、時間がなかったんだもん」
ベッドから娘の声。こうされると厳しくできないのは、このみがわりが僕のお下がりだからだ。
#ツイッター小説

207

「私のどこが好き?」
「弱ったな」
「?」
「どこが好きとか分からないんだ。強いて言うなら、『僕を嫌わないところ』かな。もし君より先に告白してくれる子がいたら、僕はその子と付き合ってたと思う
……でも、世界で初めて僕を好きになってくれたのが君で本当に良かったと思う」
#ツイッター小説

208

「早く早く!」
「お!こたつじゃん。……って電源も入ってないなら意味ないじゃん」
「だから火属性の能力のあんたを呼んだんでしょ。ほら、早く入ってよ」
「俺、温める側なの!?誰が……………分かった」
そう言って、もぞもぞとこたつの中に入った。
「はぁ〜あったかい」
#ツイッター小説

209

高校をサボるまで、こんなところに喫茶店があるなんて知らなかったのだけれど。
「杏奈ちゃんが来てくれるようになって助かったよ。マスター、奥さん亡くなってから店開けないんだもん」
「それって」
「違うよ、もっと実務的な理由。……僕は宗教上の理由でコーヒー飲めないからね」
#ツイッター小説

210

「くっ!ハニートラップになんか屈しないぞ!」
「無駄よ。私は我が国の遺伝子技術が導きだした『最高に相性がいい相手』だもの。貴方と私はどうしようもなく惹かれあって……ドキドキして顔も見れないんだけどどうしよう?」
「知るかよ!結婚でもするか?」
「お願いしましゅ……」
#ツイッター小説

211

「図書館で迷子になった?ずいぶん珍しいですね」
「正確には、図書館で小説の中に迷い込んで出られなくなったんです。どこまで行っても、どこまで行っても小説の中なんです」
「え?どういうことですか?意味がわかりませんが」
「今だってそうです。私は小説の中から出られない。」
#ツイッター小説

212

今の総理大臣、日本をすべての子どもが夢を叶えられる国にしますって公約で、圧倒的な支持を得て当選したんだけど、取った政策は国営放送のテレビドラマ製作の強化で、そのドラマの影響でうちの子は将来トラックの運転手になると言って聞かなくなったんだけど。
#ツイッター小説  #一文SF

213

「男女の間に友情は不可能だ」と言い切ったのはオスカー・ワイルドだったけれど、友情と恋愛の区別が付くだろうか?例え同性の友人だって、知らない相手と仲良さげに話していれば胸が痛むし、遊びに誘う時は手が震えてしまう。
なんて、宇宙人狼に誘おうとしたLINE画面を睨んでる。
#ツイッター小説

214

「幽霊ってのは流行に敏感だよな」
「どういうこと?」
「心霊写真とか、呪いのビデオとか、新しいテクノロジーが出てくるたびに対応した心霊現象が生まれるだろ」
「そうかもね」
「……だからって、VRでワールド丸ごと地縛霊になってるなんて。いったいここはどこなんだよ」
#ツイッター小説

215

「——そうして私は耳かきで世界を救い、帰ってきたのでした」
マックで対面に座る後輩が自慢げに胸を張る。
「なんで帰ってきたの?向こうなら何でも叶うだろ?」
訊くと、後輩はむくれる。
「先輩の馬鹿…ほら、行きますよ」
「何処に?」
「先輩の家です。耳かきする約束でしたよね」
#ツイッター小説

216

打ち捨てられた社に、場違いに真新しい巫女装束を着た少女が座っている。がさがさという音の後、茂みから現れた初老の男性は、目を丸くした。
「君、昔ここで男の子に会わなかったかい?」
「昔?会わなかったわ」
落胆を滲ませる男に少女は続けた。
「30年前なんて、つい昨日だもの」
#ツイッター小説

217

落ち着いたら、パニックもののテレビドラマを作ろうぜ。いつかの火星戦争のラジオドラマみたいに、ニュース番組のていでさ。終わった時に、全部嘘だったんだ、私たちはちゃんと乗り越えたんだって安心して笑えるような。だから、早く治してそんなとこ出てこいよ。なあ。なあ。
#ツイッター小説

218

「野球選手の何がそんなに偉いんだ。あんなのただ棒振り回すのが上手いだけじゃないか。人類全体に対してなんの役にも立ってないのに、なんであんなに金もらってるんだ」
「いや、だからだよ」
「?」
「棒振り回すしか能がない奴を普通の会社で雇ってみろ。どれだけの損害が出るか」
#ツイッター小説

219

「イヤホンがワイヤレスになって残念なのは、片方ずつ分け合って聴く時に肩を寄せ合う必要が無くなっちゃったことだね」
「そう?あれを見て」
指差す先を見ると、カップルらしき男女が数m離れて手を振っていた。
「すごい!ここまで聞こえる!」
「あれを見てどう思う」
「馬鹿だと」
#ツイッター小説

220

読むかい?その本を。その本は、私の全てだ。私がこれまで生きてきた中で体験したこと、感じてきたこと、考えたことが全て克明に記されている。私の人生といってもいいだろう。……では、私の全てを知っている君はもはや私といってもいいのではないか?安心してくれ。君で4人目だ。
#ツイッター小説

221

「今ガム噛んでるんだけどさ」
「うん」
「吐き出すための紙が無くて」
「計画性がない」
「それで思い出したんだけど、ガムとチョコって一緒に食べるとガムが溶けるんだって」
「へえ」
「もしかして今ちょうどよくチョコを持ってたりしない?」
「まわりくどい。出してから食べて」
#ツイッター小説

222

「寄り、引き……」
猫背で机に向かいながら呟く幼馴染に私は尋ねた。
「何してるの?」
「今書いてる小説でカメラワークを意識しようと思って。最初の文で細部を描写して読者を引き込む。その後状況を説明してから、また細部。最後に全体を俯瞰させる。このツイッター小説みたいに」
#ツイッター小説

223

「ふぅ……」
やたらと気疲れした私は大きなため息を吐いた。
「姉貴、どうかした?」
「あ、おかえり。……さっきまで、彩ちゃんの胸揉んでた。おっきくなりたいんだって」
「はぁ!?あいつ、俺が揉むって言った時は好きな人じゃないと効果ないって断ったのに」
#ツイッター小説

224

「雪女だっているんだから、そりゃ、雨女だっていますよ」
6月の雨の下、傘を差しながら彼女は言った。
「いいですよね、雪女は。好きな相手を氷づけにして、ずっと手元に置いておけるんですから。雨じゃ、せいぜいちょっと陰気な気分にできるくらいです」
「でも、僕は雨が好きだよ」
#ツイッター小説

225

あらゆる電磁的なジャミングを無効化し、侵入者を排除し続けた警備ロイドを、必死に一体鹵獲して解体した俺たちは絶句した。
「なんてアナログな」
CPUの代わりにあったのは、精巧に溝の掘り込まれた水晶板だった。つまり、からくり人形。
「AIがデザインした兵器がこれとは皮肉だな」
#ツイッター小説

226

「先輩、手を繋いでもらってもいいですか?」
俯きながらいう後輩に、俺は黙って手を差し出した。
「……辛いことがあった時は、アンパンマンたいそうを思い出すようにしてるんです」
「もし自信を無くしてくじけそうになったら いいことだけいいことだけ思い出せ、か。実用的だな」
#ツイッター小説

227

「TPOってものを知ってる?」
「ええ、もちろんです」
そう答えながら、メイドがポットからお茶を注ぐ。ポットを高く持ち上げながら、細い滝のように。
「ですので夏であれば紅茶よりも良く冷えた麦茶の方がよろしいかと思いまして」
「……麦茶はその注ぎ方しなくていいでしょうよ」
#ツイッター小説

228

地球はかつて、自分の体の何万倍以上も大きい、自律的に動くことのできる建築物を作ることができる生物が支配していたのだけれど、いつしかその建築物には「意識」のようなものが宿り、自らを一個の生物と誤認しだした。
かつて支配していた生物は、名をミトコンドリアと言うらしい。
#ツイッター小説

229

「うーん」
「どうしたんですか?先生。そんなにうなだれて」
「お手本を呼びかけても、生徒がなかなか挙手してくれなくて」
「そういうものですよ」
「調理実習なんて、楽しいものだと思うんですけどね」
「待ってください。何を作ったんですか?」
「コロッケを」
「おおっと?」
#ツイッター小説

230

負けだ。ほんと、俺の負けでいいから。もう何年やってるんだよ。だいたい「パンはパンでも食べられないパンってなーんだ?」なんて、ベタななぞなぞじゃないか。だから、フライパンは食べられることを証明しようとするのをやめろ。わかったからやめてください。火にかけるな!!
#ツイッター小説

231

「お前たち6人にも、俺の『本当の異能』のことを教えたことはなかったな」
「え?あなたの『パワーオブパワー』は、『他人の64倍の身体能力』でしょ?」
「違う。俺の『冪乗の力〈Power of Power〉』は、『守りたい人間の数だけ身体能力を倍にする能力』だ」
そう言って彼は空を見た。
#ツイッター小説

232

「うーん」
「どうかした?」
「ニューラルネットワークを使って簡単なおみくじプログラムを作ったんだけど、なんか偏りがある気がするんだよね。もう1000回引いたのだけど」
「どれどれ?……たしかに妙だな。こんなことがあるものなのか」
「何?」
「恋愛運最高がひとつもない」
#ツイッター小説

233

「どうしたの?そんなところで突っ立ってたら遅刻するよ?」
「……スマコンが壊れたみたいで、信号が見えない」
それを聞いて私は目を丸くした。スマコンが無いなんて想像もできない。
「OK」
私は手を差し出す。
「お前……そんな顔してたんだな。こっちの方が好みだ」
「もう!」
#ツイッター小説

234

「ここに私の理想郷は完成した!もはや誰も喪うことも喪われることもなく、心を引き裂かれるような痛みを味わわずに済むのだ!」
「馬鹿を言うな!その痛みがどれだけ厭わしかろうと、私たちはそれを味わうためにこそ生きているのだ!血は、流れてこそ熱く赤いことが分かるのだ!」
#ツイッター小説

235

「ボトルガムに付いてる捨て紙は、絶対に使い切れないようにできてるんだよ」
と言う彼女の言葉を思い出して、1枚1枚剥がして床に敷き詰めていったら寝室から溢れて廊下を埋め尽くし、リビングに届いたところで怖くなってやめた。散らかした紙を集めると12籠もあった。
#ツイッター小説

236

「彼らは何をしているんだい?不思議な形の棒を振ってから、何度もぐるぐると周る人を中心に、たくさんの人が熱狂的な叫び声をあげている」
「見てわからないのか?明らかに宗教的な儀式だろう。神獣である『虎』に祈りを捧げているのさ」
甲子園球場を覗き込んだ宇宙人はそう話した。
#ツイッター小説

237

「お父さん!『ユートピア』ってどんなところだと思う?」
「ん?アーカイブで読めばいいんじゃないか?」
「あんなのじゃなくて!ほんとの楽園のこと!」
「そうだな……明日の食事に困らないところかな」
「えー!それじゃ今と変わらないじゃん。私はね、花が咲いて、毎朝太陽が—」
#ツイッター小説

238

鰻食文化が失われないように、鰻を焼く火が消えないように、人的経済的な支援を惜しまず続けていたが、炉を団扇で仰ぎ続けたが遂にうなぎを食べることはできなくなった。
それはそうだよな。考えてみれば、鰻屋はうなぎを焼いているだけで、うなぎを作っているわけじゃないんだから。
#ツイッター小説

239

自由端反射の例をみれば分かる通り、世界の終わり、時間の切れ端に到達した世界は、そこから全く時間の流れを逆回しにしたように動いていくのだ。それを無限に繰り返している、いや、重なって定常波となっているのが、なりうる周波数の波動関数の集まりが世界というものなのだ。
#ツイッター小説

240

「優勝はこの娘だ」
次の神を決めるデスゲームに乱入した男が言った。
「ふざけるな!」
神速の居合が男を捉える。が、消し飛んだのは刀だった。
「な?神は強くなくていいんだ。誰も敵わないんだから。でも、神は世界の全てを見て『よし』とできないといけない。この娘がそれだ」
#ツイッター小説

241

「あなたの絨毯は素晴らしい!ぜひその秘密を知りたいものです」
「願ってもないことです。まあ、私もこの生き物は拾ったのですが。その糸は絹より強く、金色に輝いていて——」
導かれるままに檻を覗き込む。
「しかも驚いたことに、人の子種で殖やすことができるのです」
#ツイッター小説

242

世界で最も高給取りな職業は、ゲームデザイナーになった。とはいえ、前時代のそれとは職業の内容は異なっており、『人類が直面する課題を如何に分割してソーシャルゲームのフォーマットに落とし込むか』という仕事と化している。最新にして最大の功績は、星間通信を解読させたことだ。
#ツイッター小説

243

電話で俺を呼び出した先輩は、コンクリートでできた富士山のような滑り台の麓で膝を抱えていた。
「何してるんすか」
「ここ、私が小さい頃によく遊んだ公園だったんだ。……大人になるって、悲しいことなんだね」
俺は大きな溜息を吐きながら、頼まれていた替えのスカートを渡した。
#ツイッター小説

244

「海に行きたい」
そう言った俺に、彼女が冷ややかな視線を送る。
「海に行って、何をするの?」
「……え?」
そう言われて、海での遊び方が分からないことに気づいた。そんな俺を見て彼女がため息を吐く。
「海に行きたいんじゃないでしょ、ほんとは。この変態」
#ツイッター小説

245

辣腕の新社長の就任条件は「任意の新規カードを作る権限」だったのだけれど、食事やタクシーなどの支払いにその場でさらりと描き上げた、まだ世界に一枚しかないカードを使っていたものだから、生涯に天文学的な金額が動いたという。それでゲームルールが破綻しなかったのだから驚きだ
#ツイッター小説

246

「あのな?たしかに俺はお前に『好きな人に想いを伝える方法』を聞かれて『正面からアタックしたらいいんじゃない?』とは言った。でも、それは比喩的な意味であって、そうやって本当に向かい合って体当たりしてこいって意味じゃないんだ。俺はびっくりしてる。二重にびっくりしてる」
#ツイッター小説

247

あの人に夢の出演料を払おうと思ったのだけれど、現実のあの人に払うのもおかしな話なので夢コンビニの夢ATMで振り込もうとしたら、夢日本銀行券を持っておらず、夢バイトで夢労働して夢給料を貰ったところで目が覚めた。
#ツイッター小説

248

「ダモクレスの剣。王であるとは髪の毛一本で吊るされた剣の下に座るようなものだという慣用句だ」
「それが?」
「民主主義では主権者は国民全員だ。つまり、全員が剣の下に座っている。その恐怖から、国民は独裁者を求める。俺はこれを、デモクラシーの剣と名付けた」
「駄洒落!?」
#ツイッター小説

249

「本当にどうしても避けられない別れに出会った人間は、強くなれるものなのさ」
「悲しみを乗り越えるから?」
「いや、思い出を綺麗なままでしまっておけるから」
腑に落ちない顔の君に聞こえないように僕は続けた。
「だから、僕のことなんて分からない方がいいんだ」
#ツイッター小説

250

確かに僕は、このマンションのベランダから風船に手紙を括りつけて飛ばしたことがある。これは確かに私の字だ。でもそんなものが、これから引っ越そうというこの時に私の頭の上に降ってくるなんて。まさか地球を一周してきたわけではあるまいし。中には言えなかった思いが入っていた。
#ツイッター小説

251

「知恵の実がりんごとされてるのって、剥かなくても食べられるからだと思うんだよ!もしみかんとかバナナとかだったら、『皮むけるじゃん!もう知恵あるじゃん!』て思うでしょ?」
「熱弁のところ悪いけど、知恵の実がりんごというのは俗説で、ほんとは無花果っぽいらしいよ。」
#ツイッター小説

252

「おいおい、マジかよ」
古代ギリシャなんて洒落た時代に転移したら、もうちょっとマシな人間と成り代わる目もあったと思うのだが。けれど、伝えなければ。託されたこの言葉を。たとえその先で命が潰えることになっても。42.195kmを走ることは、私の人生なのだから
「我が軍勝てり」と
#ツイッター小説

253

「ここは……?」
目を覚ますと見知らぬ森の中だった。私の顔を覗き込んで、耳の長い美女が言う。
「はぁ、またトラックに轢かれて転生してきた人間ですか?」
「いや、私は……サメに」
「サメに!?」
「宇宙から来た双頭のロボシャークに」
「もうそっちの方を小説にしなさいよ!」
#ツイッター小説

254

「すごいものを発明したよ!冷たいコーヒーにミルクを注ぐだけで、温かいカフェ・オ・レにする装置!」
「なんてしょうもない……原理は?」
「コーヒーとミルクが混ざるというエントロピーの増加と引き換えに、同じだけのエントロピーを周囲の系から奪って温度差を作るの」
#ツイッター小説

255

散る途中の桜の花びらを捕まえられたら願いが叶うと聞いて。
「ああ!そんなに早く手を伸ばして掴めるわけないじゃん!」
「けど、手を伸ばさないと掴めるはずないだろ」
俺がそう言うと、君は俺の頭に手を伸ばして
「そうでもないよ」
ピンクの花びらを渡した。
桜は幸せに似ている。
#ツイッター小説

256

「見ましたか?あの私の同じ姿のアンドロイドの群れを。私は、何者なんでしょう?」
「それには500年前に答えが出ている。『コギトエルゴスム』だ」
「こぎ……?」
「『我疑う、故に我あり』という意味だ。お前が何者かと問うことこそが、お前が唯一無二のお前である証明なんだよ」
#ツイッター小説

257

「AかBか、という二者択一は出題者が意図的に選択肢を削っている可能性がある。AもBも、というのは選ばないということではなく、両方を選ぶという立派な選択だと思うんだ」
「素敵!哲学的でかっこいい!それを言ってるのが二股がバレたこのタイミングでなければの話だけど」
#ツイッター小説

258

「君が望むなら、世界だって敵に回してみせる」
「いや、なんで私がそんなこと望むのさ?私はそんなこと望まないよ。単に、あなたが世界を敵視してるだけでしょ」
「いや……」
「じゃあ私が『世界を味方につけて?』って言ったらやってくれるの?」
「ぜ、善処する……」
#ツイッター小説

259

透明人間を見たことがある。血塗れで道路に倒れて、声も出ない様子だった。何故透明人間だと分かったかといえば、道を行く他の誰にもそれが見えていないようだったからだ。誰かが助けないと今にも死んでしまうというのに。だからあれは透明人間で、透明人間だから私にも見えなかった。
#ツイッター小説

260

愕然とした。部屋の中を見回しても、無いのだ、自分で買ったものが。何不自由なく過ごしているうちに、取り巻くものたちは全て両親兄姉からの貰い物になっていた。
「……そういえば、私自身も貰い物か」
この命だって自分で手に入れたのでは無い。そう考えるとむしろ落ち着いた。
#ツイッター小説

261

「傘、飛べるんだろう?なんで飛ばないんだ?」
「今はまだ、時期じゃありません」
レースのついた瀟洒な傘を両手で持って彼女は言った。
彼女は春風に乗ってここを去るのだという。身を切る冬が続いて欲しいと、日に日に緩んでいく日差しが恨めしいと思ったのは初めてのことだった。
#ツイッター小説

262

「子供の頃の夢の話をしよう」
「なんで今?」
「俺は昔、流れ星を捕まえることが夢でな。それでこんなとこまできたわけだが」
彼は俺を突き飛ばし、シャッターを閉めるボタンを押した。
「まさかこんな形で叶うとは思わなかった!」
そして彼は小惑星の軌道を変える宇宙船に残った。
#ツイッター小説

263

「お前だって人間だろうに、なぜ人類を滅ぼそうとする!」
「……猫を知っているか」
「ねこ?」
「あんなに可愛らしい生物が、かつて地球にはいたのだ。だが絶滅した。人類による気候変動で。猫だけじゃない。地球第6の絶滅期を引き起こしながら、人類が生きていていい理由はない!」
#ツイッター小説

264

「カマキリっていいよね。生まれ変わるならカマキリがいいな」
そう言う僕に君は眉をしかめる。
「それ、私以外には言わない方がいいよ」
隠しきれない嫌悪感が、君が僕のことをよく分かっていることを示していた。そんな君にだから、僕は食べられてもいいと思ったんだ。
#ツイッター小説

265

この日のために生まれてきたんだと思った。全てを懸けて走り切ろうと思った。そして、たしかに俺はやり遂げた。それから時が流れて、俺は知った。「生まれてきた目的の日」が「生きる最後の日」でなくてもいいことを。生きる目的なんて、無くていいのだ。猫は膝の上で丸くなった。
#ツイッター小説

266

「なんでこんな所まで来たの?チートも持ってないのに、そんなに傷だらけで」
「……君を守りに来た」
「何から?私は最強だよ」
「君から。——死ぬ気だろ?」
「……この世界のマナは、千年毎に召喚される勇者の体からできてるんだって」
「世界の為の君じゃない!君の為の世界だ!」
#ツイッター小説

267

君が眼鏡を外すと、どきどきする。素顔も素敵だというのはあるけれど、君がこうやって、僕のお腹に顔を埋めてじゃれついてくる前触れだからだ。
「みがわりだきぐるみ〜〜。今日も疲れたよ〜」
ベッドに身体を投げ出しながら君はそう言った。
#ツイッター小説

268

「別れっていうのは、辛いことではあっても、悪いことじゃないんだ。すべてのものは変わりゆくんだから。永遠に続いて欲しいと思える一瞬に出会えたことは、それだけで素晴らしいことなんだよ。
……だからいい加減機械学習で作るHな画像の女の子が目隠れじゃなくなった愚痴はやめろ」
#ツイッター小説

269

「やあ、元気してた?」
春、日差しが暖かくなるとあなたは私の部屋に来る。
「……どうしてあなたは春に来るの?寒くて本当に辛い時には来ないのに」
「……本当に辛い時には、どこにも行けない。ただ少しだけ、歩く元気が出た時には、君がどこかに行ってしまうかもしれないだろ」
#ツイッター小説

270

「あなた、ちょっと聞いてくれる?」
「どうかしたのか?」
「この間、たかしと図書館に行ったのだけれど、その時にたかしが借りた本がね……」
「読みたい本を読ませてやればいいじゃないか。なんて本だい?」
「『図説 尻叩きの文化史』」
「たかし!ちょっと起きてきなさい!」
#ツイッター小説

271

「なんであんな奴と私がペアなのよ!」
「不服か?」
「アイツなんて、動機も何もなく、ただ乗れるから龍に乗ってるだけじゃない!甘ったれてるったらありゃしない!」
「そうだ。君ならそれが分かると思って組ませた。彼は特別な動機もないのに、当然のように危険に身を晒す」
#ツイッター小説

272

「そりゃ怒るよ。恋人同士なのに、全然僕のこと可愛いって褒めてくれないじゃないか。……何?外見を褒めるのは浅い感じがして嫌?はぁ。いいかい?可愛いは作れるけど、作らなきゃなくなるんだ。その努力と献身を褒めてくれてもいいんじゃないか?」
そう言ってキスをした。抱き枕に
#ツイッター小説

273

駆け抜けて、ふと我に帰って、歩調を緩める。たしか私はさっきゴールテープを切ったはずなのに。それでも道は前に伸びている。どこまで行くのと、問いかけるのは風だろう。どこまで行こうか、風と一緒に。もし風が吹いていなくても、私が前に進みさえすれば、風はいつも隣にいるのだ。
#ツイッター小説

274

「あれ?あの人は……」
「お母さん、詐欺師のおじさんのこと知ってるの!?」
「そりゃ、同級生だもの」
「同級生が詐欺師になってるなんて……」
「というか詐欺師じゃないでしょ」
「え?でも『根も葉もない嘘を吐いて金を貰ってる』って」
「ふふ、そういうことか。彼は小説家よ」
#ツイッター小説

275

「夢の日記をつけるのは良くないよ。夢の日記をつけ続けると、夢と現実の区別がつかなくなる」
「でも現実が辛いなら、辛い現実を悪夢と、楽しい夢を現実と思いながら生きた方が良くない?」
……
「って話してる夢を見たんだけど」
「待って。今は本当に現実なの?」
#ツイッター小説

276

規模の経済というものは偉大で、普及の結果として月に1人分の食費に相当する維持費さえ払えば誰でもコールドスリープができるようになったけれど、まだ死が避けようもなく訪れていた時代の方が人類というのは幸せだったんじゃないかと思わずにいられない。
#一文SF #ツイッター小説

277

継続は力なりとはいうよ?いうけどさ。カップヌードルにお湯を入れてから、本来なら3分待てばいいところを3年間待つことに何を期待していたのさ?まあ、そんな馬鹿みたいな試みがたった今人類を滅亡から救ったわけだけれど、それにしたって意味が分からないよ。
#ツイッター小説

278

「ねえ、もし君が一度だけ過去に帰れるとしても私と出会ったことをなかったことにはしたくないから過去を変えたりしない?それとも、どれだけ過去を大きく変えても私たちは出会えるって信じる?」
「なんで俺がお前との出会いをそこまで高評価してると思ってるんだよ。……前者で」
#ツイッター小説

279

月曜日の夕立が好きだった。雷が鳴るような。傘を持ってきていなくて、部活も無いのに学校から帰れないあの時間が嫌いではなかった。痺れを切らして土砂降りの中を帰ると、帰り着いてからしばらくしたくらいで晴れているのだ。間の悪いことだ。そのせいで、教科書は濡れて歪んでいた。
#ツイッター小説

280

「梅の花って不憫じゃない?桜に負けないくらい綺麗なのに。桜並木の代わりに梅並木でもいいじゃん」
「そりゃ……実がなるからだろうな」
「なんで?そっちの方がお得じゃない?」
「いや想像してみろよ。6月までに取りきれなかった梅の実がぐじゅぐじゅに熟して道を埋め尽くして——」
#ツイッター小説

281

身体の気怠い昼下がり。安らかに目をつぶった君の顔を見る。寝顔を見るのなんてほとんど恋人の特権のようなものだと思っていたのだけれど、ここは部室で、まだ部員の半分は残っている。頭を寄せ合って眠る君たちに、こんな場所を作れたことを誇りに思いながら、僕は誰だかに嫉妬した。
#ツイッター小説

282

ほんの思いつきでやったことなのだ。鳩が手紙を運べるのなら、海を越えて渡りをするツバメに託せば、遠くまで言葉が届けられるのではないかと。たった一言書いた紙切れを、丸めてツバメの脚にくくりつける。ツバメは渡りの途中、その紙の重さに耐え切れず海に落ちて死んでしまった。
#ツイッター小説

283

「母様、なんで勇者様のことが好きなの?」
「……救ってくださったから。昔は世界をマナで満たすために、巫女に耐えがたい苦痛を与える儀式が行われていたの。でも、本当に必要なのは苦痛じゃなくて叫びだった」
そう言って彼女は舞台に上がる。観客の歓声。ロックンロールが始まる。
#ツイッター小説

284

数字には、特別な意味を持つものがある。例えば、『42』。これはどういう意味だろう?私が思うに、この数字が持つ意味は「自分が何を知りたいのかを知らないなら、答えだけ知っても意味がない」というものだ。人類より賢いイルカなら、別の意味を知っているかもしれないが。
#ツイッター小説

285

祖父は時折思い出したように硝子細工をする人だった。物置の奥からブンゼンバーナーを取り出して、硝子の棒や管を、髪の毛くらいに細い細工物にするのだった。あまりに鮮やかな手つきに、私は祖父を職人か、あるいは魔法使いと思っていたが、葬儀の話によると彼は化学者だったらしい。
#ツイッター小説

286

O・ヘンリーの小説、『最後の一葉』と『賢者の贈り物』以外なら何が好きだろうか?多作で全てが名作とは言わないが、現代を生き生きと描写した作品は時代を切り取ったものになる。タイピストも懐中時計も日露戦争で日本を応援するアメリカ人も、もう小説の中にしかいない。
#ツイッター小説

287

『幼なじみ』なんていう言葉には、どうしたって恋の色がついて回るもんで、10代の頃はそれで悩んだりしたものだけれど
「ただいま〜」
お互いに別の家庭を築いた後で、当然のように我が家に帰ってくる彼女の息子を見て笑う。別に恋人じゃなきゃ一緒に生きられないわけじゃない。
#ツイッター小説

288

あはは。君のこと、勝手に小説にしたのは謝るよ。悪かった。代わりに君は俺のこと漫画にしていいからさ。漫画家なんだし。でもよかった。ちゃんと成功してたんだな。君は昔から危なっかしかったからな。先輩として安心……え?後輩じゃない?エピソードが被っただけで人違い?アレと!?
#ツイッター小説

289

「飲み物には物語が伴う。紅茶に浸したマドレーヌが長大な回想を呼び起こしたように。コーヒーなら穏やかな時間が、ソーダならきらめく瞬間が蘇るものだろう」
「……じゃあこれは?」
「これこそ俺たちの物語の味さ」
眉を顰めながら、俺はドリンクバー全部混ぜたそれを飲み干した。
#ツイッター小説

290

「四元色の目。ゴッホと同じなんだろ?」
「ただの色弱」
「いや、素晴らしい個性だよ。君の絵はこんなに素敵なんだから。あ、見えない赤い糸が見えたりしない?」
そう言って貴方は小指を立てる。
「見える訳ないから」
私は嘘をついた。貴方のそれがそれだと信じたくなかったから。
#ツイッター小説

291

「俺、何のために生きてるのか分かんないんだ」
「何のために生きてるのか、なんて、分からない方がずっといいんだよ」
当時はずいぶん無責任な返事だと思ったものだけれど、そう言って微笑んだ彼女は16歳になった日に姉に心臓を提供して亡くなった。Savior Siblingというらしい。
#ツイッター小説

292

『病院内にゾンビが確認されました。病院内にゾンビが確認されました。安全が確認されるまで、病院から出ないでください』
そう繰り返すアナウンスを聞きながら、私は病室で頬杖をついて考える。“安全が確認される”というのは、どちらについての安全だろう?病院の中?それとも外?
#ツイッター小説

293

ライトノベルの神様に「あなたの作品の好きな登場人物に転生させてあげましょう」って言われたんだけど、私の作品って敵も味方もロクな目にあってなくて、「新しく書くから1ヶ月だけ待って」って言って、ウハウハなハーレム小説を書くつもりが初手で両親を殺してしまってもうお終いだ
#ツイッター小説

294

この公園には、いつだったか確かに来た覚えがある。まだ小さい頃だ。そこにいた男の人となぜか仲良くなって、その日だけ遊んだのだ。ああ、間違いない。そこにいるのはあの時の自分じゃないか。そうか、これから私が遊ぶのか。見渡すと、この公園に来ている人は全員が自分だった。
#ツイッター小説

295

「私の大事な子供たちを戦場にだと!?」
「君のロボットは最先端科学で、最先端科学は軍事利用されるものなんだよ——おい何をする!」
「全機体の権限を私に専任委譲した。愚かな人類よ、殺し合いは終わりだ。私が、私こそが、私だけが『悪』であり、お前たちの『敵』だ!!」
#ツイッター小説

296

「スマホで下火になったけどさ、やっぱり『アルバム』って大事だと思うんだよね」
「分かる。手元に物理で置いておきたいよな」
「それに、タイトルとか順番にも意味が込められているものだし」
「ずいぶんマメだね?私なんか撮った写真そのままだよ」
「写真?CDの話だよ?」
#ツイッター小説

297

部屋から出られなくなってしまったので、外を目指すことを諦めて試しに部屋の中心に向かって旅をしているのだけれど、3日ほど歩き続けて街を3つ通り過ぎた後でもまだ中心には辿り着かない。もしかしたら、部屋の中心には辿り着けないようになっているのかもと思いながら私は舟を漕ぐ。
#ツイッター小説

298

「お菓子作りが趣味なの!?女子力高いね……」
「男子も女子も関係ないだろ」
「……でも、そんな人にチョコ渡すのは、なんか気後れしちゃうな」
「い、いや!気にするとこじゃないって!チョコとケーキは別物だから!」
「急に必死になっちゃって。そんなに欲しいの?私の本命チョコ」
#ツイッター小説

299

「だって、普通に小説を書いても無数の作品の中に埋もれるだけじゃないか。それなら希少価値がついた方がいいだろ?」
「そうは言っても、全編エスペラント語で書かれた小説を誰が読むんだよ」
「す、少ないけど世界中にいるもん。日本語で書くよりいろんな国で読んでもらえるはず」
#ツイッター小説

300

どこに続くとも知れない道の上、あなたはそれを拾い上げた。それは文字だ。ということは、誰かがここにいたのだ。ここにいて、誰かに、あなたに届けとそれを残したのだ。あなたは顔をあげて再び歩き始める。その人がここにもういないということは、道はまだまだ長いのだから。
#ツイッター小説

ここまで読んでくれたのなら、私は心からの感謝をあなたに捧げたい。また100日後にここで会えることを願って。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?