三年千篇のツイッター小説 碌の100篇

1日1篇、1ツイート分の長さの小説を投稿している。

この度、600篇に到達した。ここまでくると、少しばかり恐ろしいものを感じる。

500篇までのリンクは記事末尾につけるとして、早速始めよう。

501

母の実家に帰るのは、これで2回目だ。思い出が眩しいだけに、胸が痛い。だって、あの縁側にはもう——
「いるじゃん!」
白いワンピースの彼女はビクッと震えた。そんな、もう死んでるんじゃなかったのか?
「……毎年お盆には帰ってきているので」
彼女はばつが悪そうに言った。
#ツイッター小説

502

「羊のぬいぐるみ?」
「うん。最近、ちょっと眠れなくて」
「それで羊?なんというか、安直だな」
「そんなことないよね〜、エンディミオン」
「エンディミオン?」
「うん、この子の名前。エンディミオン」
「ゆるい顔の羊にしては、なんか物々しい名前だな」
#ツイッター小説

503

「おい、何やってるんだよ」
「見りゃ分かるだろ。稲刈りだよ」
「そんなことして何になるんだよ!もう米なんて誰も買わないんだよ!政府が崩壊して、円は紙屑になったんだから!」
「それでもだよ。それでも雨は降るし、日は登るし——米は実るんだよ。なら、刈らなきゃならん」
#ツイッター小説

504

「何むくれてるのさ」
「別に。つくづく自分は脇役だなって思っただけ」
「ははっ。なぁ、ヒーローには1人ではなれないんだけど、何が要るか知ってる?」
「それは……優秀なサポーターとか!?」
「残念……ヒーローは誰かを助けて初めてヒーローなんだ。頼むぜ、ヒーローのヒーロー」
#ツイッター小説

505

「どうした?」
机に肘をついて頭を抱える俺に、椅子を引いて横に座りながら親友が尋ねる。
「可織いるだろ?」
「幼馴染の?可愛いよな」
「さっきの体育の時に、体育着の袖の中がちらっと見えて——」
「ふうん。そういや恋って字の亦って、腋の下って意味らしいよ」
「それが何!?」
#ツイッター小説

506

「すまない。このカメラも電磁兵器にやられて、中のデータは全て壊れていた」
「そうですか……」
肩を落とす女性に、復元師の男はいくらか躊躇ってから言った。
「ただ、1枚だけ復元できた」
「本当ですか!?どうして——」
「最後に表示した写真が、画面に焼き付いてたんだ」
#ツイッター小説

507

「ミッション中、家族に連絡を送っただろ?ワープを使ったから俺たちはもう地球に帰ってきてるけど、通常航行だと光速でもまだ届かなくないか?」
「そんなことか。簡単だよ。船に君の家族を模したAIが乗ってたんだ。それと、家族が受け取った連絡は、君を模したAIが出したものだ」
#ツイッター小説

508

「ある年、サンタからプレゼントが貰えなかった事があるんだ。僕はそれが凄く嬉しかった」
その言葉に私は眉を顰める。
「なんで?」
「その年は家が荒れていて、僕もとうてい『いい子』ではなかったからね。いい子じゃない僕のことも、ちゃんと知ってくれている人がいるんだなって」
#ツイッター小説

509

「幸せな、とても難しい問題だね」
僕の言葉に彼女は俯きながら頷く。
「『欠点があっても君が好き』と言ってくれる人と、『欠点があるからこそ君が好き』と言ってくれる人が現れるなんて」
僕は君の耳元で囁いた。
「じゃあ、僕が『欠点が無くなっても好き』って言ったらどうする?」
#ツイッター小説

510

種を蒔くのが面倒で、畑に生える雑草を売っていたのだけれど、ついにそれも生えなくなったから土を売り始めたら、裸になった地盤から金脈が見つかって根こそぎ掘り返して売ってしまった。別にそれはいいのだけれど、今、かつて畑を住処にしていたモグラから集団訴訟を受けている。
#ツイッター小説

511

ファミリー層向けに発売された『その人の1番幸せだった時間を映しだす鏡』は、内部的に『2番目に』幸せだった時間を映し出すように仕様変更することで発売に漕ぎ着けた。
私は、そんな仕様変更しなくてもよかったと思うのだけど。1番目だって意味合いとしては結婚式と大差ないでしょ?
#ツイッター小説

512

「なんで生きてるの?」
昼食の最中に投げかけられた唐突な問いかけに、俺はむっとしながら聞き返す。
「その質問は失礼じゃないか?」
「だって、この1週間見てるけどカレー、しかもインドカレーしか食べてないでしょ?パンとかご飯とか食べてるの?」
「……ナンで生きてるな」
#ツイッター小説

513

「ふふ、いつかと同じ顔してる」
隣でイルミネーションを見上げる君を見て、僕は小さく笑った。それから、ふと思う。
「不思議だ。思い出に残っている君の顔は、いつも僕以外を見ている」
「へ?なんて」
振り返る君を見て分かった。僕は君の目を奪う世界の全てに嫉妬していたらしい。
#ツイッター小説

514

「ああ、散々だった」
「どうした?最近見なかった気がするけど」
なじみの飲み屋に腰を下ろした悪友は、疲れ切ったように言った。
「夕張にブラックダイヤが採れた鉱山があるって聞いて行ったんだけど、石炭しかなかった」
「あー……」
黒いダイヤが石炭の異名と知らなかったか。
#ツイッター小説

515

「『バックアップが欲しい』と希望していたね?任務の困難さに鑑み、上も呑んでくれた」
薄暗い部屋の中央に寝かされていたのは『俺』だった。
「あれには、君の前日の朝までの経験が全て記録されている。これで心置きなく——」
「そういう意味じゃねえんだよ!後方支援!」
#ツイッター小説

516

「ヒーローをやってて、いちばん嬉しい瞬間っていつだと思う?」
唐突な質問に、眉間に皺を寄せて考える。
「そりゃ……手強いヴィランを倒した時じゃないのか?」
「違う違う。……ほんの小さな子供が、さらに弱い者を守るために『彼ならこうする』と立ち上がるのを見た時さ」
#ツイッター小説

517

「このサイズのケーキを50円じゃ、原価割れはしなくても手間賃だけ損だろ」
呆れたように言う黒木に、店主の大路は答えた。
「おこづかいの少ない子供にも来てもらいたいなって。ここは誰がいてもいい場所だから」
黒木は眉を顰めながら、同じ高校の女子で溢れる店内を見渡した。
#ツイッター小説

518

「だから私は『最後の魔王』として、世界中の争いを——争いの象徴である『プリン』を消し去るのだ!」
「そんなことしても無意味よ!プリンが無くなっても、人はケーキのために争うわ!」
「しかし、『些細な理由で喧嘩』の代表が『冷蔵庫のプリン勝手に食べた』なの、なんでだろね?」
#ツイッター小説

519

「だるい……」
倒れかかるように冷蔵庫を開けながら思わず呟いた。一人暮らしを初めてから、初めての37.8℃。
「なんでだっけ……」
昔は風邪を引くのも好きだった気がするのだけれど。
「……ああ、そうか。」
風邪を引いて休んだ日には、ずっとお母さんが隣にいてくれたんだった。
#ツイッター小説

520

AI中央管制により絶対に衝突しないはずの自動運転ローラーブレードが、目的地自動設定アプデ後にデータ上は大量の衝突が起きているはずなのに、その報告が無く首を傾げていたが、衝突の9割が男女間で起きていることに気づいたエンジニアは、管制AIのおせっかいさに苦笑した。
#ツイッター小説 #一文SF

521

僕の一番のお気に入りの本は、半分より先が白紙になっていた。「続きは読者が書いてくれ」という意図だと思って、最後のページまで書いたのだけれど、実は単なる落丁だったのだそうだ。そんな本がウチにあったのは、著者が父だったからだという。それは父の一番のお気に入りになった。
#ツイッター小説

522

「『自分探し』?自分なんて探さなくても鏡を見たらそこにいるじゃないか」
「それはそうだけど……君の目の色は?」
「目?黒に決まってるだろ」
「君の目はブラウンだ。黒い目の人はもっと黒いんだよ。そんなふうに、自分とは違う人を知ることで、自分がどこにいるかを知れるんだ」
#ツイッター小説

523

「ところで、2回使ったストローを他人が使ったら、何回分の間接キスとしてカウントするのが適切だと思う?」
「唐突になんですか?その質問は」
「それは、君が今何の気無しに顔を埋めたそのテディベアは、私が3歳の誕生日から毎晩欠かさずキスしながら寝ているものだからだよ」
#ツイッター小説

524

「小説の書き方がわからなくなったら、どうしたらいい?」
「書くのをやめる」
「え?」
「書くのをやめて、他のことをする。あんたが書く人なら、じきに書かずにはいられなくなる」
「ずっとそのままだったら?」
「その時はその時さ。そっちの方がずっと楽なのは確かなんだから」
#ツイッター小説

525

「ところで、ラストシーンで彼が記憶を取り戻したのはなんでですか?」
「理由?それはね……」
「はい」
「ないよ」
「はぁっ!?理由も無くってそんなご都合主義でいいと思うんですか!?」
「理由がなくて起きるから『愛の奇跡』なんだよ。理由があったら単なる現象に過ぎない」
#ツイッター小説

526

「ゲームをしよう。君が勝ったら君の願いを叶えてあげる」
「もし負けたら?
「君の命をもらう」
「願いは叶えてくれないのか?」
「当然ダメ」
「分かった。俺の願いはこの紙に書いてある」
「じゃあ、ゲーム開始だ」
「俺の勝ちだ!俺の願いは『お前とゲームをすること』だから!」
#ツイッター小説

527

燃料の噴射よりもずっと効率的な電磁場推進が普及したおかげで、個人が生身で宇宙にいくことは日常的になったけれど、その反面、地下資源の枯渇はとどまることがなく、宇宙開発黎明期に貴重な鉱物を湯水のごとく使ったスペースデブリを、人々はこぞって奪い合うようになった。
#ツイッター小説 #一文SF

528

「コラ」
机に突っ伏して寝る俺の頭に軽い衝撃が走る。俺を丸めたノートで叩いたのは、隣の席の幼馴染だ。
「学校で寝ないの」
「休み時間だしいいだろ。なんで起こすんだよ」
そう聞くと彼女はそっぽを向いたので答えが聞き取れなかった。
「……君の寝顔を他の人にも見られちゃう」
#ツイッター小説

529

「天国に愛はあるのかな」
「どうしたの?突然」
隣の恋人を見遣る。
「誰にも邪魔されないで、いつでも、いつまでも好きな人に会えるなら、何が愛の証明になるんだろう」
その言葉に私は微笑む。
「そうだね。愛は地獄にあるのかもしれない」
追手から逃れた廃墟で恋人を抱き寄せた。
#ツイッター小説

530

「お前は——」
風紀委員長は頭を抱える。
「屋上だの廃校舎だの、なんで立ち入り禁止場所にばっかりいるんだよ」
膝を抱えたまま彼女は答えた。
「立ち入り禁止の場所なら、他に誰もいないから。誰にも迷惑かけない」
「俺がいる。お前が立ち入り禁止の場所にいるなら、絶対にそこに」
#ツイッター小説

531

生まれる前から、僕の心臓は彼女のものだった。
初めて見た時、僕は君を世界で一番美しい、大切なものだと思った。それから僕は、この上なく幸せな時間を過ごした。そうだろう?完璧な終わりを約束されて、悲しみなんてあるはずがない。
僕の16歳の誕生日、僕の心臓は姉に移植された。
#ツイッター小説

532

「君って、男の人にしてはお風呂好きだよね」
「……お風呂が好きというか、自分の臭いが嫌いなんだ。血の臭いがするから」
「血!?」
「ああ、ごめん心配しないで。そうじゃない。……血は争えないというか、気がついたら父親と同じ臭いになってたんだよ。大嫌いな父親と」
#ツイッター小説

533

「やったあ!今日はクリスマスだ!当然プレゼントは用意してるんだよね?」
「はい」
「……これは?」
「栗」
「……なんで?」
「——クリスマスプレゼントを」
「——『栗で済ます』ってやかましいわ!」
#ツイッター小説

534

「ごめんね、ちょっと失敗しちゃった」
彼女が申し訳なさそうに差し出す茶色いケーキを見て、俺は微笑む。
「大丈夫、全然気にしないよ」
「かわいいピンクのケーキにしたかったのに、時間が過ぎたらだんだん黒くなってきちゃって……」
「……おい、何を入れた」
#ツイッター小説

535

一足早く合格した高校の校門に来てみると、女性が1人、桜を見上げていて息を呑んだ。この高校の制服だ。俺は慌てて自転車を降りてお辞儀する。
「春からこの高校でお世話になります!」
女性は目を丸くして、困ったように答える。
「ごめん。私はちょうど卒業したところなんだ。」
#ツイッター小説

536

「パパー!風船買ってー!」
「そうだね。風船は可愛いね。でも、風船の寿命は短いよ?今は元気に浮いてるけど、すぐに浮いていられなくなって、小さくしわしわになる。そうなったら、最後までお世話できる?お別れできる?」
「うっうっ……やだー!」
「じゃあ、今日は見るだけね」
#ツイッター小説

537

「お嬢ちゃん、綿飴ひとつどうだい?」
声をかけられて、怪訝に振り返る。
「綿飴?夏じゃないどころか雪まで降ってるのに——」
はっとして目を開く。男が悪戯に笑う。
「あら?その綿飴どうしたの?」
「もらった」
母親にそう答えて、少女は雪の積もった綿飴をそのまま頬張った。
#ツイッター小説

538

「お願い、優しい魔女さん。地上にいる王子様に、もう一度だけでも会いたいのです」
「よし、ならどこにでも行けるように、お前をサメにしてあげよう」
「サメ」
「サメになれば空も飛べるし地面も泳げるし、王子のお風呂にも行ける」
「ちょっといいかもって思っちゃったじゃない」
#ツイッター小説

539

Odd-eye Catsは明るく元気な歌担当の姉と、寡黙でクールなダンス担当妹のアイドルユニットだ。
「いつも特徴的なイヤホンをされてますね」
インタビュアーが訊ねると、姉はにっこりと笑う。
「可愛いでしょ?それに——こんなに可愛い補聴器なら、健常でもつけたいと思うでしょ?」
#ツイッター小説

540

「どうしたの?学校にも行かないで」
その声に顔をあげると、お姉さんがにっと笑った。
お姉さんは大人で、何でもできるように思えた。1人で暮らしているし、ゲームもピザも、僕が憧れていたものをみんな簡単に買ってみせた。
今なら分かる。あの日お姉さんは、仕事に行ってなかった。
#ツイッター小説

541

「はぁ……」
クリスマスはいつも憂鬱だった。ひとりぼっちだからではなく、むしろその逆なのだけれど——私の肩にはヤドリギが生えていた。毎年、私は誰かが私じゃない誰かにキスするための口実だった。だったのだけれど
「……はあ」
私は顔を赤くしながらため息を吐いた。
#ツイッター小説

542

「サンタさん……」
サンタではないけれど、大好きな人の寝顔を覗き込む。
「ひとの気も知らないで、子どもみたいな寝言を——」
「サンタさん、もう何もいりません。十分です。だからどうか、もう何も奪わないでください」
思わず息を呑む。それはサンタにもどうにもできないことだった
#ツイッター小説

543

『先輩、ふたりならできるけれどひとりではできないことってなーんだ?』
後輩からの唐突なメッセージに首を傾げる。
『答えは、ウチに来てくれたら教えてあげます。一緒にそれをしましょう』
その追伸に俺は赤面する。そして後輩の部屋。後輩は言った。
「IKEAの家具の組み立てです」
#ツイッター小説

544

「どうかした?」
デートで入ったレストランで、俯きながら黙り込む彼女に声をかける。彼女はロールキャベツを見つめていた。俺ははっとして、額を押さえる。
「箸が転んでも可笑しい年頃とはいうけど、キャベツを見るだけで赤くなるなよ。こっちまで恥ずかしくなるだろ?」
#ツイッター小説

545

「またこんな時間までそれ読んで」
そう言いながら、ベッドに横たわる彼女の手から、アイザック・アシモフの『ロボットの時代』を取り上げる。
「旦那様……『ロボットは人間に恋できない』って」
「それはただの小説だよ。現に、小説を読むロボットなんて出てこなかっただろう?」
#ツイッター小説

546

特定の周波数の音波をレーザーのように位相を合わせて上空に向けて放射することで、雲の内部の氷を共振させ、強制的に雨を降らせる技術の完成によって水不足は解決したかのように思われたが、風下にある国で雨が降らなくなり、両国の間に開戦寸前の緊張感が漂い始めた。
#ツイッター小説 #一文SF

547

「さんざん困難を乗り越えて、長い旅をして、最後に手に入るものがそれまで通りの日常と仲間との別れだけだなんて……割に合わないなって」
焚き火を前に少年が吐露すると、隣に座る少女は微笑んだ。
「そうですね。でも、貴方がくれた哀しみなら、それも愛しく思える気がするんです」
#ツイッター小説

548

開店前のラーメン屋に行列ができていて、先頭では『行列屋』と書かれた看板が掲げられいる。自信満々な店名だが、味も名前負けしていないのだろう。並んで11時、店が開く。
「何にしましょう?」
「あれ?さっきまでの行列は?」
店内は私1人だ。
「ああ、あれは行列屋さんです」
#ツイッター小説

549

「『淫紋タトゥーシール』これを好きな人のおへその下に貼れば、ものすごくエッチな気分にさせることができる」
「すごい!唯一問題があるとすれば——」
「すれば?」
「こんなもん貼らせてくれる相手はこんなもん無くてもサせてくれるだろうってことだな」
#ツイッター小説

550

狐と狸と猫が、犬に問う。
「なあ?なんで化け犬ってほとんどいないんだ?」
「何年生きても化け方ひとつも身につかないのか?まさにイヌだな」
犬は目を伏せて、静かに答えた。
「犬はな、人は化かさないんだ」
そう言って一声吠えると、小石に化けていた犬の群れが正体を現した。
#ツイッター小説

551

彼は『謎』だった。彼が謎を作るのではなく、彼自身が『謎』だった。彼は理解されることを望んだが、それに反して迷宮の中に閉じこもった。なぜならその中心に隠されたものは『悪意』だったから。宿敵が現れ、彼は歓喜した。持てる全ての謎を暴かれた時、彼は喜びの内に敗北した。
#ツイッター小説

552

長い旅のすえ、とうとう黄金が隠されているという宝箱にたどり着いた。
「やったぞ!」
水夫が喜び勇んで持ち上げて、固まる。
「軽……」
恐る恐る開けると、確かに黄金はあった。だが
「薄っ!!」
それを見た船長は目を輝かせた。
「これこそ現代では失われた最薄の金箔!」
#ツイッター小説

553

「師匠。師匠の仇、ようやく見つけましたよ」
「そうか。じゃあ、これが最後の教えだ。——俺が教えたことは忘れろ」
「何故ですか!」
「勝てないからだよ。俺じゃあ。『俺が教えたこと』じゃなくて『お前が見つけたこと』で戦え。——お前なら勝てる」
そういって、師匠は笑った。
#ツイッター小説

554

ピッチドロップ実験において、いつも目を離したタイミングでばかり滴が落ちるのは、観測者が存在することで繋がった状態で収束する量子力学的効果による現象だということが分かったのだけれど、そのことを再現性が取れる実験で確かめるために300年の時間が必要となった。
#ツイッター小説 #一文SF

555

「——つくし!ちょっとお皿取って」
「そういえば、あなたってなんでつくしって名前なの?」
居間から呼びかけられたアンドロイドにずっと気になっていたことを訊ねる。
「それは、私が全自動つくし取りロボットだからです。私の機能は全てつくしを取るためだけに用意されました」
#ツイッター小説

556

「先輩。なんで車じゃなくて原付で通勤してるんですか?寒くないんですか?」
「……いや、ほんとうにしょうもない理由だから」
「なんですか?逆に気になりますよ」
「……優しく頬を撫でてくれるなら、もう人じゃなくて風でもいいかなって」
「…………」
さすさすさすさす
#ツイッター小説

557

「さ、何が食べたい?」
初めて浴衣を着たという自称未来人の彼女に手を貸しながら訊ねる。
「あの…バナナは、チョコバナナはありますか!!」
「そこの屋台だけど…なんで?」
「世界で広くバナナが食べられていた期間って、200年無いんですよ。21世紀半ばには絶滅してしまうので」
#ツイッター小説

558

「ただいま〜」
南米旅行から帰った彼女が、はしゃいだ声でカメラの画面を見せる。
「見て!サファリに行ったらアリクイが腕を広げて歓迎してくれてね、可愛すぎて抱きしめちゃった」
「これはコアリクイなりの威嚇だと思うんだが……そんな女だから俺の恋人なんてできるんだろうな」
#ツイッター小説

559

カタッ
墓地で肝試しをする若者たちの足元から小さな音がした。
「うわぁ!」
絶叫して逃げ出す。足元にあったのは、確かに人骨だった。どうにか墓地を抜けた時、1人が言った。
「戻、戻らないと」
「何言ってんだよお前!」
「あれは、俺の骨だった!」
腕はぐにゃりと曲がっていた。
#ツイッター小説

560

「なんだ……なんだよこれ」
あまりの光景に言葉を失った。壁一面に磔にされた、この世のものとは思えないほど美しい、羽を持つ人。まさしくそれは『天使の標本』だった。
「なんでこんなことを!」
その叫びを聞いた彼は退屈そうに振り返って答える。
「天使を展翅したかったから」
#ツイッター小説

561

「地球の土地は狭すぎる。家賃払いたくない」
という口実で軌道上に工場を作った時にはみんな笑っていたが、厚さ5μmの単結晶シリコンウェハを使ったICがロールアウトされてようやく事の重大さに気がついたようだった。
このレベルの製造業には、制御できない重力は巨大な外乱なのだ。
#ツイッター小説

562

「親父、聞きたいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「昔、よく『オレンジジュース』を飲ませてくれただろ?甘酸っぱくて、オレンジ色で……でも本物とは全然違う。あれってなんだったんだ?」
「あれは、俺特製の清涼飲料水だよ。最初から言ってただろ?『俺ん家ジュース』って」
#ツイッター小説

563

「まさか、こんなに早く」
「ついこの間まであんなに元気だったのにな」
「——なあ、あいつと最後に話したこと覚えてるやついるか?」
「……いや、こんなことになるとは思ってなかったから」
「そうか、それはよかった。」
「良いわけっ——」
「——こんなに後悔してるのが俺だけで」
#ツイッター小説

564

「まいった……」
「どうかした?」
「昨日告白してきた女の子に、『これからもずっと友達でいようね』の意味で『友情』って花言葉のアイビーの花束をあげたんだけど」
「花束じゃないなそれ。葉束だな。それが?」
「……どうも、『結婚』『永遠の愛』の方だと解釈されたらしい」
#ツイッター小説

565

「知ってるか?あの暴走族のチーム名、フライングドラゴンヘッド【飛竜頭】っていうんだって」
「おう……なぜそこまでピンポイントに馬鹿な名前を……」
「いやそれがだな?あの辺りに伝説のチーム、GUN【銃】っていうのがあって、それに憧れて作ったチームなんだと」
「確信犯!?」
#ツイッター小説

566

「でへ〜」
カップを片手にだらしない笑みを浮かべる新人に訊ねる。
「どうかした?」
「ミケちゃん、可愛かったな〜。帰りもあの船ですよね?俺、猫耳族では三毛が一番好きかも〜」
私はため息をつく。三毛は原則雌だけだが、故にこそ雄の三毛は航海のお守りとして珍重されるのだ。
#ツイッター小説

567

「ドライブがデートに向いてる理由って知ってる?」
ハンドルを握る彼に訊ねる。
「高級車を自慢できるから?」
「残念。2人でも向かい合わずに同じ向きを向いていられるから」
それから、聞こえないように声を落として付け加える。
「あと、真剣なあなたの横顔を見つめられるから」
#ツイッター小説

568

「3分クッキングなんて全然3分じゃない。俺が本当に3分で完成する料理を見せてやるよ」
と見栄を切って、カップ麺を持ってきたのだけれど、お湯を沸かすのに1分経過しカップ麺も完成しなかった。
「貸してみな」
そのカップ麺のスープに、卵を溶いてチンしたら3分で茶碗蒸しができた。
#ツイッター小説

569

「おばあちゃんが買った、『インク不要で半永久的に使えるペン……手書きなんて文化、とうの昔に廃れ切ってたから、使うことなんてないと思ってたのに……」
私はペンを握る。正体不明の侵略者の攻撃で、全ての電子機器が停止した闇の中で。私の存在を刻む。
「地球人を、舐めるな」
#ツイッター小説

570

身体を芯まで冷やす雨に打たれながら、いっそ雪が降ればいいのにと思う。雪は全てを覆い隠し、全てを隔てる。雪に埋もれた部屋の中は、外の音など届かずに、世界にたった1人になったかのように思う。
寂しさなんて感じないほどに、ひとりきりになってしまえばいい。
#ツイッター小説

571

「……なんというか、あれだな」
最後の戦いへ向かう前の挨拶に、久しぶりに顔を合わせた父親は困ったように笑いながら言った。
「君を守って、教えて、支えることが僕の役目だと思ってたんだけど、僕は異世界で戦ったことないしなぁ〜。……行ってきなさい。そして、帰ってきなさい」
#ツイッター小説

572

物語の力は強力で、AIの自動運転によって交通事故なんてほとんど根絶された現代においても自動車保険の需要が増えているのは、1クールに最低2つの交通事故を取り扱ったドラマがあるからなのだが、その番組は需要喪失のリスクを予測した保険会社がスポンサーとして作っている。
#ツイッター小説 #一文SF

573

笑い声が響く隠れ家の中、父は苦い顔をしていた。
「おい、分かってるんだろう?奴らの手はすぐそこまで来ている。こんなのその場凌ぎに過ぎない」
母は私の頭をなでながら答えた。
「だからなんだっていうの?あいつらが私たちを殺すとしても、いまここにあった笑顔は奪えないわ」
#ツイッター小説

574

「何してるの?」
その声に波打ち際から顔をあげて答える。
「小説を流してたの。瓶に入れて。海の向こうで、退屈した誰かが読めるかもしれないでしょ?」
「でも、人類はもう……」
その言葉に私は小さく笑う。
「それが本当じゃなくてもいいの。誰かの役に立てたかもしれないなら」
#ツイッター小説

575

フェニックスはため息を吐いた。寿命が近づいていたからだ。いや、死ぬことそのものが憂鬱なわけではない。それはとうの昔に慣れた。彼は変わり者のフェニックスだった。
「次に生き返った時は、熱がりじゃなくなっていますように」
彼はそう呟いて炎の中に身を投げた。
#ツイッター小説

576

彼は歴史に名を残すヒーローとなった。ミュータントを育成する超人育成高校で、彼は飛び抜けた成績を残していたが、重要なのはそこではない。彼は現役の間、その能力を一度も使わなかったのだ。
能力者でなくてもヒーローになれることを、彼はその生涯をもって全ての人に示したのだ。
#ツイッター小説

577

大富豪の令嬢が言った。
「私が最も愛する甘味を持ってきた人に、私の全てを半分あげる」
誰にも分からない中、1人の少女が屋敷を訪れた。少女が抱えた物を見て令嬢は言った。
「……よく分かったね」
「当たり前でしょ。私があげたんだもの」
令嬢は微笑んでツツジの花の蜜を吸った。
#ツイッター小説

578

貝殻を耳にあてる。
「何をしてるの?」
「こうすると、海が聞こえるの」
それを聞いたあなたは呆れたようにため息をつく。
「貝殻から音がするわけないだろう」
「ええ。海は貝殻の中にじゃなくて、私たちの中にあるの。命は全て区切られた海なのよ。貝殻に反響させてそれを聞くの」
#ツイッター小説

579

目が覚めたら、泣きゲーの親友ポジションに転生していた。どうせなら主人公が良かったと、思ったところではたと気づいた。

それぞれのルート、選ばれなかったヒロインはどうなった?

主人公無しで、あんな試練に挑むというのか

震える体を押さえながら俺は全員を幸せにすると誓った
#ツイッター小説

580

「これは?」
ついに手に入れたゲーミングドレスについてきた、片手ほどの大きさの布について訊ねる。
「“Day1パッチ”だって。なんでもドレスの回路の設計が間違ってたらしくて、それを正しい場所に縫い付けるとちゃんと光るようになるって」
「1周回って元の意味になってるじゃない」
#ツイッター小説

581

「あの、すいません」
「何?」
「なんで戦闘用ロボットにパイロットが乗るんですか?人間を危険に晒さないのがロボットの利点なのに。遠隔操作でもすれば良いんじゃないですか?」
「良くわかってるじゃない。ロボットを自律的に操縦するために開発されたアンドロイドがあなたよ」
#ツイッター小説

582

太陽の死を前に、地球が公転軌道を外れて遥かなる宇宙の旅を始めた時、一番困惑したのは月だった。生まれてからずっと一緒だったというのに、おいていくなんて。初めての孤独に困惑していると、頬に触れるものがあった。それは赤色巨星となった太陽だった。月はもう孤独ではなかった。
#ツイッター小説

583

「ごらん。あの黒い炎が『ロキ』、世界を終わらせる火だ。草木も、大地も、海まで全て燃やし尽くして、ゆっくりだが確実に広がっていっている。人間に残された手段は、もう無い」
「……で、その棒の先のマシュマロは何?」
「え?ただ滅ぼされるのも癪だから有効利用してやろうかと」
#ツイッター小説

584

「ごめんね、一緒に生きられなくて。どうしようもないよね。だって、君が生まれる前に私は死んでるんだから。これから君が大人になって、おじいちゃんになっても、私は——」
そう言う彼女を、少年は抱き締める。
「離れてくんじゃない、近づくんだよ。僕が逝くまで、そこで待ってて」
#ツイッター小説

585

喫茶店の日の当たる席で。
「僕は、13歳の時に天国に行くのをやめたんだ」
「なんで?」
「僕の宗派では、天国では『家族が永遠に一緒にいられる』って教えられててね」
「それが……あっ」
私は思い至って、高校で再会した時には名字が変わっていた彼の困ったような笑顔を見つめた。
#ツイッター小説

586

「ここは……?」
腕の中で最愛の恋人が目を覚ます。
「僕の小説の中だ。ごめん、こんな形でしか生き返らせてあげられなくて」
「どんな形でもあなたと一緒にいられるなら—」
「正気じゃないな」
背後からの声に叫ぶ。
「黙れ!お前を書いたのも俺だぞ!」
「この台詞を書いたのもな」
#ツイッター小説

587

「なぁ、お前今何考えてる?」
出番を待つ闇の中、隣のやつが話しかけてきた。
「……次に生まれ変わるとしたら、こんなおっさんの口内洗浄用マイクロロボットじゃなくて、かわいい女の子の口内洗浄用マイクロロボットになりたいなって思ってる」
「……ああ、俺も大体同じだわ」
#ツイッター小説

588

「話が違う!」
俺は今朝の夢に出た神様に叫んだ。なんでも願いを叶えてくれると言って、確かにそれは叶ったのだが——
「『いつでも自由におっぱいを揉めるようにしてください』って願いは『女の子にしてください』って意味じゃない!」
「男のままおっぱいが生えた方が良かった?」
#ツイッター小説

589

「物語がハッピーエンドになるのは、幸せな瞬間で終止符が打たれるから。顔だけで選ばれたシンデレラが、どんな暮らしを送ったか知らないでしょ?だから私も、最高に幸せな瞬間に死ぬ」
そう言っていた彼女は最期に少し恨めしそうな顔をして私の腕の中で息を引き取った。老衰だった。
#ツイッター小説

590

成り行きで出会った神様は言った。
「お前にひとつ、お前が望む力をやろう。どんなものであれ」
私は少し考えて答えた。
「私が正しいものを、正しい量望むことができる力をください」
「素晴らしい。それは人間にとって最善のものだが、どうやらお前は既にそれを持っているようだな」
#ツイッター小説

591

男は疲れていた。だがしっかりと予告状を標的に投げ込んで帰った。男は怪盗だった。予告の時間まで仮眠を取ろうとベッドに横になった。目が覚めると、テレビで臨時ニュースが流れていた。昨夜“怪盗”が逮捕されたのだという。予告時刻を寝過ごしている間に便乗して盗もうとしたらしい。
#ツイッター小説

592

「なんで隠すのさ。人を好きって悪いことじゃないでしょ」
「だって、あいつのことだから、俺が好きだって知ったら、絶対弱みにつけこんで無茶なこと言ってきますよ」
「その時、あの子はどんな顔してると思う?」
「それは……笑ってると思います」
「でしょ?ならいいじゃん」
#ツイッター小説

593

「先輩、手を見せてください。先輩の行動を当ててあげます」
「何?手相でも見るの」
「いえ、もっと現実的に。握る時間が長いもので手の形は違いますから。……先輩が2番目に長く握っているものはスマホでした」
「1番はなんだよ」
「後輩に何言わせようとしてるんですか!」
#ツイッター小説

594

夢で出会った彼女は、ひと目で女神だと分かった。
「あなたの願いは?」
「も、モテまくりたいです!」
「いいでしょう、叶えます」
後日、昼寝していると彼女に再会した。俺は口を尖らせる。
「何も変わらないんですが」
「いいえ、私は眠りの女神。寝てる間にモテまくっていますよ」
#ツイッター小説

595

「『フレンチのコースを食べに行こう』なんて言うから期待してたんだけど……ちょっと安くない?」
「はっきり言うね。まあ、確かにそうなんだけど。ここは、僕が子どもの頃によく来た思い出の店でね。恋人と来るにはイマイチでも、少し特別な日に家族で来るぶんには良いでしょ?」
#ツイッター小説

596

「『正義の味方』にはなれないから、せめて『悪の敵』になった。ただそれだけ」
男は空虚さをたたえた笑みでそう言った。足元に血塗れのヴィランが転がっている。
「て、抵抗しないでください!」
少女は警棒を構えて言った。
「しないよ。正義の敵になったらいよいよ俺はおしまいだ」
#ツイッター小説

597

「まいったな……」
小説のネタにしてもありきたりすぎて没だろう。『小説に自分の未来が書かれてる』なんて。俺はため息を吐く。自分で5年前に書いた小説なんだが……
「なんで俺は、飛び降りオチなんかにしたんだ……」
#ツイッター小説

598

「二兎を追う者は一兎をも得ず、とはいえど、忘れてはいけないことがある」
「何?」
「追わない者も一兎も得ないということだ」
「ポニーテールと——」
「シュシュ?」
「Yes. 守株」
「真顔で棚ぼた狙ってんじゃねえよ!!」
#ツイッター小説

599

「君、その作者の本はいつも読み終わるまで離さないよね」
「……そうだね。自分でも不思議なんだけれど、この本を閉じて、私が目を離していたら、その間に主人公たちが倒れてしまうだろうって予感がするんだ。私がページをめくるから、彼らは前に進めるんだって」
#ツイッター小説

600

母の葬儀が終わって、同棲している部屋で隣に座った恋人が泣いている。俺は、葬儀の間ずっと考えていたことを口に出した。
「結婚しよう」
「……嬉しいけど、どうして今?」
「俺、ゴミの出し方が分からないものは買わないって決めてるんだけど、今回のでやっと分かったから」
#ツイッター小説


……どうだっただろうか?1つくらいは面白いのがあっただろうか?

気に入ったなら、前回までのも読んでもらえれば嬉しい。

では、また100日後。

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