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不死身の花

『不死身の花』生島マリカ 2015年12月刊 新潮社

副題は「夜の街を生き抜いた元ストリート・チルドレンの私」とあり、著者の半生を綴ったノンフィクションです。

著者は在日2世として宝石商の両親のもとに関西に生まれ、幼少期はお手伝いさんに育てられたそうです。

母親の没後、父親の再婚を機に家を追い出され、ストリートチルドレンとして生き、その後の自身のモデル、ホステス、結婚、出産、離婚、レイプ、ギャンブルでの経験が本書では記されておりました。

育ち盛りの13歳の時に空腹のあまり、他家の残飯を漁り、空腹を満たし、工事中のビルに忍び込み、寝床にしていたとのことですが、それ以降のホステス時代や何度かの結婚生活等もストリートチルドレン時代以上に壮絶でした。

序章 「俺は自分で舟を漕いでここにやって来た」
第1章 「十三歳。さあ、いまから浮浪児だ」
第2章 「鑑別所に行ってこい」
第3章 「銀座はどちらですか?」
第4章 『原色の街』
第5章 「運命ってなに?」
第6章 「パパの子供で幸せやった」
第7章 「先生、あたし死ぬんですか」
第8章 「本当に非常識な母です。すみません」
第9章 「これを最後の闘いにしよう」
終章 「あたしは、母に似ていますか」

上記、本書の目次となり、特異な両親のもとに育ち、波乱万丈の人生を送ってきた著者ですが、読後、感じたのは、ずいぶん、正直でまっすぐな人だなあ、の一言に尽きます。

はたからみれば、相当、屈折し被害者意識に苛まれてもおかしくない環境であろうに、他者に迎合せず、金銭に執着せず、自己の流儀で生きてきた姿には好感も持てました。

また、表紙の荒木経惟氏による写真もよかったです。

著者の持つ強さや妖しさが映しだされており、本書を手にとったきっかけの一つでもありました。

タイトルの「不死身の花」は言い得て妙で、著者のキャラクターを端的に表現していると思います。

二度目の癌の闘病中に一人息子のために、遺言も兼ね、本書を書き始めたそうですが、年端もいかぬ息子と一緒にお酒を飲み、酔っぱらう姿を描いたシーンには思わず、笑ってしまいました。

眉をひそめる人も多いであろうと思いますが、なんか、自分はせめる気持ちが全く起きなかったんですよね。

すべてにおいて、清く正しく生きていける人はおりません。

しかし、自分のもつ誇りや価値観に基づき、美しく生きていける人はいると思うのです。

著者、数少ない、自己の矜持に従い、美しく生きてきたタイプの人物であると感じた次第です。

本書、小説を読むよう、一晩で一気に読み上げてしまいました!

「流行は色褪せるけどスタイルだけは不変なの」ココ・シャネル












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