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掌編旅行

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これまでに書いたショートショート集。
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2014年7月の記事一覧

「夏の音量」

イヤホンして音楽流したら音量マックス。びっくり。
びっくりして口から魂が出た。
魂は地球を一周して、ほんの少しだけ通り過ぎた。
通り過ぎてしまっては仕方がないと、魂は怨霊に。
怨霊生活も悪くない、と魂は言う。
夏の怨霊はこうして生まれる。
今日も誰かの口の中から。

人を殺す夢を見る ―ショートショート―

 人を殺す夢を見るんだ。たとえばそれは両親だったり、たとえば好きな女の子だったり、親友だったり、学校の先生だったり、見ず知らずの人だったり、病院で泣いている赤ん坊だったり、テレビで見るアイドルだったり、交差点を渡ろうとしているお年寄りだったり、後輩だったり、コンビニの店員だったり、死んだはずのおじいちゃんだったり、嫌いなクラスメイトだったり、いるはずもない弟だったり、みんなを殺すんだ。ひとつの夢の

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ちょうせんじょうにちょうせんだ。

ならざきむつろさんの企画
「ものかきさんにちょうせんじょう。」 が面白そうなのでやってみました。

もとの文の言葉を少しだけ変えて、別の物語にするという企画です。
原文の言葉を別のニュアンスで使えるだろうか、と考えながら作ってみました。
(原文と比べながら読めば面白いかも)

 

 

タイトル「愛、みーちゃん、愛」(400字)

「みーちゃん、待った、待っただよ!」
首に巻かれたタオル。額に浮

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ぶさいく王様 ―ショートショート―

 ある星に、王様がいました。

 王様はその星の中で一番偉いから、みんなに「王様」と呼ばれています。地球が一回転するうちに三回くらい回転する小さな星ですので、その星に住む人は地球の半分の半分の半分くらいしかいませんでした。でも王様は、自分がどこの誰よりも偉くて優れているんだと考えています。

 おかしな話ですね。だって、王様は地球の半分の半分の半分くらいの人を、全宇宙のすべての人間だと早合点してい

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