本、そして人
『本、そして人』 神谷美恵子
本書の装画にはファン・ゴッホの「丘の野草」が。
全5巻の神谷美恵子コレクションの最終巻。
著者は美智子さまの相談役としても知られた精神科医。
哲学書・文学書の翻訳やエッセイの著者でもあり、本書には彼女の読書の記録や座右の書であったというマルクス・アウレリウス「自省録」の解説があったりと気品にみちた1冊。
また、ハンセン病療養所施設に勤務し、医師として治療にあたっていた当時の出来事も記載されていた。
本書を読む前に、ハンセン病患者であった藤本としさんの随筆集「地面の底がぬけたんです―ある女性の知恵の73年史」を読んでいたこともあり、しみじみと感じ入るものもあった。
そして、付録としてついていた若き日の原稿「ギリシア悲劇を読みて」「パスカルの『パンセ』より」「バッハの音楽」がまた美しく、よかった!
教養は人としての美しさ、そして、強さを育むことを実感。
人の世に熱あれ、人間(じんかん)に光りあれ。