「清明 隠蔽捜査8」 今野 敏

人気の「隠蔽捜査」シリーズ
テレビドラマ化もされている。
個人的に、今野作品の中でも、好きなシリーズである。

第8弾となる本作品から神奈川県警・刑事部長としての新たなシリーズとなる。

前作までは大森署・署長であった竜崎氏が、神奈川県警に異動し、刑事部長としてどんな活躍を見せるかが見所であった。
一挙に読んだが、感想としては、竜崎は竜崎であり、神奈川県警でもそのスタンスは変わらない!というところか。
なんというか、本来であれば、変わらないということは小説としては、変化がないということでもあり、
作品としては、面白くないということにもなるが、第8弾ともなると、事件の内容というよりは、
事件と向き合う竜崎のスタンスを楽しむということに変わりつつある。

実際に、事件自体に深みがあるわけではない。
警視庁と神奈川県警でのエアポケット的なエリア/中国の政治関連で公安の登場/地元中華街の顔役など、
設定自体は複雑ではあるが、事件自体の深みを出すためというよりは、
竜崎氏が、一つ一つの難題をクリアする姿を描くためのハードルという気もしてくる。

竜崎氏のスタンスを楽しむという視点で言うと、
徐々に、この”竜崎スタンス”というものが、警察内にも浸透してきており、
あまり、内部で孤立するということも無くなってきている気もする。
このままだと、10年後くらいには、警視総監・竜崎シリーズがスタートしているかもしれない。
(意外と、総監ではなく、副総監だったりしそう)
職場が変われど、変わらない竜崎の姿を見るのは楽しいし、
徐々にその意識が内部に浸透し、物事が、進みだすというか、相手との歯車がかみ合う瞬間は、
読んでいて気持ちがいい。

今後も、事件と向き合いながら、警察内部の軋轢にも向き合い、同時に起きる竜崎の家庭内でのゴタゴタにも向き合うという
トリプルセットで物語が進むのか。今回は、新しいシリーズということもあり、3つの要素が同じくらいの深度だった気もするが、
希望としては、事件の深みをベースに、その解決に向けての過程での内部との向き合いというところにフォーカスされると嬉しいなと思っている。



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