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蒲郡市が「まちを育てる人」を求めているらしい。

故郷の話題。
ただの話題提供なのですが、蒲郡にゆかりのある方になんらかのメッセージが届けばいいなという願望も込めて。

突如公開された「東港地区まちづくりビジョン」

2021年8月に蒲郡市は、かなり意欲的な要素を盛り込んだ計画「東港(ひがしこう)地区まちづくりビジョン」を策定・公表しました。
これを見て私がまず感じたのは、”蒲郡もはじまりましたね”ということでした。

何がはじまったのか?
それは、民間の主体的な取組に期待するまちづくりの進め方です。
どういうことか。

これまで、都市計画は行政(=官)の仕事だと、強く信じられてきたかと思います。
確かにそうでしょう、都市の骨格を成す道路の計画や整備、道路骨格に応じた建物の用途や建蔽率をはじめとする形態規制、生活の核となる公共施設の配置や再編など、都市計画のツールとして思いつくもののほとんどが、行政にしか対応できない領域にあるように思えます。
ましてや、こうした取組は短期的に収益を生むものではないからこそ、そんな都市計画に仕事として取り組むことのできる主体は行政だけなのだと思われて当然でしょう。

そんなイメージが、「新しい公共」や「民活」のキーワードのもと、変化しているのです。

さて、このほど蒲郡市が策定した「東港地区まちづくりビジョン」は、あえてカテゴライズするまでもなく、建設部門・都市計画分野の計画(ビジョン)です。
したがってこのビジョンの中には、
・対象地域(今回は東港地区)をどのようなまちにしていくのか
・それを実現するために行政がどのような整備事業に投資していくのか
ということについての行政の宣言が書かれていると思われるかもしれません。

それが、少し様子が違うのです。
特にこのビジョン、行政が率先して取り組む整備事業についてはほとんど書かれていません。

将来像の前に示される「まちづくりの方法」

例えばこのビジョンでは、対象地域をどのようにしていくかという将来像や方針を語る前に、まず「まちづくりの方法」を示しています。
方法?方法とは。
以下のページを、ざっとでもご覧ください。

対象地域の歴史のレビューを終え、いざ計画内容を語るフェーズに進むと思いきや、最初に出現するページ。

このように、「東港地区まちづくりビジョン」は、まちづくりに関わる人として、
・まちで過ごす人
・まちを育てる人
・まちづくりを支援する人

の3つのセクターを想定しています。
ここで、「まちで過ごす人」は市民または就業者・来街者に対応し、「まちづくりを支援する人」は蒲郡市をはじめとした行政に対応します。

それでは「まちを育てる人」とは誰のことでしょうか。

ビジョンの中では、「自ら行動し、相手や物事に対して積極的に働きかけることのできる人」という理想的・概念的な表現で表されているように、これは実在の主体を示すものではないと思われます。
言い換えれば、まちを面白くするようなハード・ソフト問わないコンテンツを積極的に仕掛けてくれる人(あるいは事業者)のことを指しており、そんな人がこれから出てきてほしい、そんな人たちと一緒にまちづくりを進めたい、というメッセージと考えると自然です。

繰り返しますが、従来的な行政計画・都市計画であれば、計画に書き込まれる内容は、計画策定主体(行政)が責任を持って実施できる項目に限られるので、「まちづくりの方法」をあえて示す必要はありません。
どのようなまちを目指すか、という将来像と方針を、エビデンスを含めて示した上で、そこに至るまでの行政施策の体系と、複数年度にわたる事業スケジュールを示せばよいのです。

ではなぜ「まちづくりの方法」が冒頭にあるのか。
それは、この「東港地区まちづくりビジョン」に書き込んだ内容を実現するには、行政(=蒲郡市)の力だけでは難しいからなのです。
より正確に言えば、行政だけで実現させては意味がないのです。

あえて曖昧さを残した「まちの将来像」

「まちづくりの方法」に続く、「まちの将来像」を見てみましょう。
ここでは、対象地域である東港地区をさらに3つのエリア「蒲郡駅周辺市街地」「海辺のみなと」「竹島周辺」に分け、エリアごとの"目指す姿"が"イメージ"として示されています。

例えば「蒲郡駅周辺市街地エリア」は、以下のようなイメージが示されています。

アピタ蒲郡店東側の道路空間の活用や、市民会館前の活用が描かれる
アピタ蒲郡店東側と思しき空間の活用が描かれる

ここで描かれているのは、道路や公園、公共施設の敷地内といった"公共空間"で、人が快適かつ生き生きと過ごす姿。
これらは、公共空間(パブリックスペース)を居場所に変えていくという考え方で、「パブリックライフ」と呼ばれます。

一方で特徴的なのは、このビジョンにおいては、行政が実施する大きなハード整備事業にはほとんど触れられていないことです。
つまり、"公共空間の活用"によって東港地区を活性化させていこうということが、ビジョンの本旨なのです。

"公共空間の活用"がここで挙がっている背景には、都市計画・まちづくりにおけるトレンドが大いに影響しています。
道路(特に歩道)を使ったマルシェやオープンカフェ、公園や河川敷を使ったカフェやイベントなど、ポテンシャルのある空間に対して、様々な魅力あるコンテンツを導入することで、まちの活性化やシビックプライドの醸成を実現した例が数多く出てきています。
特に、単発的な取組でなく、経営的な視点を重視し、収益化・資金循環の仕組みを構築することで、持続可能な形にすることが望ましいと言われています。

Googleで「公共空間 活用」を画像検索した結果。

それをやるのが「まちを育てる人」なのだ

さて、「東港地区まちづくりビジョン」に戻って。

ここで描かれているパースはすべて"イメージ"にすぎません。
中には、行政でしか対応できないような領域(道路や公共施設敷地)に空間整備が見られる書き込みもありますが、それも含めて"例示"であり、"イメージ"に過ぎないのです。

では誰がこれを実現していくかと言えば、それが「まちを育てる人」に他なりません。
蒲郡市を面白くしたいと考え、既成概念にとらわれずチャレンジしていく人に、パースで描かれている、パブリックライフ創出につながるような取組をしてほしい。
それが蒲郡市の考えだと読むことができます。

私は、この「東港地区まちづくりビジョン」は、そんな「まちを育てる人」が、「まちづくりを支援する人」の中心である蒲郡市と一緒にまちを面白くしていくためのハンドブック的なものと考えています。

さて、そんな「まちを育てる人」はどこにいるのでしょうか。
このまちに強い執着を持っている人、
愛着ではないけど、このまちでもっと面白く過ごしたいと思っている人、
外で培ったノウハウを故郷に生かしたいと思う人、
まちの活性化を願う事業者の方々、、、、

どんな人でもなりうると思います。

でも、「東港地区まちづくり」を意識するあまり、蒲郡市に都合の良い行動ばかりを起こすというのも面白くありません。
「まちを育てる人」が、このハンドブックを使いながら、「まちづくりを支援する人」である蒲郡市を、是々非々でうまく活用してやる、くらいの気概がちょうどよいのではないかと思います。

さてさて、そろそろウズウズしてきませんか。

何かはじめてやりませんか。

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