空気読むとか読まないとか

ウスビ・サコの「まだ、空気読めません」を読んだ。
主に自身の経験から日本独特の空気を読むことやおもてなしとか、コミュニケーションということこれからの展望などなど、濃密なコミュニケーション論が展開されている。
著者はアフリカのマリ国出身であり、あちこちを留学したりして最終的に日本国籍を取得したらしい。なので様々な文化を体験したり対話から学んだりして、そういう視点から日本の空気とか文化にツッコミを入れている。

空気を読むためにはまるで真逆のことを言葉から読み取らなければいけなかったり、言われていないルールに従うことだったり、矛盾した言動が見られる等正直偏った経験してるなあとは思うものの、そうした風潮があるのは確かだし、日本で生活している分には順応してしまって全く困らないことというのもよく見える。
トイレとか。

「おもてなし」はなかなか面白い。
元々おもてなしというのは相手をもてなすためにどうすればいいか、相手が望むものはなんだろうかといったところを追求しなければならないのに、実際にはもてなす相手が不在のまま単に「こうすればもてなしたことになる」って感じの風潮になっている。
まるで仏陀の死後数百年は教えが保たれるがそれ以降は教えが廃れてしまうみたいな話だ。

他にも日本は対話が少なくなってしまって、行き過ぎた本音と建前文化になってしまっている等同意できる部分も多い。
特に元々は空気を読むとか配慮といった目的があったものが形骸化し、特に根拠もそれをする理由もわからないのにただ従っているものが多いというのはよく感じる。
これは個人的に自分がやっていることの理由をなるべく把握し、説明したいという性癖に基づくものかもしれない。そういう説明ができないと他者を納得させることもできないし応用も利かないと思うので。
理由は別に合理的なものでも感情的なものでも宗教的なものでも構わない。それを採用するかは個人の自由だし。TPOとかの話はまた今度。

日本とマリ国との対処法や文化等の対比もあり、マリ国のやり方が正しいかは分からないものの日本とは違う有効性の高いやり方の一つが提示されている形。
もちろんそっくりそのまま真似したのではこの本の真髄は理解できないけれど。それこそ「おもてなし」の二の舞い。
結果的にマリ国の文化も少しではあるが学べる。

日本に対するツッコミはあれこれあるものの日本文化に希望も見出している。
「なんでやねん」の哲学はこれからも続けていきたい。個人的には対話から生まれるというより勝手に浮かんでくるのだけれど。

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