20231202

 渋谷駅ハチ公前のスクランブル交差点は土曜日の夜ということも手伝って、体感で通常の倍くらいの人混みだった。二十一時。鈴木雅之と菊池桃子によるデュエット曲「渋谷で五時」がリリースされた一九九三年から三〇年の月日が経っても、人々は変わらず渋谷で待ち合わせている。流行と歴史は繰り返すのを証明するように、わたしなどより二十は若いだろう若者の服装はちょうどバブル期前後に流行ったようなスタイルを踏襲している。まるでタイムスリップしたかのようだ。わたしは渋谷センター街を通り、東急ハンズの向かいにあるサイゼリアで友人と落ち合った。サイゼに入ったのは一年ぶりくらいで、注文がQRコード読み込みでできるようになっていることに驚いた。これがDXというやつか。友人とはロンドンの語学学校で出会ってから十年以上の付き合いになる。今日の目的もこの後、WOMBで行われる、同じくロンドン時代にルームメイトだったDJのパーティーだった。サイゼでは、きのこのパスタとマルゲリータピザを食べて、デカンタの赤ワインを飲んだ。それにほうれん草のバター炒めに人参サラダ、フライドポテトをシェアして一人千二百円くらい。圧倒的コスパである。応援したい。
 サイゼを出て、道玄坂にあるWOMBに向かった。センター街や道玄坂には笑い叫ぶ若人たちが生き急ぐようにウィークエンドを謳歌していた。警官も赤信号を渡る女性に怒声を拡声機に乗せていた。渋谷のO-Westでは、もう一人のロンドン時代の知り合いがパーティーをオーガナイズしていた。彼らはロンドン時代からパーティーをオーガナイズしていてヨーロッパを巡っており、相変わらずのバイタリティーに感嘆する。わたしもロンドンに居た頃は毎週末のようにパーティーに行っていたが、もはやその体力はない。この日も久しぶりのクラブだった。ラブホテルの一角にボブ・サップのような屈強な黒人のバウンサーが立っている。巨大な冷凍庫のような四角い鉄扉の開いた入口を抜けると、イニャリトゥの映画『バベル』でも使われたあの光景が広がる。三階の友人たちに挨拶し、バーカウンターでハイボールを頼んで乾杯した。メインフロアとなる二階でオープンーラストで彼はプレイしていた。この日はBPM速めのアッパーな雰囲気だった。暗がりの中でレーザーライトが様々な角度から照射されて、リドリー・スコットの世界観さながらサイバーパンク感が漂う。踊り狂う異人たちのテンションも懐かしい光景だった。

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