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脚本の「段落」をつかんでみる。

 近頃稽古で使う言葉がある。それが脚本の「段落」である。
 脚本や小説や映画など、物語はいくつかの段落がある。そして段落の境目は、物語が展開したり、シーンの雰囲気が変わる境目に等しい。脚本を読むときに自分が演じる役柄の感情だけではなく、物語の段落がどこにあるかを意識して読み、それを演技のプランに取り入れてみる。私が好んでやる脚本の読み方なのだが、この記事ではそれを紹介する。


「段落」って?

 では、具体的に段落とはなんだろう? 

 たとえば「起承転結」はとても有名な段落の分け方である。物語の展開をよっつの段落に分ける考え方である。

  • 起:物事の前提や背景の説明

  • 承:起の深堀りや転への伏線/予感

  • 転:本題や、物語が大きく展開する箇所

  • 結:物語の終結

 たとえば貰った脚本を読んで、どこまでが起なのか、承なのか、転や結なのかを考えてみる。物語を楽しむために最初に必要な情報や前提が詰まっているところが起、それを深堀りしたり伏線を張ったりしているのが承、一番サビっぽい盛り上がりどころが転、終わりが結。というように。

 まずは手元の脚本で適当にやってみてほしい。個人差はあるが、はじめてやると意外とすんなりいかないものなので、ほんと、適当に。今回の記事では正しく分類できるかどうかよりも、まずは段落感覚を意識してみませんかという提案なので、極論全然間違っていてもかまわない。
 段落が分けられたら、起承転結のそれぞれで、自分の担う役柄がどのような役割を果たすかを考えて、それぞれの段落で演技に変化が出るようにプランニングしてみてほしい。

 そうすることで、ひとりの登場人物として、物語の起承転結に有機的に作用する演技ができると思う。

他にもいろいろあるよ段落

 起承転結より細かい段落分類にも、もう少し触れていきたい。私が思いつく範囲では以下のようなものがある。

  • 脚本の構成による段落

    • 登場人物の入り/ハケ

    • 場転

    • 会話と独白の切り替わり

  • 登場人物の心理変化による段落

    • 会話中の話題の切り替わり

    • 独白中の話者の視点や考えていることの切り替わり

    • 人間関係がそれまであったものから変化するところ

  • アクティビティによる段落

    • 登場人物の重要な決断

    • 簡単には承諾できない(あるいは実行できない)リクエストがされる前後

 小さいものから大きなものまで、脚本にはこんなにも多くの段落が潜んでいる。芝居の稽古で「もっと抑揚を付けて」「もっと変化を付けて」というダメ出しがあるが、かといって気分で適当に上げ下げしても効果は薄い。ではどこで付けるのが効果的なのか? という答えの一部がこの段落の変わり目になるんじゃないだろうか。

 役や自分の感情だけに身を任せるのではなく、脚本に書いてあることに芝居を委ねる、その手掛かりのひとつとして。
 もしよければやってみてください。

個人的なこと。

 俳優さんが演技のプランを考えるとき、台詞とそこにある感情以外にも大事なことがあるよ、そういう結びをした記事を以前にも書いたことがある。

 この記事では、季節や時間などの「場の状況」をプランに取り入れてみませんかという提案だった。他にも、台詞の中の情報にウェイト付けをして発話仕分ける方法の提案も別の記事でしたことがある。

「演技づくりに重要なのは役柄個人の感情だけではない」
 これが私が一貫して記事の中で伝えたいことなんだろうと思う。

 私個人は感情の演技否定派ではない。むしろ好きなのだ。
 だからこそ。感情という不確かなものを扱うからこそ、感情以外の要素で演技を組み立てる術を持っておきたかった。
 ひとりひとり違っていて同じものがひとつとしてない。目に見えないし手に取ることもできない。とても不確かなもの。それをなるべく正確に届けるために。

 まだまだヘタクソなのでこれからも考え続けるのだと思う。


 来週、自劇団の本公演があります。この稽古でもよく段落の話をしています。オスカー・ワイルドの「サロメ」
 一幕劇なので場転はほぼなし。人間関係の変動する段落を掴んでコネコネ稽古しました。

獣の仕業 第十五回公演「サロメ」

[■■■, ■■■, Lema Sabachthani?]

撮影:加藤春日

2/23(金祝) 20:00
2/24(土) 14:00/19:00
2/25(日) 13:00/18:00※生配信回
会場:シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京・王子神谷)

劇場チケット予約

  • 劇場チケット:2,500円

  • 劇場+紙脚本付チケット:3,000円

  • 上演時間:約95分

  • 受付開始・開場は開演30分前

  • 未就学児童入場不可

  • 舞台上で水を使用する演出が一部あります。意図的に観客席に水をかけることはありませんが、お席によっては飛沫がかかる可能性があります。ご了承ください

配信チケット購入

【配信での観劇購入(生配信+アーカイブ視聴)】

  • 販売期間:1/7(日)20:00~3/24(日)23:59

  • 配信期間:2/25(日)18:00~3/25(月)23:59

  • 応援キャスト指定でのご予約をご希望の方は「備考」欄へのご記入をお願いいたします

作=オスカー・ワイルド
翻訳=森鴎外
脚色・演出=立夏

出演=

  • サロメ(ユダヤの王女 ヘロディアの娘)…雑賀玲衣

  • ヘロデ(ユダヤの王、サロメの義父)…手塚優希

  • ヘロデの穢れ ファサエリス(ヘロデの先妻)…小林龍二

  • ヘロディア(ヘロデの後妻、サロメの母)…柳橋龍(兎団)

  • ヘロディアの穢れ フィリポ(ヘロディアの先夫、ヘロデの兄、サロメの実父)…佐藤天衣(兎団)

  • ナアマン(首斬役)…古川ゆかり

  • ヨカナーン(預言者、イエスの洗礼者)…きえる

スタッフ:

  • 舞台監督:小林龍二

  • 照明:寺田香織

  • 音響:新直人(salty rock/零'sRecord)

  • 撮影・配信:U-3

  • 衣装:きえる

  • 写真撮影:加藤春日

  • 宣伝美術:立夏

  • 制作:手塚優希

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