昔は良かったといつまでも言い続ける人類

「昔のテレビ番組は面白かった」
「コンプライアンスなど何もなくてめちゃくちゃやるのが良かった」
「テレビに常識なんか求めるほうが間違い」
こういう意見を目にすることが本当に多くなったが懐古主義は人類が文化を持ってからずっとあった。
いつの時代も昔のほうが良くて今は世知辛いのである。
いい加減にしてほしいものだ。
私は今年で51歳になるが昔のテレビの方が面白いと思ったことは一度もない。
子どもの頃のテレビは下品さと不謹慎さと倫理観のなさを競い合って、なるべくひんしゅくを買うような企画を考えたほうが勝ちみたいな番組ばかりで嫌だった。
テレビでやることを子どもが真似するというのは事実で、考え過ぎでもなんでもなかった。私が子どもの頃は子ども達はみなバラエティ番組で覚えた下品な流行語を口にしては親に怒られていた。
それに何より昔のテレビ番組はやたらと暴力的だった。私はドリフのコントは大好きであるが暴力的なものは今でもあまり面白いと思えない。ドリフくらいの実力があればそんなものに頼らずとも高度なスキルで笑わせることは出来るのにもったいないとさえ思う。
バラエティ番組はやたらと出演者の口が悪くすぐ喧嘩に発展して殴り合うというオチが多かった。私は見ていてそれの何が面白いのか今でも全く理解出来ない。
ひとりによってたかって暴力を振るい暴言を浴びせるという図式がやたらと多かった。まるで拷問動画を見せられて笑えと強制されているようだった。

それなのに現在ではそっちの方が良かったと言う人が一定数以上いる。恐ろしくてたまらない。
しかし実情としては私と同年代が昔を懐かしむというより、30代くらいの若者のほうが「昔は良かった」と経験したことのない過去を懐かしむという異常なことが起きている。
暴力的で下品で他人を不快にして、弱いものいじめをしてそれを笑うことを強制された時代を素晴らしいと評価しているのである。
狂気じみている。
人間は根本的に暴力と混乱と争いを求めているのかもしれない。戦争がなくならないわけだ。

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