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ほかの書き手さんのnote記事で面白かったもの。 その記事に対する私の感想記事も。
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2021年3月の記事一覧

【他者の記事の感想】まるで善意に満ちた催眠術だ。

小牧幸助氏の『ため息はシャボン玉に』という小説作品が良かったので紹介したいと思います。 まずその記事はこちら。 noteというプラットフォームで創作物を無理なく読ませるとしたらやはりこのくらいの文章量になるのでしょうか。 ほかのクリエイターの方も含め、ショートショートを発表される方は少なくないようです。 その中で小牧幸助氏の本作は、二人称を用いた文体が目を引きました。 小説の文体としては珍しい部類に入る二人称ですが、本作では二人称が非常によく利いていると思います。 〈あ

小説|ため息はシャボン玉に

 バスで家へ帰っているとき、あなたはため息をつきました。窓の外を流れる街は夕焼けでオレンジ色に染まっています。きれいに見えてもよいはずの景色を、眺めるともなく眺めながら、もう一度ため息をつきました。 「次は、ずっと前。ずっと前です」と運転手さんのアナウンスが車内に響きます。聞き間違いかと思い、あなたは電光掲示板に目をやりました。たしかに「ずっと前」と表示されています。思わず、降車ボタンを押しました。  バスから降りると、バス停のベンチに子どもが座っています。顔に見覚えがあ