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生まれたパヤ毛

髪を切った。もうすぐ新学期。ヘアスタイルも生まれ変わらせなければ。

切りに行くのが面倒で(実際には美容師さんとの会話が面倒で)ずっと伸ばしっぱなしだった。おかげで私の髪は、肩甲骨に触れるくらいまで伸びてしまった。

切るなら思い切ってショートにしたかった。似合う且つ学校にしていってもOKな髪型を母と相談し、決まったのはこの形になった。

まるっこくて可愛い

私の髪は刺激に弱い。ちょっとした動きですぐに髪が乱れてしまう。手ぐしで直せるというこの髪型は、私の髪質にも顔の形にもぴったりだった。

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出迎えてくれたのは優しそうなおばあちゃん美容師さんだった。切り始めて数分で「毛量多いね」「クセも少しあるでしょう」と言われ、やはりプロなのだなと思った。必要なこと以外は話しかけないタイプで、知らない人との雑談が苦手な私にはありがたかった。

少し経つと、3面鏡で後ろの様子を見せてくれた。ふわっとしたシルエットになっている。正面から見てもまるっこい可愛らしい印象で、とても気に入った。

「今までのショートヘアの中でいちばんしっくりきています。ありがとうございます」とお礼を言うと、何も言わずに私に微笑みを返してくれた。

前髪も作ってドライヤーもしてさあ終了。と思いきや、おばあちゃんは何故だかまた髪を切り始めた。この時、なんだかやけに深く切るなと思ったことを私は忘れてはいない。あの髪型があんなふうになるなんて、その時の私は思ってもいなかった。

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家に帰り、バラバラと零れる髪の毛を洗うためにお風呂に入った。そして上がった。鏡の前で改めて自分の髪の毛をじっくり見てみた。と、美容院では見なかったはずの『パヤ毛』を見つけた。

前髪と後ろ髪の間に、どうしようもなく短い毛がパヤパヤと生えていたのだ。なんでだ。美容院ではこんなパヤ毛なんて見なかったぞ。

前髪の生え際に誕生していたパヤ毛たち

私は美容師さんの手によって、シルバニアファミリーのペルシャネコの赤ちゃんに生まれ変わってしまったのだろうか。

これからしばらくの間、私はこのパヤ毛と共存していかなければならないのだろうか。そんなのは嫌だ。

悩んでいたところに、母が提案してくれた。片方にボリュームを与えればパヤ毛は消えるのではないかと。

母の言うことはいつも正しい。というわけでさっそくやってみた。結果は成功だった。私のパヤ毛は見事に隠された。ありがたい母の教え。

パヤ毛は隠されたが、新たな問題が発生した。そのパヤ毛を隠した状態が、どうしても頭にマッシュルームを乗せているようにしか見えないのだ。

でもいいか、マッシュルームでも。マッシュルーム好きだし。