【二次創作小説】 長い時間の中で”迷子”になってしまった少年のお話

スーパーマリオオデッセイの「森の国 スチームガーデン」が好きすぎて解釈やら妄想やらが脳内でパーティーを始めたので、それをどうにか出力?メモ?しておくために書いています。
多分元ネタ知らないと(というか知ってても)「何言ってんだこいつ……」ってなると思います。雰囲気で読んでください。

一応二次創作だけどあくまで舞台・設定が森の国なだけであって内容はかなり捏造が入っています。いわゆるIFです。時間軸はマリオがブルーダルズ倒してグランドムーン取り返して、周回プレイとかもした後です多分。時間軸や設定は(ちゃんと決めるのが面倒なので)ふんわりしています。寝起きとかに読めばモヤモヤしないと思います←


分からない。
僕はいつから、この世界にいたのだったか。

ここには見渡す限り深い、暗い、鬱蒼とした森が広がっている。開けた場所から上を見上げれば錆びついた建物が建っている。その建物の中には花畑が広がっているのだ、と、どこかで聞いた、ような気がする。あちこちに足場が、美しい場所へいざなうように道が作られてはいるが、僕は行ったことがない。あの建物を誰が、何のために作ったのか、そしていつから、どうして見放されてしまったのか、考えているうちに日が暮れて、全てが暗闇に包まれる。遠い夜空から差し込んでくる微かな光に照らされたこの世界は、美しくて、繊細で、何より不気味だ。何かがいそうな気配ではなく、何もいない静けさが広がっている。住民たちのほとんども、壊れているものと同じようにその機能を停止しているから、耳が痛くなるほどの無音に、このままここにいたら僕も眠らされて、僕の意識を意思を、なけなしの記憶を、「僕」という存在ごと消されてしまうんじゃないかと、そんなことを考えてしまう。

この世界は一体何なんだ。
僕はいつからここにいるんだ。

一番古い記憶はここのものだったかと思えば、頭の片隅には別の世界の記憶の断片が残っているような気もする。ここが僕のいるべき場所だと思ったその次の日には、自分は迷い込んだんだと思っていたりする。
過去の記憶はほとんどが淡い風景で、辿ろうとすればすぐにはじけて消えてしまう。いつでもふわふわ漂っているのに、触れればすぐに壊れてしまう。自分がどこで生まれ、育ち、言葉を学んだのか、どうして、どうやってここにたどり着いたのか、そもそもここは何なのか。僕は何も知らない。知らないまま、考えて考えて、閉じられた世界で今日も夜を待つ。
そう、この世界は閉じている。青空とこの世界の間は仕切られていて、一度だけ辿り着いたこの世界と外側との境目にも、薄くも硬くて割れそうにないガラスが張られていた。仕切りに沿ってしばらく歩いてみたけれど、ここから出られそうな切れ目も、何か仕掛けがありそうな気配もなかった。この世界には、出口も入り口もない。少なくとも僕と僕の周りにいる住民達は、出口も入り口も知らない。それならどうしてここにいるのか、それが分からないからずっと、迷子みたいにぐるぐると同じ感情に振り回され続けている。外側にはいつも薄っすらと雪が積もっている、内側はこんなにも暖かいのに。蔦に侵食された鉄骨には、使われない機械が大量に並べられている。彼らはいつからここに放置されているのだろうか、と考えて、また話は最初に戻ってしまう。いつから、どうして、何があって、この世界はこんな風になって、どうして僕がここにいるんだ?

僕は自分の姿も知らない。確かめる術がない。自在に動くことは出来ても、自分の身体が分からない。歩こうと思えば歩ける、横になって空を眺めることもできる。これは手でこれは足で、そういうことは何故か知っていて、「手」を動かそうと思えばその通りに動く。ちゃんと「自分の身体」を動かしている感覚はあるのに、それに応えて動くこの身体を見ていると違和感が込み上げてきて、正体の分からない嫌悪に襲われる。
だから僕は、僕が何なのかすら知らない。

そうして答えの出ない問いに雁字搦めになっていた、そうして毎日を過ごしていた、ある日のことだ。
見知らぬ奴らが、花畑の花を盗みにやってきたと聞いた。僕は奴らのことは当然知らないし、見に行かなかったから見たこともない。そもそも「花畑」を訪れたことすらなかったけれど、いつもエネルギーを補給して花を育てて、を繰り返しているだけらしい住民達が珍しく騒ぎ立てていたから、ああ何か異変が起こったのか、とだけ思った。直接攻撃してくるというわけでないなら、何も知らない僕には関係ない話だろうと。それだけだった、そのときは。
その数日後、時間の感覚すら曖昧になってしまっている僕だから本当に数日後だったかは怪しいけれど、いつも寝泊まりしている場所の近くに、見慣れない赤いものが降り立った。
流石に警戒した。物陰に隠れて見ていたら、その赤いものから、“人”が降りてきた。白い、何か見たことのない、喋る物体と一緒に。
その時にようやく気づいた。ここには「入り口」があるんだ。だから誰かが花を盗みに来ることができて、其奴らがこの世界のことを、ここで花が育てられていることを知っていたんだ。どこかに、僕もこの世界の住民も知らないどこかに「入り口」があるから、この“人”もここへ来られたんだ。
僕はその人が“人”だと知っていた。その身体は、その手足は、その動きは、どれも僕とそっくりで、発する声もどこか僕と似ていて……だから、「僕」は、“人”なんじゃないかと思った。いやもう疑問形にする必要もないだろう、僕は人だ。人間だ。いつからか、どこからか、何かがあってこの世界に迷い込んだ。その証拠にこの人は、僕がこの世界で始めて見た“人間”は、外の世界からやって来た。
僕はこの人と同じ世界の住人だったはずなんだ。少しだけ足がかりが出来たような気がして、嬉しいような虚しいような、色んな気持ちが混ざり合って、ただその場で呆然と突っ立っていた。

この世界は、何なのか。
僕はいつから、どうして、ここにいるのか。
僕はどこの世界の住人だったんだろうか。
僕はこれから、どこにいればいいんだろうか。

何も知らずにただ夜を待っていた日々は、疑問に埋め尽くされてはいたけれど、どこかで僕はここにいていい、ここにいればいい、と思っていた。
もしかすると僕はもともとこの世界の住人だったのかもしれない。そうでなくても、僕にとってはここが一番いい場所かもしれない。存在しているはずの外の世界に僕の居場所があるとは限らないし、外の世界ももしかするとこんな風なのかもしれない。そうやって、幾らでも言い訳ができた。僕がここにいなくてはいけない理由を、考えれば幾つも挙げられた。
でもその人を見てからは、もう言い訳はできなくなってしまった。彼は幸せそうに見えた。僕の知らない言葉を話し、僕の知らないものと話し、でもいつも僕の周りにいる機械達ともコミュニケーションは取れていたようだった。誰も見ないような場所まで思いのままに冒険して、この世界を、僕が閉じ込められて迷子になってしまったこの世界を、ただひたすらに楽しんでいるように見えた。見ていれば見ているほど、考えれば考えるほど、自分がここにいることへの違和感が強まっていった。
でも。
長い時間の中で迷子になってしまった僕は、今更外側の世界で行きていけるんだろうか。

しばらくして、その人はいなくなった。僕の知らない出口から、僕の知らないどこかへ飛び立っていった。その頃には騒ぎ立てていた機械達も日常を取り戻していたから、きっと花を盗みに来ていたという奴らもここを離れたのだろう。全てが元通り。何事もなかったかのような静けさ。僕の心も相変わらず、悩んで迷っては諦めて、を繰り返している。
自分が何者なのか、ずっと探していたはずの答えを見つけたのに、僕は酷く塞ぎ込んでいた。後悔していた。今も曖昧な世界で生きていれば、都合の悪いことを都合良く否定できたのに。答えを見つける前は答えさえ見つかれば、と思っていたのだから皮肉だ。疑問にうずもれて見えなくなっていた自分の醜い部分を突きつけられて、また全てが嫌になってしまう、ただでさえ変化のない毎日なのに考えまでもが終わりのない悪循環に嵌ってしまった。
これ以上の答えを手に入れてしまったら、僕はもう立ち直れないような気がした。結局何も知らずに何も考えずに生きるのが一番楽なんだ。

この世界は何なのか。僕はいつから、どうして、ここにいるのか。僕はこれからどこにいればいいのか。知ってはいけない、と思った。なるべく考えないようにしたかったけれど、この世界にいる限り、“考えない”なんて不可能だ。気を逸らそうにもここで出来ることは歩き回ること、機械達と話すこと、空を眺めること、そのくらいだ。歩き回っていれば条件反射で「ここは何なのか」を考え出してしまう、機械達と話せば自分は異質な存在なんだと意識してしまう、幾度となく眺めてきた空は相変わらず仕切られている。
結局全部駄目なんだ。世界は分からないことだらけで、分からないのは辛いことで、でも分かってしまえばそれはそれで辛い。どうしようもない。どうにもならない。何も知らない振りをして生きればいいのだろうか、あるいは全てを知ってから判断を下せばいいのだろうか。分からない。僕には、何も、分からない。
知らない。知りたい。知りたくない。知れない。
頭の中が、思考より単純な感情のローテーションに支配されていく。
忘れない。忘れたい。忘れたくない。忘れられない。
“人間”の僕は生きているのか。生きているはずなのに、現実感が消えていく。
分からない。分かりたい。分かりたくない。分かれない。
色んな色が混ざって混ざって、最後には全てが無個性な色に帰化するように、
僕の感情も混ざって混ざって、最後には、演じることでしか自我を保てなくなって。

僕は今日も、何も分からない振りをして生きる。

僕は今日も、必死に考えている振りをして生きる。

僕は今日も、答えを出すつもりのない疑問を、ひたすら繰り返して生きる。

分からない。
僕はいつから、この世界にいたのだったか。


言い訳をさせてください()
こういうループする系の小説一回書いてみたかったんです、完全に勢いで書き始めたせいでどう終わればいいんだこれ……ってなって、考えてるうちにこれループさせられるんじゃね? 世界観的にも合ってるんじゃね!? って思ってやってみたんです、そしたら微妙オチになりました。まあそもそも最初からループするつもりで書いてなかったし。という言い訳。つまりセンスが無いってことなんでしょうね(遠い目)

というか今思ったけどマリオオデッセイの二次創作(しかも小説)って全然見かけないよな……みんなもっと沼って書いてくれてええんやで……?

(好き放題しまくったので最後まで辿り着いた方がいるかどうかわかりませんが) お読みいただきありがとうございました(* ᴗ ᴗ)⁾⁾

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?