官能小説に入門してみた

 一昨日読み終わった小説の読書感想を記録しておく。

「花びらめくり」
 花房観音/新潮文庫

 買ったのは随分前のことだった。発売当初、新潮文庫アカウントをフォローしている自分のTwitterタイムラインにやたらと宣伝が流れてきて、それが偶然にも、自分が官能小説に興味を持ち始めた頃と重なっていた。そして数日後、書店に足を運んだ時に出会ってしまって、何か運命的な感じを覚えたので購入した。
 しかし、買ったはいいけれど、私の悪い癖(積読がたくさんあるのに本を買う、買った本をとりあえず本棚に入れて眺めて満足する)のために、それからしばらく山のようにある積読の中に埋もれていた。ごめんなさい花房先生。

 そして、今回やっと読んでみて思った。うわぁ、えっろ。なにこれエロい。……語彙が吹っ飛ぶくらいのものすごい匂い立つような文芸エロスを楽しませていただいた。すごかった。入門書にしては濃かったな…個人的には、だけれど。
 本書は短編集で、近代日本文学を官能小説にしてみた、というコンセプトだそう。恥ずかしながら、ベースの作品はどれも自分は読んだことがなかった。そして、内容をちょろっと小耳に挟んだことのある谷崎潤一郎の「卍」が本当に百合で、三島由紀夫の「仮面の告白」は噂通り薔薇っていうか今風に言うとBLだったんだなと確認した。同性愛の話には全く抵抗も何も無いので、収録されていることに驚きはしたけれど楽しく読めた。
 これ以上ネタバレを避けて上手く感想を書くことは、私には出来ない。とりあえず、一番気に入ったお話は「卍の女」だった。

 そして、本編と同じくらい(というと失礼かもしれないけれど)興味深く読んだのが、あとがき。実は、上に貼ったリンク先に、本編のネタバレ解説部分を除いた形で、同じものがインタビューとして載っているけれど。
 詳しくは書かないが、「もしかして自分は性欲が強すぎるんだろうか、これは何かおかしいのかもしれない」と悩んでいる人、特に若い女性は、このあとがきを読むことで、ホッと救われる人も居るんじゃないかなぁと個人的に思った。

 美しい文章で綴られているのに、行間から色香が濃く立ち昇って噎せ返るようなエロスにあてられる、すごい五篇でした。
 ファンになってしまった。続編出てるようなので買わせていただきます。
 

ここまでお読みいただき感謝します。もしサポートいただけましたら、文章力を磨くために、本の購入資金にしたいと思います。