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物理学者が解き明かす重大事件の真相

『物理学者が解き明かす重大事件の真相』 下條竜夫 ビジネス社

科学的な物の見方というものを改めて考えさせられた。

著者は原子分子物理、物理化学を専門とする研究者であり、その視点より、クリティカル(批判的)に社会問題、事件を分析し、解説したものが本書の主な内容となっていた。

そして、いわゆるマスコミを通じて、事実に基づき報道されていわれている出来事いったものが、真に科学的な見地からみてみると随分と偏りが多く、公平性にかけたものであることを痛感した。

改竄とまではいかないが、恣意的にデータ、数値を歪曲して伝えることが既に、日常茶飯事となったことは、最近のパンデミック事情を振り返れば自明であり、本書で紹介されていた福島第一原発事故での放射性物質の放射量、地球温暖化問題は、大衆の無知につけ込み、もうやりたい放題であった。

本書の白眉は、「現代物理学は本当に正しいのか?」と著者の専門分野にまで懐疑のメスをいれている点であり、こういった著者のスタンスにも大変、好感を懐けた。

そして、こういったスタンスを貫ける柔軟な科学者、研究者というのは実は稀れで、自説や定説にとらわれ、硬直した思考の持ち主たちが自称、科学者を名乗り、科学教という名の宗教を世間に流布させている現状に非常に憤りを感じてならない。

ちなみに現代物理学における正しさの判定基準は、現代物理学の体系との整合性があるか、ないかとのことだ。

すなわち、現代の技術では、現実に観測不可能なものでも、数学的に証明され、現代物理学の体系と矛盾したものでなければ、実際に存在しているとみなされているのだ。

この目には見えないもの、手にはふれないものを実際に存在しているとみなす行為であるが、何かに似てはいないだろうか。

自分は、ここに「神と素粒子」「宗教と科学」の近似性を感じずにはいられなかった。

以下、目次であるが、最終章で語られれていたノーベル物理学賞受者、湯川秀樹、朝永慎一郎の二人の師であった物理学者、仁科 芳雄の存在と功績を知ることも出来、よかった。

こういった偉大な人物こそ、後世に語り継いでゆかなければならない。

第1章 理科系の目から見た福島第一原発事故(1)
~福島第一原発事故の放射性物質放出量の過大評価とそのねらい~

第2章 理科系の目から見た福島第一原発事故(2)
~マスコミが伝えない原発事故の真実~

第3章 福知山線脱線(尼崎JR脱線)事故は車両の軽量化が原因である
~理系の目から事件の真相を解明する~


第4章 STAP細胞と小保方晴子氏について
~緑色に光る小さな細胞は本当に存在する~


第5章 和歌山毒カレー事件の犯人を林眞須美被告と特定した証拠は本物か?
~理科系の「科学的に証明された」ということばが、いつも正しいとは限らない~


第6章 排出権取引に利用された地球温暖化問題
~科学では地球の未来はわからない~


第7章 現代物理学は本当に正しいのか?
~正しさの判定基準は、物理学の体系との整合性にある~


第8章 仁科芳雄こそが「日本物理学の父」である
~政治的に葬られた日本の物理学の英雄をここに復活させる~


「科学とはもともと真理とは関係ない」 エルンスト・マッハ(物理学者・哲学者・科学史家)


人の世に熱あれ、人間(じんかん)に光りあれ。