20240228

 米映画『アメリカン・フィクション』を観た。大学で教鞭を取りながら、長らく新作が出版されない黒人作家セロニアス(モンクと呼ばれる)が、それまでの作風を改め、冗談交じりにラップや犯罪を前面に押し出して書いた原稿が大手出版社に絶賛され、そのまま人気作家となる顛末を描く。昨年読んだモアメド・ムブガル・サール『人類の深奥に秘められた記憶』(野崎歓訳、集英社)でも問題提議されていた、西洋が求める〝黒人像〟について改めて問題の根深さを思い知らされる作品だった。これは、『哀れなるものたち』でも同じでセロニアスの家庭が医者、恋に落ちる隣人も弁護士という、決して貧困層でない〝ねじれ〟の構造を持っていることからカリカチュアライズされた黒人像とは違う現実の黒人や女性などの前時代の弱者が、どうそのイメージから脱するか、その困難さを物語っている。

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