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相続対策をする前に知っておくべき相続の現状

12年間勤めたウェブシステム開発会社を1年前に円満退職した奥村 大樹(おくむら だいき)はフリーランスのウェブ制作者となり、忙しい日々を送っていた。

クライアントも多様な業種に渡り、中でも税理士や司法書士など士業の方のウェブサイト制作のご依頼を頂くことが多くなった。

そんな士業の方々のウェブサイトを制作していくうちに、大樹はある共通のことに気づく。

それが、税理士の先生も、司法書士の先生も、不動産鑑定士の先生も大樹とお取引のある全ての士業の方々が、“相続”に関する事柄を、自社のウェブサイトで表現しているということだ。

大樹の仕事はクライアントのウェブサイトを制作することだが、そのためにコンテンツ制作から始まる。

“コンテンツ”というのは、ウェブサイトの内容のことを指していて、どのようなコンテンツを作っていくか?といったところからクライアントと一緒に思案していくわけだ。

当然、文章も書いて、画像も用意してそれらが揃ったところで、ページのデザインをしてサーバーにアップしてインターネット上で公開する。

つまり、大樹はそのコンテンツ制作の時に、関わっているクライアントの士業方々が『相続』をテーマにコンテンツを作ろうとしていることに気がつき、そのためには大樹自身も『相続』について一定レベルの知識を習得する必要性があると考え、相続を学習し始めた。

そして直ぐに何故?士業のクライアントが相続をテーマにしているのかが分かった。
それは、いま日本が置かれている状況に深く関係しているからだ。

日本は超高齢社会で今後の40年で人口が更に30%も減るということ、それに伴い今後も相続は増え続けていること。
また、相続に関するトラブルも年々増え続けていること。

そして、相続の相談窓口が全然足りていないということだ。

そのため、士業の先生のところには相続に関する相談が増えており、それならばキチンと自社のウェブサイトで伝えて行こうといったことで相続をテーマにしたコンテンツになったというわけだ。

そんな、相続に関する知識を身につけていく大樹は、当然だが自らの相続についても想いを巡らせていた。

大樹は今は東京で暮らしているが、出身は岩手県だ。
そして、父親は17年前に他界していて、今は実家に母親が一人で暮らしている。
3人兄弟の一番上で、昨年の冬に一番下の弟が病気で死亡している。

兄弟間のコミュニケーションは全く無く、下の弟が何をしているのかも知らない。

思えば、実家にも久しく帰っていない。

こんな状態で母親が他界したら、円滑に相続が進んでいくのかとても不安になった。
大樹はスマートフォンを取り、母親に電話をかけた。

「あら、珍しいね…」

電話口で母親は大樹からの連絡に嬉しそうな反応を示した。
大樹は相続のことで、母親と話し合いをしたいと考えていたがその事は切り出せなかった。


“相続”をテーマに親子で向き合って話すことが重要

久しく実家に帰っていなかった大樹さんが急に実家に帰って、そこでいきなり相続の話を切り出したら、それを聞いた母親はどんな心境になるでしょうか。

おそらくは、不快に思うのではないでしょうか?

これまで、円滑にコミュニケーションが取れていて何でも話せる間柄であったのなら、不意に相続の話をしても受け入れてくれるかも知れませんが、電話口で母親から「珍しいね…」と言われているような関係性であれば、なおさら唐突に相続の話を切り出すべきではありません。

では、どのように切り出していけばいいのかというと、まずは、相手の近況と自身の近況で当たり障りのないところから入っていくことでしょう。

これは、相続に限ったことではなく、どのようなテーマでも言えることですが、たとえ親子だとしても普段からあまりコミュニケーションが取れていない相手に対して、いきなり本題に入るのは得策ではありません。

そのためには、まずはコミュニケーションを取ることが先決です。


相続対策をする前に相続の現状を知ることの重要性

メディアで“相続対策”について喧伝されていますが、そもそも相続対策とは何をどのように対策していくことなのでしょうか?
どのような遺産がどれくらいあるのかを調査すること?相続人は誰が居るのか調査すること?どれも相続対策のひとつですが、その前にするべきことが一つあります。

それは、“正しい相続の知識”を身につけておくことです。

相続というのは、法律と税金と感情が複雑に絡まりあってきます。そして、家庭ごとに事情や状況が様々で、テンプレートに当てはめて解決出来るというものでもありません。

今回のケースでは、大樹さんに相続について“何かしておきたい”といった感情が芽生えたのであれば、まずは相続についてのベースとなる知識を習得しておくことです。


相続の専門家に頼む前に自らが知識を身に付ける

自分で出来ないことは専門家に頼めばいいといった意見もありますが、そもそも相続の専門家というよりも、相続税の専門家や相続不動産の専門家などは一定数存在していますが、相続の専門家はそれほど多くはいません。

また、どんなケースでもそうですが、自分自身に全く知識が無いことを他人に依頼するとなるとそこにはリスクを伴います。

“相続”ともなれば、動く金銭や不動産も多額になるため、自称相続の専門家といった経験も無く、知識も浅い人当たってしまっても、依頼する側に知識が無ければ、相手が言っていることややっていることが正しいのかどうかすらわかりません。

今の時代はインターネットが普及していて、どんな人でもある程度の情報を習得することが出来るので、まずはじっくり知識を身につけておくことが騙されない第一歩です。


相続トラブルは20年間で1.5倍に増えている

相続のことを知る第一歩にいま、相続トラブルが増え続けていることを知ることが大切です。つまり、しっかりとした相続対策をしていないと、親の死後に相続トラブルに巻き込まれる可能性が非常に高いということです。

相続人だけで、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停に申し立てることになるわけですが、その件数が年々増えていて、20年間で1.5倍になっているのです。

更に、遺産分割調整の成立件数の打ち、遺産の額が 5000万円以下が8割(出典:司法統計年報・家事事件簿)といった驚くべき結果も出ています。

揉めるのは財産が多い家庭だといった多くの人の先入観は間違いだということですね。


相続で揉める原因に対策が施されていないことがある

親が子供と相続の話し合いをしない理由のとして、“話すほどの資産は無いと思っている”ということがあります。そのため、子供は親がどれくらいの資産を持っているかを知らず、親が亡くなってから自宅の権利書や貯金通帳、株券などを探し回るという事態が起きています。

そこに例えば、子供が3人居た場合、そのうち1人が動いたことで出てきた財産を他の2人が見た時に思っていたより少ないと感じたら、もしかしたら探していた1人が隠したのでは?といった疑心暗鬼が生まれます。

あるいは、親と同居していた子供が親の貯金通帳や財布を管理していて、他の相続人から使い込みを疑われたり、逆に親と同居して親の面倒を見ていたといった主張から、相続財産の配分を多くして欲しいといったことを言ってきたりといった、家庭ごとの状況で揉める原因は様々です。

遺産分割調整の成立件数の打ち、遺産の額が 5000万円以下が8割といったデータが指し示しているように、遺産が少ない方が揉めやすいというわけです。

例えば、遺産が不動産合わせて30億円あって、それを兄弟3人で分けようとした時、10億円ずつではなく、亡くなった母親の面倒を見ていた兄弟に2億円の実家を譲って、残りの不動産や株券や預貯金を3人で均等に分けるとすれば、それほど大きなトラブルには発展しないかもしれません。

“金持ち喧嘩せず”といった諺もあるように、お金に余裕があると、人の心に余裕が生まれます。

もし、遺産が相続税評価額3000万円の実家しか無かったら、母親の面倒を見ていた兄弟に実家を渡してしまうと、残りの2人は何も受け取れなくなります。そうなると、実家を売った現金を3等分して欲しいといった主張が出てくるでしょう。もし、その時に兄弟の一人が実家住まいで亡くなった母親の面倒を診ていたとしたら、その分多めに欲しいといった主張も出てくるでしょうし、実家で暮らしているわけですから、実家を売ってしまったら、住む場所を失ってしまうため、実家を売ることに反対するでしょう。

これが揉める原因になります。

ですので、資産が無いからこそ、話し合いが必要だということがわかるでしょう。


エンディングノートをつくるところから

では、何から着手すればいいかというと、いきなり久しく実家に帰っていなかった大樹さんが急に実家に帰って、母親と相続の話をして、“遺言書”を書いてもらうというのは少しハードルが高いように思います。

ですので、まずは着手しやすい、“エンディングノート”を一緒につくるところから始めてみてはいかがでしょうか?

エンディングノートというのは、死んでしまった時、あらかじめ家族やまわりの人に伝えたいことを書き留めておくノートのことを指します。

コンテンツとしては、病気担った時の医療面、動けなくなった時の介護、葬儀のスタイル、遺産相続、お墓のことなど様々です。

質問事項が明記されているエンディングノートも市販されているため、質問に対して答えていくだけでもいいので取り組みやすいところです。

このエンディングノートを母親と一緒につくるところから取り組んでみてはいかがでしょうか?

■相続・不動産でお悩みの方の相談窓口

三茶萬相談:https://sanchay.jp/


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