京都から理想社会を試作する-京都を試作の一大集積地にー
見出し画像

京都から理想社会を試作する-京都を試作の一大集積地にー

100年続くベンチャーが生まれ育つ都研究会

第8回公開研究会
日時:2021年1月12日(火) 18:30-20:30
講師:鈴木滋朗 氏(一般社団法人 京都試作ネット代表理事)
於:YouTube Live配信

鈴木氏講演

画像1

試作ネットのはじまり
 試作ネットは、試作という最前線のプロセスにおいて、実践を通じて学習する組織である。活動を通して、マーケティングとイノベーションを実践しながら進めている。発端は、機械金属加工の下請け企業10社が、自立化を目指して勉強会をはじめたのがきっかけである。経営者自らが汗をかき、自社の案件より試作ネット案件を優先するという意気込みで取り組んでいる。

ドラッカーの5つの質問を常に問いかけている
1.我々の事業(使命)は何か?
2.我々の顧客は誰か?
3.顧客は何を価値あるものと考えるか?
4.我々の成果は何か?
5.我々の計画は何か?

 試作ネットはWebからオーダーを受け付けており、2時間以内の返答を目指している。案件の振り分けは週当番で加盟企業が行っている。開始から19年の合計で、10500件の問い合わせ、2500件の受注、65億円の受注額を達成した。


学習する組織の活動
 参加企業の経営者は、自分の持ち時間の1割〜3割を試作ネットの活動に充てている。活動を通じ、企業の貢献領域を広げ、個客から直接声を聴く機会をつくっている。また、加盟企業間で訪問し合い、それぞれの強みを醸成し合う活動をしている。海外では先進国を中心にプロモーションを行い、展示会への出展等を通じて、インバウンド受注の獲得を目指している。次世代の育成を目指して、大学・教育機関等での講演やワークショップも行っている。

 試作ネットが成長を続けられた秘訣として、試作を通じて学習するという想いを共有していることがある。自分達の産業が次の世代に引き継いでいけるようにという先達の想いを受け、メンバー同士の強固な信頼関係を大事にしている。試作事業によって協働作品を作ることにより、予期せぬ成功を追い求め、「未来に点を打つ事業」を探し続けている。

KSN5%理論
バケツの水は、放っておくと腐るが、軽くかきまぜ続けると腐らない。
試作ネット経由の売り上げがたった5%であっても、新しい風を注入することで「企業の活性化」ができる。

 試作ネットの活動からは、㈱クロスエフェクトの臓器シミュレーター、㈱JOHNANの海外展開等の事業が生まれている。「予期せぬ成功がイノベーションに繋がる」というドラッカーの言葉を、個客と向き合う中で実践しながら、加盟企業間でお互いの成功を間近にみつつ、嫉妬し合い、刺激し合う環境が作られている。


理想社会の京都で実証実験する

画像2

 過去5年間は「枠」をテーマに、ものづくりの枠組みを考え直すことに注力してきた。試作ネットは、試作加工から試作開発開発試作へと発展してきた。現在ではリーマンショック等の時代の急激な変化を受け、社会の要請に応え枠組みの外の主体と連携しながら理想社会を実証し作っていく協創試作のフェーズに入っている。

 ものづくりの枠組みを、もの提供から結果提供に変えていくことで、社会と顧客が得たい結果を知り、そこに必要なコト(モノ)を提供してきたいと考えている。また、SDGsの推進や、ベンチャー立ち上げにおける量産化の難しさを表す「死の谷」問題への対応、様々なメーカー、クライントとの協働を進めている。

 京都市下京区で立ち上げたMArKEtでは、京都において理想社会を実証実験するまちづくりを始めている。金融機関やArt, Food, Techの企業が集まり、梅小路エリアの開発を進めてゆく。試作ネットとしては、良質なものづくりを追求しつつ、デジタル技術も取り入れながら、積極的にAdvanced Manufacturingの開発に着手していく。小さな一歩から、大きな可能性を秘めて、理想の実現に向けて活動を進めていきたい。

パネルディスカッション

パネラー:鈴木氏、今庄啓二(京都大学経営管理大学院 客員教授)、竹林一(京都大学経営管理大学院 客員教授)、上野敏寛(京都大学経営管理大学院 特命講師)

画像3

論点1:試作ネットの存在目的は何ですか?
論点2:地域との関連、京都だからこその価値とは
論点3:「100年続くベンチャーが生まれ育つ」為の十分条件とは?

Q. ものづくり辺重の限界は指摘されて久しいが、それを超えて世界に打って出るという想い根幹とは?
鈴木:試作ネットも、度重なる揺らぎをへて現在のスタンスにたどり着いている。学習をつづけるとともに、顧客に近い位置で顧客の望んでいることを追求し続けていることで、世の中の動きとリンクできているのではないか。

Q. ティール組織では存在目的が重視される。試作ネットになかなか入ることができないというのも、関係しているか?
鈴木:組織は生き物なので、DNAの部分は合わせつつ、どんな細胞を加えるかを吟味している。経営者が存在意義を問い直せる場所であり続けたいと思っている。

Q. 日本でもモノづくりの集積地は沢山あるが、エコシステムとした時に京都試作ネットはどう違うのか?
上野:自然界のエコシステムと人間社会のエコシステムがある。人間社会のエコシステムを方向づける要素としてルール・制度がある。京都試作ネットの場合は、自律的な発展をしてくための制度を作ったことが大きい。それによって、大企業下請け型から自分で受注を取りに行けるモデルに変化していったのではないか。
鈴木:顧客との関係で考えると、試作ネットは顧客と並列な位置で目線を合わせている。社会を理解し、顧客の課題を知った上で、自分達のあり方を見直しつづけている。共感して共有するための仕組みであるとも言える。
今庄:ベンチャー中小企業の強みがわかってくると、関係性のあり方も変わるのではないか。それによって、トータルのエコシステムのあり方が変化するのでは。新規事業の資金調達においては、大企業よりもベンチャーの方が有利な場合も多い。

Q. 一社で製品や課題解決をする時代ではなくなっているのでは?
上野:これまでのものづくりでは顧客と距離が遠かったが、共創試作を通じて新しい製品が生まれていくのではないか。
鈴木:図面に書かれたものを作る分野は競争が厳しい。概念を理解したり、抽象的な課題を解決するための専門性をどう持てるかが課題である。それを経済的な価値に変えていくところが重要と考えている。

Q. 京都でさらに連携を深めていく上で必要なこととは?
鈴木:京都は次の世代も見据えて長く続けるという前提があるように思う。一見さんお断りの仕組みも、共同事業をしながら価値を守っていく上でも重要なのではないか。

Ⓒ京都ものづくりバレー構想の研究と推進(JOHNAN)講座, Shutaro Namiki(Licensed under CC BY NC 4.0)



この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
100年続くベンチャーが生まれ育つ都研究会