20240513

 友田とん『『百年の孤独』を代わりに読む』(代わりに読む人)を読んだ。G・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』(鼓直訳、新潮社)を〝代わりに読む〟という、よく分からない試みを著者が実践したnoteでの連載を三篇の書下ろしを含めて一冊の本にしたもの。テレビドラマや映画、書籍、著者の実生活での交流の話題に脱線していくことで、小説内の世界に留まらない開かれた読みを提示する。それをわたしたち読者が読むことで『百年の孤独』を新たに読んだ気分にさせる。実際にわたしは『百年の孤独』を二回読んでいるが、今作を読んでまた手に取りたいと思わされた。次に読むときには、違う世界線が開かれているだろう。
 友田さんは二〇一八年に今作を制作し全国を行脚して、当時界隈では有名になっていた。後に自ら出版レーベル「代わりに読む人」を立ち上げ、わかしょ文庫『うろん紀行』や佐川恭一『アドルムコ会全史』などの書籍を刊行している。昨年刊行された文芸誌『代わりに読む人1』にはわたしもお声掛け頂き、「海浜公園建設予定地」という掌編を寄稿している。先日には『先人は遅れてくる:パリのガイドブックで東京を闊歩する3』を刊行したばかりだ。そうした彼の歩みそのもののアイデアがこの一冊にはすでに散りばめられていることに気づく。そういう意味では彼の思想そのものがマルケスの『百年の孤独』を読みながら形作られていったと考えてもいいのかもしれない。
 六月には『百年の孤独』の文庫化が決まっていて、なんと、この『『百年の孤独』を代わりに読む』も新潮社から文庫として発売されるという。すごい快挙だ。まさに彼が先人そのものである。

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