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オタク女子が、4人で暮らしてみたら。

『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』藤谷千明 2020年9月刊 幻冬舎

本書の著者はサブカルチャーの分野で執筆を行っているアラフォー女性ライターの方でした。

同年代のオタク仲間を募り、ルームシェアを始めるところから、コロナ禍での同居人たちの生活までを綴ったルポですが、自分と異なるライフスタイルを送る人たちの生活の一端を知ることは新鮮でもあり、興味深かったです。

2019年より、作者を含め30代のオタク女子4人が集まり、一軒家を借り、ルームシェアがスタートしたとのことですが、それぞれの推しジャンルは異なり、作者である藤谷さん(39歳)はヴィジュアル系バンド。作者と15年来の友人でフリーランスの服飾作家である丸山さん(36歳)は週刊少年ジャンプ、コスプレ。ツイッターで知り合った都内IT企業勤務の角田さん(38歳)は宝塚から2.5次元舞台。これまたツイッターで知り合ったお堅い企業勤務の星野さん(35歳)もソーシャルゲーム、アニメ、2.5次元舞台となっておりました。

ちなみに2.5次元の舞台とは漫画やアニメ、ゲームを原作とした舞台やミュージカルのことを指すそうで、自分は見たことがないのですが、職場に好きな女性がおり、少年ジャンプにて連載していた「テニスの王子様」原作のミュージカルを熱く語っていたことを思い出しました。

職場の女性もそうでしたが、本書に登場するオタク女子たちも自分の推し文化が生活の根幹にあり、惜しげもなく推し活と称し、グッズ購入やイベントチケットに散財する姿は私には理解不能でしたが、その思い切りの良さは見ていて爽快でもありました。

最近、都市部の若者たちの間で、ルームシェア、シェアハウスは大分、浸透してきており、話はよく聞くようになりましたが、アラフォーの未婚女性のケースは聞いたことがなかったことも本書を手に取った理由の一つでした。

4人で生活することにより、一人暮らしと比較し、生活コストが格段にかからなくなったこと、そして、一人で暮らしているとわけもなく寂しくなったり、不安になったりすることがあった作者はそれが解消されたと、ルームシェアのメリットを挙げておりました。

しかし、「ルームシェア可」の物件は「犬猫可」の物件以上に希少で見つけることが困難であったり、不動産業者の入居審査に落ちたりとその生活がスタートするまではスムーズなものではありません。

ただ、この4人の同居生活、始まってみると揉め事などはほとんどなく、オタク仲間たちが定期的に遊びに訪れたり、みんなんで焼肉パーティーを開いたりと楽しそうでもありました。

また、同居生活が上手くいっているポイントとして、「衛生観念」「経済観念」「貞操観念」の3つの価値観の一致が重要とも語っていましたが、なるほどと思いました。

この3つの価値観、ルームシェアに限らず、夫婦、家族との同居においても重要なポイントともいえます。

本書のオタク女子4人、この価値観に大きなギャップがなかったことが、和気藹藹(わきあいあい)と暮らしていける要因の大なるところなのでしょう。

本書、今後、ますます拍車のかかるであろう高齢化社会において、結婚というパートナーシップ、血縁で結ばれた家族という共同体に頼らずとも生活していける一つの形態を提示しているようでもありました。

老後、趣味や嗜好の合う仲間たちとの暮らし、生活価値観に大きな違いがなければ、アリだなとも思いました。

現在、核家族化が進み、また地域の共同体がつぎつぎと崩壊していく日本ですが、あらたな形のコミュニティ、人々の連帯が今後、きっと必要とされてくるでしょう。

自分としては、趣味・嗜好も大事ですが、思想・志向、志を同じくする人たちと共に何か始めることはできないかと最近、ふと考えたりしております。

「家は生活の宝石箱でなくてはならない」 ル・コルビュジェ(建築家) 




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