マガジンのカバー画像

装ひ堂のブックレビュー

9
既読本のレビューをのらりくらり。
運営しているクリエイター

#ブックレビュー

『ミライヲウム』/水沢秋生著

凜太郎は父と二人暮らし。彼には触れた相手の未来が見える力があるが、良くないものが見えた過去の経験から、大学生になった今も恋愛事には踏み切れないでいる。 そんなある日、彼の脳裏に、同級生の立花の未来が映し出される。 それは、彼女が血を流して横たわる姿だった…。 自然で、スッと頭に入ってくる文体は、とにかく読みやすい。遅読の私が一日で読めてしまった…。 同時にこれはミステリ作家さんにとって、最大の武器なんじゃないかと思う。 だってあまりにも自然な文体で話がとんとん拍子に進んで

『君が護りたい人は』/石持浅海著

中学生の頃に山で両親を亡くした、歩夏(ほのか)が婚約した。相手は両親の死に責任を感じ、歩夏の後見人を務めてきた20歳も年上の奥津。 歩夏に片想いする同い年の三原は、彼女が無理矢理結婚させられるのだと奥津の殺害を企て、芳野にその行為を見届けて欲しいと話すのだが…。 舞台は、彼らが所属するトレッキングサークルで訪れたキャンプ場。そしてその場に居合わせるのは…碓氷優佳。 優佳シリーズ第5作。(高校時代の優佳作品はスピンオフ扱いだそうです) 残り二十数ページで、低く響く優佳の声。

『弁護側の証人』/小泉喜美子著

場末の劇場『レノ』で踊るストリッパー、ミミイ・ローイはとある資産家の御曹子と恋に落ちて結婚。屋敷で暮らすようになるが、彼女の前歴故に屋敷に住む者は皆彼女を軽んじ、結婚を認めようとしなかった。 そんな中、屋敷の主である舅が、離れで何者かに殺害される。 わりと早い段階で疑問を持った。 しばらく読み進めても、頭の中に絵が浮かんでこなかったせいだろうか。 古き時代のこの推理小説には、今ではもう使われなくなった言葉が散見されるので、雰囲気はたっぷりのはずなのに、だ。 気になったのは