見出し画像

マグカルシアター2020における公演中止と映像配信実施のおしらせ

かまどキッチンの児玉健吾です。

かまどキッチンはこの度の新型コロナウイルス感染拡大を受け、マグカルシアター2020における公演「人人人人人←波打って流れる川っぽい/人人人人人←根を張って聳える杉っぽい」の公演中止、そして、上演予定だった二作中の一作「人人人人人←根を張って聳える杉っぽい」の内容を変更しインターネット上で公開することを決定しました。

変更の概要はかまどキッチンofficial webに掲載しています。問い合わせ先や現在決定している公開スケジュールについても、こちらからご確認ください。

こちらではご来場を予定、検討されていたみなさまへ中止判断に至った経緯と理由についてご説明をさせていただきます。

作品コンセプトとの乖離について(児玉)

関東における感染者数の増大を受け11月18日(水)より団体内、および参加メンバーで協議を重ね、今回このような決断となりました。公演中止にあたっての大きな判断要素は「感染リスク上昇」「団体へのダメージが大きすぎること」「作品コンセプトとの乖離」の三点です。私からは「作品コンセプトとの乖離」について述べさせていただきます。

本公演はコロナ渦以前に企画された再演企画にあたります。これをより現代に則した形で執り行なうために私たちの中で「演劇行為の再考」を主題としました。新型コロナウイルス感染拡大によって深刻なダメージと大きな制約を負った演劇がどのような状態でなら実現、また観劇が可能なのか。

このタイミングにおいてごく普遍的なテーマではありますが、二回の演劇公演中止を経験した私たちがこれについて考えることは勿論、ご来場いただいたお客様に考えていただく機会を設けることが、生活とフィクションのつながりを重要視するかまどキッチンにおいて非常に大切なことでした。

演劇を考える。いまこの時点でこの公演を実施することは結果的にそこから目を逸らすことになってしまうのではないかと今は思います。

公演を中止にするという判断について(児玉)

今回の公演中止は私たちを取り巻く環境と団体の方向性や作品性から、私たちが主体的に判断を下した結果です。ただいま実施中、また実施予定の公演について方向性を意見するものではないことをご理解ください。

新型コロナウイルスの感染拡大が叫ばれはじめてから半年以上が経ちました。完全ではないにせよ感染を予防するノウハウや生活の中でリスクを回避するすべも浸透し、この非日常的日常にどう向き合っていくのか、私たちはだんだんと理解しはじめています。演劇公演においてもそうです。

かつて判断の隙もなく無差別に全てを終わらせていたときと少しずつ状況は異なってきています。今は必要十分の対策を行ったうえで街にある多くのお店のように活動を行うか否か、選択をすることができるのです。少なくとも私の周りにいる多くの演劇に取り組む方々が、悩みながら多くの決断を行っていることを私は知っています。

今回、私たちは主体的にこの選択肢を取りました。決断は容易ではなく、多くの苦しみと負債を背負う形でこそありますが、引き続きクリエイションや活動は前向きに行なっていく所存です。

この度の公演を楽しみにしてくださっていた皆様には大変申し訳ありませんでした。
今後ともかまどキッチンをよろしくお願いいたします。

企画的なリスクについて(佃)

かまどキッチンの佃直哉です。

児玉が作品性を重視したコメントを書いているため、わたしからは本公演の「公演を行う際の企画的なリスク」「公演を行う際の金銭的なリスク」についてお話しさせていただきます。

神奈川県主催企画「マグカルシアター」は2013年より続く企画で、昨年度からは著名な審査員を招いたコンペティションの実施、今年度には「マグカルシアターinアートホール」として規模が拡大するなど、今後も多くの団体の参加やコンテンツの成長が見られる企画だと思っています。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、企画で実施する8月までの公演は全て中止となりました。7月の中旬に今後公演を予定する団体に向けた意思確認のご連絡をいただき、その段階で一度公演実施を検討した末、わたしたちは上演することを選びました。

のちに更新されたマグカルシアターの公演予定ページを見ると、11月に上演を予定する団体はかまどキッチンのみで、上演を予定していた他団体は、延期・中止することを選んでいました。

急速な感染拡大を受け公演実施の可否を検討したとき、わたしが考えたことは本企画のこと、団体のこと、そして「マグカルシアター」のことでした。

本企画におけるわたしの目的は「再演によって作品の強度を高めること」です。複数回の上演歴を持つ作品を万全の制作体制で練り上げ、より多くの土地で上演していけるものにすること。作品自体のコンセプト「演劇行為の再考」と合わせ、どちらもわたしたちが活動を継続していくことを前提に設定されたものでした。

わたしたちは「かまどキッチン」という団体を、公演回数や来場者数をただ積むことを目的に活動するものではなく、団体で設定したコンセプトや目標に準じ、コンテンツを創作する場所と機会に基づいたクリエイションを行うためのものとしています。

わたしたちの公演企画と同じように、他団体やマグカルシアターにもコンセプトや目的があります。それらは積み上げられてきたもので、今後も積み上がっていくものです。

しかしそれらは何かのきっかけで、あっけなく崩れてしまうものでもあります。

そんな中、感染者を出してしまったらどうなるだろう。と考えました。

劇場や観客の皆様、関係しない多くの方々にまでご迷惑をかけてしまうことはもちろん、多くはない若手を対象にした支援企画にネガティブなイメージを与えてしまわないか。今後企画に参加する団体が、そのイメージを背負わされたまま企画に参加することにならないか。企画そのものや誰かの活動の継続に影響しないか。

自分たちが想像する以上に、多くの可能性を奪ってしまうのではないか。

そんなことを考えながら本公演を実施することは適切なのかを劇団で検討し、座組内で話し合いを行った末、公演形態の変更を決めました。

ただ、この選択はかまどキッチンがマグカルシアターに参加した本企画においてのものであり、他団体やアーティストによる公演実施の選択はその時々の考えや意思を尊重すべきと思っています。

金銭的なリスクについて(佃)

興行として、本公演は成立しているのか。する見込みがあるのか。
団体ではそういった側面でも議論を行いました。

コロナ禍で広報の形態が変わり、どういったタイミングでお客様の予約が入るのかも読めなくなり、急速に感染者の増加が見られる状況では想定外の動員はまず期待できない。

そんな中、予定する小屋入り期間でスタッフや出演者を拘束し、お客様を動員し、それで黒字が出るのか。どれほど赤字を背負うことになるのか。公演を予定通り行った場合と中止の場合でそれはどれほど変わるのか。

結果として、成立していないしする見込みもないという結論に至りました

言語化してしまうと情けないことこの上ありませんが、そのことも公演形態変更の一因です。

短編2作品の劇場での再演を予定していた本公演は、上演台本の有料販売とその内1作の上演映像の無料配信という形に変わりました。

期間限定での公開にはなりますが、どなたさまにもぜひご覧いただければと思っています。

※ 公開期間は終了いたしました

ここまでお読みいただきありがとうございます。

作品をご覧いただいた後でも、どのようなタイミングでも構いませんが、カンパ公演を観劇したような心持ちで、上記の口座にささやかな額でもご支援いただけますと幸いです。

まだ若く途上の団体ではございますが、今後ともかまどキッチンを何卒よろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?