2020年のHubsふりかえり & Hubs Advent Calendar 2020について
この記事は、Hubs Advent Calendar 2020 1日目の記事です。
Hubs Advent Calendarを作りました@kn1cht と申します。Hubsに初めて触れたのは3月のIEEEVR 2020なので、Hubs歴8ヶ月くらいです。本カレンダーを通して、Hubsを知ってくださる方が増えることを願っております。
この記事で扱うこと
初日の記事ということで、Hubs自体が何かの紹介と、Hubsを取り巻くコミュニティの概観、そしてHubs Advent Calendarを作った経緯などを簡単にまとめようと思います。
Hubs入門のような情報はほぼ扱いませんので、「Hubsやってみたいなー」という方は、まずは以下のような資料をご覧ください。
・はじめての Hubs by Mozilla | Hubs ヘルプ
・東大 VR センターが教える Mozilla Hubs の使い方.ソーシャル VR 会議で在宅ワークを手軽に面白く
Hubsとは?
※すでにご承知の方は読み飛ばしてください
Hubsは、Mozillaが開発するオープンソースのソーシャルVRプラットフォームです。WebXRというWeb標準を使っているので、Webブラウザだけで動くのが大きな特徴です。
ブラウザで動くということは、VIVEやOculusなどのVR機器はもちろん、PC・スマートフォン・タブレットからもHubsに参加できることになります。また、特別なアプリをインストールせずとも、リンクを開くだけで手軽にHubsの世界に入れます。
Hubsのアバターやワールド(Scene)は、公式からも多数が提供されているほか、ユーザ側も自由に作成・公開できます。さらに、VRルーム内には画像や動画・3Dモデルなどをドラッグ&ドロップで取り込み、他の人と一緒に見ることができます。
こうした特徴から、Hubsは学会やアート展などをオンラインで開催する際に活用されています。特に、2020年に発生したCOVID-19の流行で多くのイベントがオンライン化し、Hubsが活躍する場面は激増しました。
Hubsの活用事例
Hubsは2018年から公開されていたものの、圧倒的に注目を浴びたきっかけは2020年3月のIEEEVR 2020だったと言っていいでしょう。IEEEVRは、世界最大のバーチャルリアリティを扱う国際学会の1つで、1000人超えの参加者がいる大イベントです。
IEEEVR 2020はCOVID-19の影響で完全オンライン化が決定し、Mozillaの協力によってHubs内で口頭セッションの映像視聴やポスター・デモセッションの議論が実現しました。
この会議によって、世界中で第一線のVR研究者たちがHubsを知り、実際に触れることになりました。筆者も一学生としてIEEVRのHubsに参加し、現実の学会さながらにポスターを前にしたインタラクティブな会話が実現しているのをみて大変驚いたのを覚えています。加えて、IEEEVRという大規模な学会でも(部屋を分けるなど人数対策をしたうえで)快適に使えるHubsのスケーラビリティ・信頼性も示されました。
その後、Hubsは様々なイベントや展示で採用されるようになりました。アートイベントの例として、米国のデザイン企業Paradowski Creativeが主催した「Apart: Posters from a Social Distance」をご紹介します。これは、COVID-19の流行とそれに伴うソーシャル・ディスタンシングに関するアートパネルを集めた美術展です。
この会場は作品の販売終了後も引き続き公開されています。会場モデルの完成度が非常に高く、まるで本物の美術館を歩いているような気分になれます。Hubsの展示系ワールドのお手本のような出来ですので、ぜひ一度訪れてみてください。
Hubsの活用事例(国内)
日本国内では、VRイベントというとVRChatやclusterを活用したものが多数を占めています。とはいえHubsを使うイベントもだんだん増えてきており、存在感が増しているように感じます。
白井暁彦氏率いる「GREE VR Studio Lab」は、VRに関するワークショップ「VRSionUP!」やVRハッカソン「VTech Challenge 2020」など、Hubs上でのライブイベントを多数開催しました。
筆者も参加させていただいたVTech Challenge 2020は、Hubsによる作品それぞれを実際に巡回しながら発表が進む形式でした。発表会の進行から作品のデモまですべてHubs内で完結する、Hubsの威力をフル活用したイベントだったと感じています。
9月には、日本バーチャルリアリティ学会の年次大会で「オープン・バーチャル・エキシビジョン(OVE)」というHubs内でのポスター・デモ発表の試みがありました。毎年リアルな場で行われてきたポスター発表の機能を代替する目的で実施され、70件の発表とスポンサー企業の展示が行われました。
資料を前にしてインタラクティブに会話が進むポスター発表はVRと相性がいいので、今後学会やオープンキャンパスなどでHubsを目にする機会はますます増えると考えられます。
最近になり、様々な企業が「Hubs Cloud」を活用して独自のVRサービスを公開する事例も増えてきました。VR・ARメーカーGugenkaは、家庭教師ヒットマンREBORN! のポップアップストア「ボンゴレストア in バーチャル」やVTuber 東雲めぐ氏の野外コンサートを開催するなど、Hubs活用を進めています。
※ Hubs Cloudとは、個人や企業がHubsを独自にホストできるクラウドサービスです。ブランドやロゴも独自のものにできるため、Hubsという名前つきで公開されるとは限りません。
さらに、イクスアール株式会社からは展示会プラットフォーム「exhiVision」が、NTT株式会社からは3D空間型オウンドメディア「DOOR」が相次いで発表されました。
Hubs Cloudによって目的に特化したVRサービスを自前で持てるというのは、他のVRプラットフォームにない利点です。Hubsベースのサービスを手掛ける企業が増えてくると、Hubsのイメージは単なる展示・イベントの場とはまた違ったものになっているかもしれません。2020年はHubsにとって激動の年でしたが、今後もHubsがどのように進化していくか目が離せません。
Hubsのコミュニティ
Hubsはオープンソースプロジェクトなので、開発の様子はGitHubで公開されています。もちろんForkして改造したり、Pull Requestで改善を提案したりするのも自由です。
Hubsの総合コミュニティとしては、公式Discordサーバーが用意されています。ここには2020年11月末現在で8800人を超える参加者がおり、質問や機能の提案などで日々活発に動いています。会話は英語ですが、英語に抵抗のない方は参加しておくと最新のHubs事情に詳しくなれることでしょう。
Hubsのコミュニティ(国内)
活用事例でもご紹介したGREE VR Studio Labの白井暁彦氏(@o_ob)やGugenkaの三上昌史氏(@Mikami_Gugenka)はHubs関連の情報をよく発信しておられます。Twitter全体で検索する際は、「hubs lang:ja」のように日本語限定で検索すると見やすいです(たまにゲームなど別の話題と混ざりますが……)。
Hubsの技術情報を日本語で読みたいときは、Googleで「Mozilla Hubs」と検索するほか、QiitaのMozillaHubsタグやZennのhubsトピックを見ておくといいでしょう(まだまだ記事が少ないですが、このAdvent Calendarで増えるはずです!)。
GREE VR Studio Labのイベント「VRSionUp!」や「VTech Challenge 2020」でもHubsに関するLTが多数あり、スライドの一部が公開されているほか、YouTubeにもアーカイブが残っています。参考になるTipsが詰まっているのでオススメです。
Hubs Advent Calendar 2020について
Advent Calendarは、クリスマスまでの日数を数える「アドベントカレンダー」にちなんで、12月1日から25日まで毎日記事を投稿するソフトウェアエンジニア界隈の風習です。プログラミング言語やサービス、団体などテーマを定めて参加者を募る形式のカレンダーが多いです。
2020年のAdvent Calendar開始が迫る11月下旬、HubsのAdvent Calendarがないなと気づいた筆者が「VTech Challenge 2020」関係者の方々に呼びかけたところ、数人の方から反応があったので作らせていただきました。Hubsはサービスであると同時に、Web技術や3Dモデリングを生かしたカスタマイズの余地が大きい側面もあるので、Advent Calendar形式で共有できる知見はたくさんあるのではないかと考えています。
Advent Calendarのメリットとして、コミュニティの盛り上がりがオープンな場で可視化されることがあります。たとえば、今年のプログラミング言語Goのカレンダーは11月末現在で4枚がほぼ埋まり、パート5が作成されるという活況ぶりです。これを見れば、「Goというプログラミング言語は注目されてるんだな」と誰の目にも分かります。
Go Advent Calendarは極端な例ですが、Advent Calendarが存在してある程度埋まっていると、にぎわいが可視化されるのは確かです。Discordなど閉じた場でコミュニティが盛り上がっていても参加者以外には伝わらないので、コミュニティの外にいる人にもアピールする格好の機会と言えます。
また、「カレンダーを埋める」という分かりやすい目標でアウトプットを増やせるのも良い点です。何か目標があるサークルやチームと違い、ユーザコミュニティはゆるい繋がりなので、突然「Qiitaでなんか記事書いてよ~」などと話しかけても応じてもらえるとは限りません。Advent Calendarという目標があれば、みんなでアウトプットしようという空気が生まれやすいです。
Hubs Advent Calendarでそんな好循環が生まれるかどうかは走り出してみないと分からないことですが、Hubsに関わる皆様のご投稿をお待ちしております。Hubsに関する記事であれば内容や公開形式に制限は設けません。技術的な内容でも体験記でも、長くても短くてもOKです。枠は今のところたくさん余っておりますので、ぜひぜひお気軽に埋めていただければと思います。
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