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『弁護側の証人』/小泉喜美子著

場末の劇場『レノ』で踊るストリッパー、ミミイ・ローイはとある資産家の御曹子と恋に落ちて結婚。屋敷で暮らすようになるが、彼女の前歴故に屋敷に住む者は皆彼女を軽んじ、結婚を認めようとしなかった。
そんな中、屋敷の主である舅が、離れで何者かに殺害される。


わりと早い段階で疑問を持った。
しばらく読み進めても、頭の中に絵が浮かんでこなかったせいだろうか。
古き時代のこの推理小説には、今ではもう使われなくなった言葉が散見されるので、雰囲気はたっぷりのはずなのに、だ。

気になったのはただ一点。それを確かめたいがために、ページを行きつ戻りつする。
だが、私が欲しい決定的な記述はやはり見当たらなかった。

…と、こんな風にトリックがわかってしまうと、普段の私はその時点で興醒めしてしまう。

けれど今回は、この文章が宝の山に思えた。
ただ一点を隠し抜くためだけに、またフェアであろうとするがために、こんな記述を用いているのか、と。さりげなさを装っている体で、大胆な記述は、作者の技量を感じずにはいられない。畏れ入る。

トリックに気付いても楽しめる。
そんなミステリはなかなかない。
難を言えば、殺人が起こるまでが長かった…ということくらいか。(笑)

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