20221007

 寒い。雨がずっと降り続いている。着るものにも困る。まあ、しかたがない。世間はまた三連休のようだ。スポーツの日なんて、いつからだったろうか……。ともかく寒い日には外に出たくない。なので、ずっと家にいた。わたしの家は小学校の通学路に面しており、子どもたちが朝から走り、下校時間になるとわいわい騒いでいる。そのような彼らの声が聞こえると元気だなあ、と思う。若さに天候なんて関係ないな。そんな生命力というか、たくましさを感じた。二か月ほど前から小川洋子読書会を立ち上げて、小川洋子作品を読んでいる。前回は恐らくいちばん有名な『博士の愛した数式』を読んだ。今回はブッカー賞候補にもなった『密やかな結晶』を課題図書にしていた。アンネの日記にインスパイアされて書かれたという本作。記憶狩りによって、ものが消滅していく島で小説家の語り手が記憶を失わない編集者を匿いながら喪失と対峙する。驚いたのは、これが『博士の愛した数式』以前に書かれた作品で、1999年に刊行されていることだ。とてもそんな月日が経った作品とは思えない、普遍性を兼ね備えた、まさに世界文学といった趣きだった。読書会では小川洋子について論文を書いた方も参加してもらい、今作が主人公を小説家に作中作を用いた入れ子構造で、小説家自体の存在の消滅を描くことで小川洋子自身が小説を書くという行為自体を突き詰めた意欲作であることを聞き感嘆した。読書会に参加してくれた人たちは皆、本職の傍ら小説を書いている。彼らの執筆事情や、舞台や映画の話を聞いていると大変面白い。あっという間に三時間弱が経ってお開きになった。年末は皆忙しいだろうから次回は年明けになりそうだ。

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