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秋には秋らしいイラストを!

こんにちは。同人イベントでオリジナルキャラの姉妹が出てくるマンガを出しているくもゆにと申します。今回はイラストメイキングのお話です。

12月に行われるコミティア向けのマンガに夏前から取り組んでいましたが、10月頭に無事書き終え、次作まで少し余裕ができました。春、夏とイラストを書いてきているので、秋のイラストに取り組むことにしました。

春のイラスト

夏のイラスト

秋のイラスト?

先日、日本から秋がなくなる…という記事も出て話題になっていましたが、どうしても春・夏・冬に比べてやや影が薄くなりがちな季節、秋。近年はハロウィンも盛り上がりを見せてきていますが、前にハロウィンの絵は描いてしまっているので、ハロウィン以外で描いてみることにします。

アイデア

イラストに入れる要素を頭の中で検討します。今回は下記の要素を入れたイラストを描くことにしました。

  • 焼き芋を妹・菜摘に食べさせる姉・遥

  • 口を開ける妹・菜摘

  • 妹・菜摘は垂れる髪を押さえる

  • 秋の高い空を見上げる姉・遥

  • 空にはいわし雲

秋のイラストなので、秋の要素としていわし雲と焼きいもを入れました。

ラフ

イラストを描き始める前にあたって、まずはラフを作成します。ラフというくらいなのでざっくり描くレベルですが、この段階が結構重要です。

カラーラフ

印象的な空に、紅葉した樹木、焼きいも。赤とんぼも入れようかな……などと、描いたり消したりしながらなんとなくのイメージを作っていきます。

焼きいもを買った帰り道、我慢できずにふたりでひとつ開けちゃう……というシチュエーションにしました。

ちなみに、左が姉の遥(はるか)、右が妹の菜摘(なつみ)です。私はこの二人の姉妹がわちゃわちゃする物語、「はるなつセンセーション」シリーズをここ数年描いています。

3D書き出し

私の場合はキャラクターは3Dモデルから起こしており、上で紹介したラフも3Dモデルをもとに描いています。したがって、イラストの描き始めは3DモデルをLT変換で書き出すところから始まります。なお、この機能はCLIP STUDIO PAINT EX限定です。

元になった3Dモデル
書き出した3Dモデル

今回のようなやや複雑な光源だったり、構図だったりする場合には3Dモデル機能が頼りになります。陰影も書き出し、以降の影付けの参考にします。

影と線画を書き出したあとの3Dモデルは、設定を変更してテクスチャを表示させることでアタリにできます。これにより下書き作業を飛ばします。

線画

3Dモデルとラフを参考にしつつ、線画を描きます。

線画

私は、3Dから書き出した線画は青色に、身体部分に描き足した線は赤色に、髪関連は黄色にして三色に分けて描いています。

このあと二人の表情や菜摘(右)のリュックサック、メガネを描き足しました。

一次チェック

線画の内側全体を40%グレーで塗りつぶし、表情も入れて細かい部分のチェックを行います。線画だけで気付かなかったミスも、一旦塗ってみると見つかることが多いです。

チェックのあと、墨だまりまで作ったもの

線画に問題がなければ、近接する線画同士の間を塗りつぶし、いわゆる墨だまりを作ります。また、線画の太さを変更し、外側の線画を太く、内側の線画を細くします。これにより線画にメリハリがつきます。

仮塗り分け

私は塗りをグラデーションマップで行うため、各グラデーションマップの領域を指定してあげる必要があります。二人のキャラそれぞれに、髪、肌、服1、服2、小物……の領域を指定します。

仮塗り分け状態の二人

髪色と肌色以外は変な色になっていますが、これは指定忘れをなくすためにわざとやっているものです。白とか黒だと指定忘れをやりがちなんですよね……。

グレー塗り上げ

一旦グラデーションマップを非表示にし、3Dモデルから書き出したトーン部分を60%グレーに変更します。3Dモデル由来のトーンは身体部分しか無いため、凹凸を考えながら服の部分を塗り足していきます。

60%グレーを塗ったところ

服飾の描き足し

再びグラデーションマップを表示させ、二人の塗りの細かさが同程度になっているか、凹凸の再現は十分かどうかを確認します。

グラデーションマップと表情を表示したところ

遥(左)と、菜摘(右)の服の模様も描き入れました。わかりづらいですが、遥の服のニット模様を描き足しています。

ディテールアップ

遥(左)にほお紅、ネイルを追加し、20%グレーでニットの明るい部分を塗りました。

ディテールアップしたところ

細かいところではありますが、二人の前髪の毛先を薄くする効果もつけています。

色指定

グラデーションマップに色を指定します。これでエキセントリックな抹茶色の服からはオサラバです。

色指定したところ

(この時点では遥(左)のカーディガンのボタンの色指定を忘れていますね)

ラフ時点では菜摘(右)のリュックサックに差し色としてパープルの箇所がありましたが、検討の結果、色をまとめるために黒一色としました。

小物の描き足し

忘れちゃいけないメインの焼きいもと、紙袋を追加しました。これでキャラ部分は完成です。

キャラ部分の完成

焼きいもの色はキャラより鮮やかにして目立つようにしました。

背景の検討

ラフを参考に、背景を作ります。画像素材をLT変換して塗り分け線を書き出し、それぞれの部分に白から黒のグラデーションをかけ、グラデーションマップで色指定をします。

雲の下塗りをしたところ
雲の明色部をグラデーションマップで指定したところ

これだけでだいぶ背景ができました。

画像素材から書き出した線の他に、公開されている雲ブラシで明色部(画像で黄色っぽいところ)を塗り足します。

背景の検討

ラフ通りに背景に紅葉した樹木を置いてみたところです。

キャラと背景をあわせたところ

画像素材を使ってみましたが、パッとしないので代案を考えることにします。

背景の検討

背景をクレーンに変更しました。「はるなつセンセーション」は造船所のある坂の街のお話なので、ちょうどよかったです。

シルエットは自分で撮った画像をPhotoshopで加工したもので、このときのリユース品です。

1次書き出し

影色を強調したあと、全体の色味をグラデーションマップを薄く掛けて整え、一度書き出すことにします。

書き出し

具合を見て、トンボの位置や背景のクレーンを手直しすることにしました。キャラ部分の影を濃くし、グラデーションマップで夕焼け色に調整しています。光の効果も入れました。

2次書き出し

修正してまた書き出します。

書き出し

視線誘導が不十分なため、さらに修正することにしました。画面が煩雑に見えたため、光は撤去しています。

3次書き出し

3次書き出しです。トンボのサイズに違和感があったため調整しました。

完成形

余白を大きくなったことで印象的な空が目立つようになり、遥(左)の視線の理由もはっきりしました。

視線誘導

視線誘導の解説図です。人間の特性として絵の粗密に反応して視線が集中します。全体的に密な絵では粗の場所に、全体的に粗の絵では密な場所に視線が来ます。今回の場合は全体的に書き込みの多い密の絵なので、雲があまりないところ(粗)の部分にぱっと見で視線が来ると考えられます。

解説図では視線が動く軌跡を入れ、視線が留まる場所に数字を書き入れました。絵の中央付近にある粗の場所を、最初に目が留まる場所として「1」と図示しています。そこからトンボ→空(2)→焼きいも(3)→菜摘→クレーン(4)→空……と抜けていきます。

遥(左)が空を見ていることが分かるように、トンボは視線からずらして配置しています。

視線誘導について話をしましたが、つまりは狙って入れた各要素に注意が向くようになっていればよいのではないかと思っています。

完成

三次書き出しでしばらく眺め、トンボと雲に少し手を入れて完成としました。

業務の合間を縫って少しずつ描いてきたこの絵は制作期間1週間でした。もっと速く描けるようにしたいという気持ちはありますが、なかなか難しいですね。

ここまでお読みくださりありがとうございました!


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