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妹の自己主張

妹が初めて自分の頭で考えて意見を言った。母は泣いた。私も泣いた。妹も泣いた。みんなで抱き合った。

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話は遡ること1週間前。妹が突然「弓道部やりたい」と言いながら家に帰ってきた。「運動部なんて絶対大変だからやめとけ」という母と私。とりあえず理由を聞くと「イケメンがいるから」とのことだ。そんなことだろうとは思っていた。もう少し色々な部活を見学してみようと話した。

数日後、妹が今度は「野球部のマネージャーがやりたい」と言い出した。理由を聞くと「○○ちゃん(妹の友達)もやるみたいだし、今日体験して楽しかったから」とのこと。姉とはいえ、流石に今回は妹の意見には賛成出来なかった。

妹は可愛い。姉バカだが、目に入れても痛くないくらいには可愛いと思っている。が、そんな妹はかなりの優柔不断である。きっかけはだいたい「友達もそうだから」である。机の上はいつもゴチャゴチャで、「明日やるー」と言って先延ばしにしている。通っている塾もサボりがちで、宿題は夜中にやる。そんな妹が、野球部のマネージャーとしておにぎり少年たちの面倒を見ることができるだろうか。

部費は1年で18万、3年間合わせて54万かかる。妹の進学のことも考えると、そんなに払う余裕はない。野球部なので当然ながら遠征もある。その度に母に送り迎えをしてもらっていては、母が倒れてしまう。母はもう自分のこと祖父母の世話で手一杯なのだ。

私と母はそんな想いを妹に言った。土日も休みがないなんて絶対に楽しくない。勉強も遊びもロクに出来ないだろうから、もう少し緩い部活にした方がいいと。お金も死ぬほどかかると。だが妹は私たちの意見は聞き入れなかった。そんなことが今日の夜まで続いたのだ。

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出来もしないマネージャーをやろうとする妹に、とうとう母がキレた。母の意見はこうだった。

「別にやりたいならやってもいい。お金も3年間合わせて54万は出すから。ただし絶対に親を頼るな。自分で前に親の送り迎えも要らない、お弁当も自分で作るし家のこともやるって言ったでしょ?ただそのお金の分は高卒で働くか自分で奨学金を借りて専門学校にでも行け。それで働いて自分で返せ」

こんなに責めた口調ではなかったが、内容は合っている。私は母ほどではなかったものの「野球部のマネージャーやって3年間ほとんど休み無しで勉強も遊びも出来なくなってあんまり好きじゃない仕事に就いて何十年も奨学金返す生活と、他の部活をやって勉強も遊びも思いっきり楽しんで好きなお仕事するのどっちがいい?」と尋ねた。

目の前の厳しい現実を突きつけられた妹は泣き始めた。更に「あんたがそれだけの根性があるならやってもいいんだよ?」と言う母、この先のことを考えて泣く妹、母のデカい声が煩くて頭が痛くなる私。カオス状態でである。

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しばらくすると泣き止んだ妹が「やっぱ野球部のマネージャーやめる。あのね、よく考えたらね、私は○○ちゃん(妹の友達)みたいに苦しいことも耐えられる人じゃないし、先輩みたいにものすごく頭が良いわけじゃないから…あと奨学金もずっと返すの嫌だからやめる」と言ってきた。

GJ妹。よく言った妹。えらいぞ妹。

その後の光景は最初に書いた通りである。私は泣いたのと寒いのとで頭が痛くなった。途中で妹に私の手を振り払われたりもしたが、それでも良い。妹が存在してくれているならそれでも良い。

妹、成長したね。こうやって大人になってくだね。今日は妹の自己主張記念日だね。ということで今夜の我が家の夕飯はびっくりドンキーに決まった。