『新宿特別区警察署 Lの捜査官』吉川英梨 KADOKAWA

「今までにない警察小説」という売り文句はよく見るが、読んでみて、確かに今までない!となることがない。が、本作については、今までない読後感となった。LGBT、共働きにおける子育ての難しさ、毒親など、感情移入が難しい、ただ、現代においては、身近なテーマでもある。そこに、警察を掛け合わせると、、、という感じで、なかなかなに消化が難しい。こと、事件の解決までの流れとすると、特段、複雑というものではないが、そこに絡む犯人、被害者の背景、生い立ちと、そこにリンクする警察側の登場人物の心理、行動に意識が行き、事件の現象や解決の過程に目が向かないようになってしまった。それにしても、この作者は、人の本性を曝け出させるというか、自分を隠し、取り繕おうとする人間を容赦なく、裸にする。自分としては、正義と悪の狭間で葛藤し、もがき苦しみ、時には大切な人を傷つけても、正義を貫くという警察の姿に警察小説の面白さを感じるのだが、本作は、正義と悪ではなく、正誤、価値観の相違という感もあり、入り込みという部分では深くはなかったが、冒頭の通り、今までにない作品で、一挙に読んでしまった。


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