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ヒトは7年で脱皮する

『ヒトは7年で脱皮する~近未来を予測する脳科学』 黒川伊保子 

本書では人の脳の完成には周期があり、その周期は7年ごとに変化すると説いておりました。

著者は、AI開発を通じて脳とことばの研究を始め、脳機能論を用いて語感の正体は「ことばの発音の身体感覚」であると提唱した黒川伊保子氏。

氏の著作を読むのは本書が初めてでしたが、脳科学関連の著書を数十冊以上出しているベストセラー作家でもあります。

本書で特に興味を引いたのは、「脳は満年齢を知っている」という箇所でした。

ヒトの脳が地球の自転と公転をカウントしており、誕生日の朝7時20分ごろに脳の満年齢に呼応する周波数が、カウントアップされるのが確認され、朝生まれた人も、夜生まれた人も、同じ時刻にカウントアップされるということからも、私たちの脳は太陽の位置を知る術を共通にもっているそうです。

また、このことを発見した東京医科歯科大学教授、角田忠信博士の実験にも著者は参加したことがあるそうで、つい先日、角田博士の名著「日本語人の脳」を読んだばかりでもあったので、「おおっ!」と思いました。

角田博士は元は耳鼻科の医師でもあり、日本人と外国人の耳の聞こえ方に違いがあることに気づき、その違いが脳にある事を突き止め、また、その脳の組成が母国語が日本語であるか否かで異なるということを発見した研究者でした。

どうやら、黒川氏の理論の多くは角田博士の研究成果をバックボーンに持つことが知れ、角田先生の偉業を知る一人として、思わず、嬉しくなってしまいました。

さて、本書の中身ですが、他にも興味深い事例が満載です。

人の脳は6歳までは「神の域」にあるそうで、脳死と判定されてもおかしくないバイタルの中でも、神に守られているかのような蘇生を果たすことがあるからだそうです。睡眠の質もよく、ホルモンに頼らない眠り方をするので、睡眠に時間依存性がない為、いつでもよく眠れるのはそんな理由もあるそうです。

ただし、7歳になると「神に守られた6年」は終わり、空間認知と身体制御を司る小脳が完成し、小脳に付随する言語機能も8歳で完成をみせるそうです。

なお、小脳が担当する「二足歩行」や「ことばの発音・対話力」は、8歳までに習得しないと一生スムーズにできるようにならないといわれています。

対話力の完成期の最期の1年は、集団生活の中での会話経験が不可欠なので、世界樹の義務教育が7歳になる年から始められるのも脳のサイクルからみても理に適っているのです。

次の脳の切り替わりの周期は14歳で、おとの脳の完成期に入ります。

12歳までのこども脳は体験記憶を感性情報を付帯した形でインプットしてゆくことで、感性を育んでいくそうです。

反面、おとな脳は感性情報のすべてを記憶するわけではないので、こども脳時代ほど、感性豊かな記憶は残らないそうですが、反面、情報の出し入れが速くなり、とっさの判断、迅速な思考が可能となるのでした。

ただ、13歳から14歳はこども脳からおとな脳の切り替わりの時期で、脳が知識の切り替えを行う時間は眠っている間のため、中学生はひたすら眠いそうです。

中二病なるものも、この脳のサイクルの切り替えの時期といえば納得です。

次の21歳までに前頭前野は成熟期が迎え、脳の目立った成長は終わります。

単純記憶力のピークは28歳までだそうです。

29歳からは、脳の回路の優先順位をつける時期、「瞬時に本質を見抜く脳」に変わってゆきます。

35歳までは失敗適齢期、42歳までは惑いの時、42歳からは物忘れが始まると共に迷いも惑いも消えてゆく。

49歳は「生殖のための人生」を終え、次の人生への準備期間に。

56歳は脳は出力性能最大期に入り、脳が一番使えるのは実は50代以降とのことでした。

他にも「感性トレンドで時代を読み解く」と題し、脳のサイクルと大衆トレンドを結び付けたマーケティングの手法も紹介されており、今後の時代を占うにも有用です。

なお、人々の嗜好、流行にも脳に同期したサイクルがあり、7年×4の28年の周期があるそうです。

著者によれば、1999年から28年にわたる流行のサイクルが終わり、2027年にまた新たなサイクルを迎えるとのことです。

2027年以降、どんな時代が来るのでしょうか。密かに楽しみにしております。

「時代は私を待っていたの。私は生まれさえすればよかった」ココ・シャネル







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