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【公選法よくある勘違い】選挙カーに設置するのぼり旗には候補者の顔写真も名前も記載できます

10/20に前編が放送され、話題になったNHK土曜ドラマ「フェイクニュース」の選挙考証を担当しています。本日(10/27)21時から後編が放送されますが、選挙のシーンにおいて勘違いされそうなポイントがあるので先に解説しておきます。

選挙カーに設置するのぼり旗について

前編でも一瞬写ったのですが、候補者が選挙カーの上で街頭演説をするシーンが出てきます。そこに設置されているのぼり旗には、杉本哲太さん演じる新人の知事候補「もがみ圭一」という候補者名と顔写真が記載されています。

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少し選挙をかじったことがある人だと「候補者の顔写真と名前の入ったのぼりを掲示するのは公選法違反ではないか?」と思ってしまうところでしょう。実際の選挙でもTwitterなどで「のぼり旗に顔写真と名前が記載されているから選挙違反だ!」と騒いでる人を見かけますが、車上に設置されている場合は違反ではありません。公職選挙法第143条で以下のように規定されています。

(文書図画の掲示)
第百四十三条 選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号のいずれかに該当するもの(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては、第一号、第二号、第四号、第四号の二及び第五号に該当するものであつて衆議院名簿届出政党等が使用するもの)のほかは、掲示することができない。
一 選挙事務所を表示するために、その場所において使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類
二 第百四十一条の規定により選挙運動のために使用される自動車又は船舶に取り付けて使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類

はい、読み辛いですね(苦笑)公職選挙法はこのように非常に読み辛い条文ばかりで、私も駆け出しの頃は何度も読み返していました。平たく言うと、選挙運動のために使用する文書図画(ぶんしょとが、と読みます)の中で、掲示するものについては、

①選挙事務所を表示するためにその場所において使用されるもの
=選挙事務所の看板など(サイズ制限と枚数制限あり)
②自動車又は船舶に取り付けて使用するもの
=車の上に取り付ける看板や、車体に貼るステッカー、車上に設置するのぼり旗など(サイズ制限のみで枚数は制限なし)

この2つについては使用することができる、というものものです(細かいことを言うと候補者のたすき、腕章、はちまきとかありますが割愛)。のぼり旗は「立札及び看板の類」に含まれると解釈されていますので、選挙カーに取り付けて使用する場合は違反にならないのです。

千葉県佐倉市の選挙管理委員会のページにそのものズバリ解説している部分がありましたので、画像を掲載しておきます。

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ただし、①②以外で使用することはできませんので、候補者の顔写真と名前が入ったのぼり旗を、選挙事務所の看板としての使用でもなく、選挙カーに取り付けているわけでもない場合は違反になります。画像は同じく佐倉市の選挙管理委員会のページから。

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選挙の種類によっても規定が異なる

顔写真と名前の入ったのぼり旗については、選挙の種類によっても規定が異なります。衆議院小選挙区・参議院選挙区・都道府県知事選挙の場合は(個人演説会等の会場の掲示の特例)第164条の2という規定があり、第5項において「会場外のいずれの場所においても選挙運動のために使用することができる。」とされています。

この規定を活用して、衆議院小選挙区・参議院選挙区・都道府県知事選挙の場合は、個人演説会の看板として候補者の顔写真と名前の記載されたのぼり旗を作成し街頭活動中に使用する場合があります。「街頭演説で顔写真と名前の入ったのぼり旗を使用している!違反だ!」と思っても、上記3つの選挙の場合、立候補届出の際に選管から配布される「個人演説会用立札」の表示をつけていれば違反にはなりません。

あぁ、ややこしい(苦笑)

選挙違反かどうかの判断には公選法の正しい知識が必要

このように、同じのぼり旗でもどのようなシチュエーションで使用されているのかによって違反かどうかが変わりますし、選挙の種類によっても規定が異なります。

他人の運動について「選挙違反だ!」と決めつけているツイートを見かけますが、上記したような勘違いによるものも見受けられます。それこそデマの拡散であり、場合によっては「虚偽事項の公表罪」にあたる可能性もありますのでご注意ください。知ったかぶりで選挙違反の断定をするのは止めましょう。せめて公職選挙法の条文を確認し、選管にも確認してから判断することをおすすめします。

ちなみに、選挙違反の取締りは選挙管理委員会の仕事ではなく、警察の仕事です。選管に違反の取締り権限はありませんので、もし違反だと思うのであれば警察に通報しましょう。

個人的には、選挙において応援したい候補者がいるのであれば、対立候補の違反を探よことに労力を割くよりも、応援している候補者の魅力や「なぜ自分は応援しているのか」を発信した方が票になると思います。

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