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株主提案の動向①(2022年6月株主総会)~可決事例

 上場企業の株主総会において株主提案権が積極的に行使される傾向が強まっており、本年度の6月総会では過去最多(77社)とも言われています。そこで、公表されている情報から、2022年6月の株主総会における株主提案の事例を集めてみました。

 今回は、株主総会において株主提案が可決された事例を紹介します。

1.北越メタルの事例

 北越メタル株式会社の株主総会(2022年6月21日開催)では、株主提案が可決され、会社提案の第2号議案の一部、第3号議案が否決されています。招集通知から、株主提案の箇所を抜粋してみましょう。

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 上記では省略しましたが、株主提案議案に対する取締役会の詳細な反対意見が掲載されています(22頁以下)。

 このような事態となったのは、会社の筆頭株主(トピー工業)との経営を巡る対立が原因であり、会社側、株主側がウェブ上で資料を公表し、激しく意見を戦わせている様子が窺えます(例えば、会社側、株主側など)。こちらの東洋経済さんの記事が分かりやすいかと思います。

 結果として、株主提案が可決されることとなりましたが、臨時報告書における決議の賛成割合等の状況は、以下のとおりでした。

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2.Fast Fitness Japanの事例

 株式会社Fast Fitness Japanの株主総会でも、株主提案が可決され、会社提案が否決される結果となりました。最近よく見かけるようになった「エニタイムフィットネス」の運営会社さんですね。以下、招集通知から、該当箇所を抜粋します。

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(以下、候補者略歴は略)

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 このような株主提案がなされた背景には、5割超の株式を保有するとされるオーナー会長と、会社側との対立構造があるようで、こちらも東洋経済さんの記事に背景の解説がありました。

 会社のリリースをみると、取締役会長(及び資産管理会社)と監査等委員である取締役により、株主提案が行われ、これに対して、会社側では、従業員の有志一同による反対意見などを取り纏めて対抗している様子が伺えます。本件は、会社に設置している指名報酬委員会での候補者の選定について、株主側が反対の意向を示したもので、会社側の反対意見では、以下のような一節があります。

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 臨時報告書における決議の賛成割合等の状況は、以下のとおりでした。

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3.フューチャーベンチャーキャピタルの事例

 フューチャーベンチャーキャピタル株式会社の株主総会でも、株主提案が可決され、会社提案がすべて否決されました。株主総会資料の電子提供措置の関係の定款変更議案も含めて否決されているので、会社側としては対応が大変だろうと思います。以下、招集通知から、該当箇所を抜粋します。

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 こちらも東洋経済さんの紹介記事があります。

 臨時報告書における決議の賛成割合は、以下のとおりでした。

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さいごに

 株主提案が可決された事例を紹介しました。実際に株主提案がされるような事案を考えると、会社との対話(交渉)が前段階に存在し、その段階で会社側も議案を調整するなどして一定の妥結を見る(株主提案が可決される可能性があるような場合は、会社としては大株主側の意向をある程度反映するような形で議案を調整する)場合が多いのではないかと思われます。したがって、実際に可決に至るケースは、事例としては貴重だと思います。上記の事例は、オーナー株主が存在する事例、筆頭株主との経営を巡る対立がある事例など、状況が少しづつ異なっており、それぞれ参考になる部分があるかと思います。

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