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労働時間を縮減すると睡眠時間は増えるのか

長時間労働と短時間睡眠の関連は複数報告されています。有名な研究ですとWhitehall II studyでしょうか。これはイギリスで1985年から1988年に実施され、35歳から55歳までの10,308人の公務員の健康状態を調査した前向き研究です。55時間/週 以上の長時間労働は、睡眠時間の減少や入眠困難と関連していると報告されました。

長時間労働では物理的に睡眠に費やす時間が減るので、短時間睡眠と関連するという結果は納得できるところです。では、労働時間を縮減すると睡眠時間は増えるのでしょうか?興味深い問いだと思いますので文献を調べることにしました。
PICOではこのように定義されます。

P: 長時間労働者
I: 労働時間の縮減
C: 長時間労働のまま
O: 総睡眠時間の延長あるいは主観的睡眠の改善

調べるといくつかの研究が報告されているようです。
こちらのメタアナリシスでは、労働時間の縮減は睡眠時間の延長や主観的睡眠の改善と関連しているとしています。

スウェーデンで行われたランダム化比較試験では、週労働時間を25%削減する介入で睡眠時間が23分延長したと報告しています。

一方で、日本で行われた研究(J-ECOH study)では、ある会社での労働時間を縮減する介入を行っても短時間睡眠は改善しなかったと報告しています。

これらの研究をみると、単に労働時間を縮減すれば十分な睡眠時間が確保できる、というわけではないかもしれません。労働者の睡眠は、労働時間以外にも、通勤時間や労働ストレス、仕事と家庭を両立しようとする際に生じる葛藤(ワーク・ファミリー・コンフリクトといいます)など種々の要因と関係していると言われています。

また、不適切な睡眠習慣が形成されている可能性もあるため、環境を整えるだけでなく個人への睡眠衛生指導や認知行動療法などの介入も必要でしょう。

労働者の短時間睡眠の問題は、単一の方法ではなく複数のアプローチが必要そうです。


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