堂場瞬一 錯迷

ここ最近、競合案件の準備があり、なかなか本を読もうという気にならなかったが、気分転換として、移動中などに、少しずつ読んだ作品。警察小説に、ハマるキッカケとなった作家であり、今でも繰り返し読むシリーズは沢山ある。一方で物足りなさを感じる作品も多くなっている印象がある。この作品にも、少しそれを感じた。確かに、警察小説も数えきれない作品がある中で、もはや、斬新なストーリーや設定を生み出すのは厳しいだろうと思う。一時期は、半グレ物が急激に増えたこともあったが、みな、ネタ探しに苦しむのだろうと思ったりもした。作家として、生計を立てるのは、非常に難しく、ある程度、シリーズ化や数を作らないといけないことも想像できる。本だけでなく、ドラマといった映像に出来るかということも考えているかもしれない。しかし、警察小説の醍醐味は、人の心の動きというか、犯罪に至るまでの心理や解決する側にある正義と悪との狭間での葛藤など、ある意味、非現実的な事象を、リアルにまで昇華させる。しかも、それを文字と行間だけで。想像を超えるほどの情報精査や構成の組み立てなど、一つの作品を生み出すことは簡単でないとは十分に分かっている。だからこそ、驚きを与えてくれる作品に出会うと嬉しくなる。と、長々、書いたが、堂場さんの作品によっては、若干、これまでの経験によって培ったセオリーに当てはめ、少しの切り口の鮮度により、新しさを感じさせる。というような作品を生み出すというよりも、製造するという感じがすることもある。本作にはそれを感じた。もちろん、警察小説のジャンルにおいて高いレベルではある。


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