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メディア学ってなに?

この春から大学の所属になり,研究が仕事になったので,自分の研究について改めて整理していきたいと思います.

専門分野

取得した学位は博士( メディア学 ) で専門はメディア情報論です.と言うと,たいてい「メディア学ってなに?」「メディア情報論ってなにするの?」と聞かれます.

自分でもひと言で説明するのは難しいのですが,だいたい「メディアっていう複合的な領域におけるさまざまなテーマや課題について研究する学問だよ,その中でも情報学よりの研究をしているよ」と答えています.
「ふーん」って言われるのが常ですが,たしかに結局何やってるのかは分からないと思います.なので,自分の頭の中の整理もかねて,自分の専門分野についていつもより詳しめに説明してみます.

メディア学

取得した学位は "博士 ( メディア学 )" です,ということでまずはメディア学が何をする学問なのか説明します.その名のとおりメディアについて研究する学問です.といっても「メディア」の意味するところは非常に広く,これだけだと何を研究しているのか全く伝わりません.

もともと英語の media は medium の複数形で,「中間,媒体,媒介」などの意味を持つ言葉です.何かしらのメッセージが発信される際の間に入るものを指します.分かりやすいところで言うと,新聞・ラジオ・雑誌・テレビ・広告・インターネットなどがそうです.また,メディアとは「人間の能力を拡張するもの」なんていう定義をした人もいます.例えば電話は人間の持つコミュニケーションという能力を拡張したし,テレビや新聞は情報収集の能力を拡張した,となるわけです.

それでもやっぱり範囲が広いので,「メディア学」における研究領域を以下の図のように3つに分類します.

メディア産業メディア文化メディア情報の3つです.もちろん,これはあくまで自分がこれまで研究してきた中での分類なので,他の分類もあるでしょうし,これがメディア学のすべてに適用されるものではありません.

メディア産業論は,メディアやコンテンツ産業に関連する分野で,経営,経済,法律など産業的な観点からメディア研究を行います.メディア文化論はメディアと文化に関わる分野で,コミュニケーション,映像,広告,マスメディア,ファッション,ジェンダーなどメディアとそれに関連する文化について研究を行います.メディア情報論は,メディアと情報に関わる分野で,Web,マルチメディア ( 画像や音声など ),データベース,ソーシャルメディア,ヒューマンインターフェースなどの研究が行われており,IT 自体がメディアとも言えるのでその範囲はやはり多岐に渡ります.

そしてこれら3つの分野は,それぞれが独立しているわけではなく,全てが複合的に繋がっているので,全部ひっくるめて「メディア学」です.上の図の分類は,単にどの部分に重きを置いているかというだけの話ですし,どれか1つに限定できない研究も多くあります.

複雑化したメディア,コンテンツに対して,学問領域にとらわれずにアプローチすることでグローバルな課題解決につなげることができる.というのがこれまで私が学んできたメディア学です.

ギュッと縮めましたが,ここまでがざっくりとしたメディア学の概要です.ここまで来てもやはり範囲が広すぎるので,つぎは自分がやってきたメディア情報論にフォーカスしてみます.

メディア情報論ってなに?

つづいて「メディア情報論」について.これも様々な研究があるので一概には言えませんので自分の研究の範囲から説明します.

メディア情報論は,特定のテーマや課題に対して「メディア学という複合的な学問領域の知識をもって,情報学的な方法論でアプローチ」します.

自分の研究テーマを例にして具体的に説明します.研究テーマは「情報の信憑性評価」で,流言・デマ・偽情報などいわゆるフェイクニュースをシステム的にどう判別するか,を研究しています.

流言に関する研究は昔から行われており,社会学の分野では人間社会におけるコミュニケーションという観点から,心理学の分野では人が情報を認知するメカニズムなどの観点から研究が進められてきました.

そこで蓄積されてきた知識や理論は,情報発信の中心が Web やソーシャル・メディアに移っても変わることのない基礎となるものです.このようなドメイン知識をもとに,方法論を考案,モデル化し,情報システムをデザイン・実装し課題解決を目指すのがメディア情報論のアプローチです.

メディア学におけるさまざまな学問領域の知識を横断的に取り入れ,情報学的な方法論で解決方法を模索していく」というのがメディア情報論です.

よく分からないと言われがちだったメディア学も,こうやって言語化して整理してみるととっても面白そうじゃないですか? ( とっても面白いですよ! )

まとめ

ここまで,自分の頭の中の整理もかねて,専門分野である「メディア学」や「メディア情報論」について説明してみました.

ここで書いたことは,自分の研究範囲に近いところを中心としたほんの一部分でしかありません.すべてに当てはまるものではないし,ぜんぜん違う解釈をする研究者もいると思います.

メディア学とはこれだ!と一般化するものではなく「あなたの専門はなんなの?」って聞かれたときに答えているものをあらためて言語化しました.

自分の研究の内容についてはもっと詳しく書きたい気持ちもありましたが,研究をするのが仕事になった以上それは,論文を書くことでアウトプットすべきだな,と思うのでここでは書かないでおきます.

ここまで読んでいただいてありがとうございました!

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