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ハッとする和声①(西洋音楽ロマン派編)

【シューマンの揺れ動く和声《美しき5月に〜”詩人の恋”より》】

シューマンの歌曲『詩人の恋』の第一曲目の和声が素晴らしい。
調号は♯が3つなので、イ長調/嬰ヘ短調。

冒頭2小節は、非和声音(ここでは倚音が多く使われてます)を纏いながらも、和音骨格はBmの和音第一転回型→C#7この揺らぎで、調性感を浮遊させている。この二つの和音が連続で鳴ると、訓練された耳ならば嬰ヘ短調のⅣ和音→Ⅴ和音という和声の流れを感じる。
聴き手に嬰ヘ短調の装いを提示しておいて、5小節めに歌が入ったところで、イ長調のカデンツ(終止形=調性を決定づけるような和音の一連の流れ)、ここではいわゆるトゥーファイブワンってやつですね。(Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ)
特筆すべきは最後の和音、古典的発想からは逸脱する終わり方。属和音で終わってます。(第二曲に向けての小休止とも取れますが)

シューマンの音楽の書法は大胆かつ繊細です。自分で自分の人生を終えてしまったこの天才が残した芸術に、私自身何度も何度も救われてます。
ハイネの詩が透きとおり美しい。 

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