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令和5年7月読書②

『カエルの楽園』 百田尚樹 2016年2月刊 新潮社

まず、表紙からしてイカしていた。
ギュスターヴ・ドレによる「王さまを求める蛙」からの挿絵がいい。
『永遠の0』や『海賊と呼ばれた男』等、ベストセラーを連発している作家の作品であったが、百田さんの小説を読むのは本作が初めて。
ユートピアとディストピアを描いた風刺の効いた寓話であったが、大変、読みやすく、子供たちに読んでもらい、感想を聞いてみたいと思った。
続編の『カエルの楽園2020』も続けて読んでみたのだが、残念ながら本作には及ばず。
ただ、『カエルの楽園2020』は終章が「バッドエンディング」「リアルエンディング」「グッドエンディング」の3パターンに分岐していて、「グッドエンディング」のカエルたちの自信に満ちた光は希望となった。

『ペットショップ無残』 石田衣良 2022年9月刊 文藝春秋

1998年から続く人気シリーズ「池袋ウエストゲートパーク」の最新作にして18作目。
上京し、20年近く池袋近辺に住み続けていることもあり、新刊が刊行される毎に読むのが習いとなっている。
本作も「ヤングケアラー」「海外移民労働者」「マッチングアプリ」「ペットの殺処分」等、時事問題を扱いながら、シリーズに通底しているのは人の情けであって、熱い物語がIWGP周辺で繰り広げられ、不覚にも毎回、涙してしまう。

『ギリシア悲劇の諸相』丹下和彦 2023年1月刊 未知谷

今年11月にすみだトリフォニーにて上演されるオペラの台本を悲劇で依頼されたこともあり、参考資料として読む。
本書にて紹介されていたいずれのギリシア悲劇も未見だが、とくに脚本の断片しか現存していないエウリピデスの『アンドロメダ』は気になった。
その作品が上演された都市では、観客の多くが狂気に憑りつかれたの如く、劇中歌を終演後に町中で歌い出し、大騒ぎになったという。
以下、本書にて紹介されていた演目。

第1章 うちの子―アイスキュロス『ペルシア人』(前四七二年上演)
第2章 あとは白波―エウリピデス『タウロイ人の地のイピゲネイア』(年代不詳)
第3章 遠眼鏡―エウリピデス『キュクロプス』(上演年代不詳)
第4章 仕掛ける―エウリピデス『アンドロメダ(断片)』(前四一二年上演)
第5章 渡る―エウリピデス『ヘカベ』(上演年代不詳)
第6章 書く―エウリピデス『トロイアの女たち』(前四一五年上演)
第7章 あかんたれ―エウリピデス『オレステス』(前四〇八年上演)
第8章 タガをはずす―エウリピデス『バッコス教の信女たち』(前四〇五年上演)

『EDORG(エドルグ)2023年夏号』 特集「焚火教育から古民家教育へ」

季刊で発売されている教育雑誌の夏の号。
お世話になっている松永暢文先生の実践する焚火教育の特集があり、子育て世帯は必見ではなかろうか。

先月、奥多摩へ焚火に行った時のことを松永先生に評してもらった事もよき思い出となる。



人の世に熱あれ、人間(じんかん)に光りあれ。