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投票率は「上がった方が有利」なのか「下がった方が有利」なのか問題について

いよいよ本日10日(日)は新潟県知事選挙の投開票日です。「新潟県知事選挙の勝敗は投票率次第」という話が、金曜日あたりから飛び交うようになりました。それだけ激戦で、どちらが当選するかわからないということです。私もよく選挙の勝敗についてコメントを求められた時に「投票率次第では、、、」と言ってしまうのですが、実は「投票率が上がったら野党系候補が有利」とか「下がったら与党系候補が有利」と一概に言えるほど単純ではありません。そうした傾向もあるにはあるのですが必ずしもそうではありません。今日は投票日ですので、選挙情勢ではなく投票率の話を書きます。

誰が投票に行ったのか、または行かなかったのか

投票率とは当然、有権者のうちで投票に行った人の割合なわけですが、どのような層が投票に行ったのか、年齢や支持政党を分析してみると毎回の選挙で違いがあります。下記の画像をご覧ください。これはJX通信社が5月26日・27日に行った世論調査結果で、新潟県内の政党別支持率を棒グラフにしています。

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これだけ見ると無党派層が多いのですが、それぞれの支持層の投票率を仮定して計算すると、
・無党派層   (有権者の)40% ✕ 投票率 50% = 20%
・自民党支持層 (有権者の)30% ✕ 投票率 80% = 24%
このように、有権者全体に占める割合が大きくても、投票率が低ければ投票者数に占める割合は小さくなってしまいます。一般的に無党派層は自民党支持層に比べて投票率が低いため、「投票者数」で見ると自民党支持層が無党派層を上回ることが多いのです。

投票率の低い無党派層が投票に行ったことで、全体の投票率が上がったのであれば話は単純なんですが、激戦になると政党支持層の投票率も上がるので、それも投票率を押し上げることになります。無党派層の投票率が前回並みで、政党支持層の投票率が前回を超えれば投票率は上がるわけです。投票率は上がり、与党系も野党系も得票数を伸ばしたが、与党系が競り勝ったケースもあります。

私は首長選挙で無所属・新人候補のお手伝いをすることが比較的多いのですが、こちらが想定していたよりも投票率が上がらなかったにもかかわらず、新人候補が現職やその後継候補を破って当選するケースが度々ありました。要因はいくつかあるのですが、出口調査等を分析してみると、本来は投票に行くはずの政党支持層が、あまり投票に行かなかったと考えられます。

本来であれば支持層の8割が投票に行き、その中のさらに8割が現職に投票するはずが、支持層の7割しか投票に行かず、しかもそのうちの7割しか現職に投票しなかったことで票を減らしてしまうというパターンです。無党派層の投票率は多少上がったようでしたが、政党支持層の投票率が下がった結果、トータルの投票率はそれほど上がらなかった、または少し下がったが新人が当選するということが起こります。

一般的に組織票は投票率に左右されず、確実に投票に行くと思われていますが、必ずしもそうではありません。毎回の選挙でバラツキがあります。組織がフル稼働して、いつもは支持層の8割しか投票に行かないのに、支持層の9割が投票に行くというケースもあります。

ですから、私は選対会議で「投票率が上がった方が有利なんでしょうか、下がった方が有利なんでしょうか」という質問を度々いただくのですが、「私たちの候補に投票してくれる人だけが投票に行ってくれれば有利になります」と答えるようにしています。これは大真面目な話で、陣営にとっては、自分たちの候補に投票してくれるはずの人に、確実に投票所まで行ってもらうことができるのかどうかが、選挙戦の最終盤においては非常に重要になります。有権者が投票所まで足を運び、手続きをし、候補者名を自筆で記入して投票箱に投じて初めて一票になります。この大きなハードルを越えられるかどうかに、選挙の難しさがあります。

新潟県知事選挙の投票率は上がる可能性が高い

今回の新潟県知事選挙については前回投票率を上回るのではないかとみています。理由は、国政での与野党対決になっており構図がわかりやすいこと、また9月の自民党総裁選の政局が絡んで全国的に注目され報道量やネットでの情報量が増えていること、そして横一線の激戦になっているということです。過去の新潟県知事選挙でも、当選者と次点の得票率に差が少ない接線となった場合は投票率が高くなっています。

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ただ、投票率が上がったからといって必ずしも野党系に有利とも言えない可能性があります。与党系も必死で一票一票の積み上げをやっていますから、組織票の上積みによる投票率向上があるからです。逆に、それほど投票率が上がらなかったとしても与党系支持層があまり投票に行かず、野党系の支持層や無党派層が多く投票に行くことになれば、全体の投票率が低くても野党系に有利になる可能性もあります。

政党支持層だけに絞って説明しましたが、他にもどの「地域」「年代」「性別」の投票率が上がるのか、下がるのかによっても有利・不利は変わります。新潟県の場合は衆議院の小選挙区が6つありますから、それぞれの選挙区によってどちらの候補が強いのか、一定の傾向があります。自分たちの強い地域の投票率が上がり、弱い地域の投票率が下がれば、トータルの投票率が下がっても有利になるわけです。

長々と書いてしまいましたが、このように投票率というのは一概に「上がれば○○が有利」「下がれば△△が有利」とも言い切れないものなのです。上越市選挙区と南魚沼市南魚沼郡選挙区の県議補欠選挙のある地域は投票率も上がると思いますので、この地域でどうなるかも注目です。また、独自の闘いを展開している第3の候補が、地元で一定の票を得るのではないかとも言われており、激戦の中で実は大きな影響を与える可能性もあります。

投票所入場券がなくても投票できます

ちなみに、よく誤解をされるのですが選管から送られてくる郵便物(投票所入場券)がなくても投票はできます。ただ、お住まいの地域の投票所に行く必要があるので、わからない場合は新潟県選管に電話(025-280-5057)で確認しましょう。

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投票率、という数字だけで見てしまうとわからなくなってしまうのですが、それらは新潟県民の○○さんや□□さんといった方々の一票一票が積み上げられたものです。誰が、誰に投票するのか、はたまた投票へ行かないのか。投票箱が閉まるまで、結果は誰にもわかりません。

今回投票に行った方には、どんな結果であれ自分が誰に投票したのか、または投票に行かなかったのか、それはなぜかをしっかりと記憶し、また次の投票機会に活かしていっていただければと思います。

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