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20220212 / 忘却した畏怖

自分をどう世界に開くかという不安.それはつまり,自分が何者かがわからないという問題に直面することで生じる不安でもある.他者との関係,あるいは間係の中にいる自分を俯瞰して,苦しみ,傷つき,それでもそれが現実であり,自分であり,人間であると開き直る自分に拒絶され,拒絶し,私は何かによって私を規定されることを拒絶する.私は私の私であり,誰かの私ではないし,何かの私ではない.私は私によって私を規定することを取り戻す.鏡の中の自分にお前は誰だと問えば,その中の私は答える.『私はわたし.』

世界に対して開かれてしまった僕らは,ある関係性のもとで,現存在としての存在可能性を如何に開くかという選択に迫られる.そこから生じる不安という情態は,根源的には,僕らが頽落するずっと前の,ある教室,あるいはあるお腹の中にいたときから,軌跡として存在するのではないだろうか.今ここにある自分が,この世界に生まれたその時からの数々の不安の軌跡の先にあるものとして感じることで,今ここにある不安を浄化する.

私は,私自身を世界に開いていく術を見失い,顧みて,自分が何者であるか分からず不安になる.しかし同時に,その不安こそが過去からなる今の自分自身を規定する唯一のものであると自覚し,愛おしくさえ思うのだ.あなたはディスプレイとハーフミラーで再現された虚構に住むもう一人の自分と対面する.あなたはあなた自身に拒絶され,そしてあなたもまた,あなた自身を拒絶する.解離した他者としての自分を今一度自分自身へと取り込み,あらゆる自分自身の問題が,自分自身のものでしかないことを自覚する.他者との関係の中で俯瞰した自分ではなく,原初的な情動の支配する自己へと立ち戻る.

制作:
荒井理子
杉田安良
永倉昂暉
福永将也
前田さくら
水野桃夏
三村一梨
村上梨奈