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契約書の電子化推進がうまくいかなかった話

クラウドサインやdocusign等のサービスの台頭により、契約書の電子化も大分進んできている。前職でも推進を検討していたところ、社長が乗り気だったため、1年で電子化率50%の目標をもって、電子契約を推進することになった。結果、最初の四半期目標の15%は達成したのだが、そこから伸び悩んで停滞してしまった。

中途半端に電子契約が進むと、紙と電子が混在して管理しづらいのよね…。

推進のためにやったこと

メリットの説明
幹部陣が集まる会議で以下のメリットがあるため、推進してほしい旨を説明。
(1)契約書の印紙代削減
(2)製本の手間&郵送コストの削減
(3)紛失防止
(4)契約締結の迅速化

賞金の用意
社長が乗り気だったため、四半期で締めて電子化数の一番高い部署に数万円の賞金を出すことにし、電子契約推進キャンペーンとして全社に告知した。

利用ガイドとテンプレートの用意
取引先に見てもらうための資料と、取引先に提案するためのテンプレート文言を用意した。テンプレート文言は、上記のメリットを提示したうえで、電子契約で締結しませんか?と提案する内容。

草の根活動
契約書レビューや作成の依頼が来たときは、レスと同時に電子契約推進のお願いを添えたりした。

それでもダメだった原因

提案のハードル
取引先に提案したが断られるという実情。事業部からは、半分以上は断られるという報告が上がった。対等な関係であれば、少し押せば行けると思うんだが、そこまでのモチベーションが提案者にはなかったと思われる。一度断られてしまうと次回以降、提案すること自体が面倒になってしまうのだろう。

習慣の変更ハードル
そもそも提案すらしてくれない、という問題。メリットを感じていないとか、私が嫌いとか、他に考えられる原因はあるが、社長の名のもとに推進していても提案すらしないというのは、今までのやり方を変えるというハードルがめちゃくちゃ高いのかもしれない。自分がやっていた今までのフローに違うやり方が入るという事がストレスになるのだ。

私がいた会社はITのメディア企業でもあり、新しいものが好きなイメージもあったので、便利なものは柔軟に取り入れると思っていたが、そうでもなかった。特に人に言われてやると言うのは、想像以上にハードルが高いようだ。

推進者のモチベーション
これは私の問題。そもそも電子化することで法務の手間はそこまで変わらない。紛失リスクが下がることは一番のメリットだが、その他の製本や郵送はもともと事業部側がやるものだったし、印紙代も私が所属する部門のコストになるわけでもない。事業部側にとってのメリットを提供しているのに、提案すらしてもらえないとなるとやる気もなくなる。

半年くらい継続して15%程度まで行ったところで頭打ちになり、社長のモチベーションも落ち、キャンペーンも終了した。そして、第3四半期目で私の退職も決まった(そもそもの私のモチベーションも怪しかったのかも)。

どうすれば良かったのか?

想定していた以上にハードルが高かった。

序盤から積極的に利用していた部署の人たちは、一度使うことで利便性を理解し、継続的に利用するようになった。ならば、未体験の部署には無理やりにでも一回は体験させれば良かった。無理なら実演をする等の手もあった。「相手がいる事なるので、できる範囲で…」という、及び腰の私のスタンスもダメだった。かと言って、半強制みたいなスタンスにしたところで巧くいったかは分からないが。

今度やるなら、事業部側にメリットを感じさせた上で事業部と法務が共通で長期的に目標を持ってやるか、法務はサポートに徹する方が綺麗に進むのではないか。

結局のところ、取引先に拒否されたらどうにもならない。中小企業は、大企業には逆らえないので、大企業からどんどん電子契約を推進していってこれが当たり前になれば時流も変わる。そんな、他力本願なことを考えずにはいられない。

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