「ひろがるスカイ!プリキュア」 感想

長年のプリキュアファン、KLPです。

先日遂に完結した「ひろがるスカイ!プリキュア」。様々な出来事のあった20周年記念の作品でした。
見終わった今、感想をまとめていこうと思います。

やや批判的なので、ご了承ください。


キャラクター

【とにかく濃いメンバー】

ひろプリはキャラクターの持つ要素にたくさんの「初めて」があり、放送開始前から話題が満載でした。

青がテーマカラーで異世界出身の主人公、男の子、成人、赤ちゃん、異世界関係者だらけのメンバー……。
しかし、そんな表面的な情報がどうでもよくなるほど、それぞれのキャラクターが濃かったです。

ヒーローを目指し、まっすぐな信念を持つソラ。
どんな時も優しい心を持ち続けるましろ。
真面目で勉強熱心、そして勇気のあるツバサ。
みんなを見守る素敵な大人のあげは。
守られるばかりでなく共に戦おうとするエルちゃん。

どのキャラクターも、魅力的なところを挙げ出したらキリがないほど個性的で、互いを補い合いながら日々を過ごし、戦いに臨んでいました。

こうしたキャラクターの躍動を見るにつけ、「初めて」というのは一つの情報にすぎず、どんな要素も一要素でしかないということを、いい意味で実感しました。
初めて男の子が登場した、成人が登場した……ということに何か特別な意味を見出したがるのは、視聴者、それも過去のプリキュアを知っているタイプのファンだけです。ひろプリそのものの中では何も特別なことは起きていないし、本人たちも選ばれたからには使命感を持って戦っている。ただそれだけのことなのです。
プリキュア20年目がこのメンバーで良かったと思っています。

【とにかく濃い関係性】

キャラも濃ければ、キャラ同士の関係も濃く、それぞれの関係性がお話によって生かされていて面白かったです。

物語の始まりを彩った、ソラとましろの友情。
キュアスカイがキュアプリズムを思うがゆえに、すぐ「一緒に戦おう!」とはならず「変身しないでほしい」と言う回や、挫折したソラにましろが手紙で優しく語りかける回は特に印象に残りました。

そんな2人の前に現れすぐに打ち解けたツバサは、一方、ましろの幼馴染であるあげはとは、初めはぎくしゃくしていました。
しかしあげはがキュアバタフライになると、ウィングと合体技を繰り出し、終盤には「最強のコンビ」にまでなりました。
歳の差や性別をいい意味で乗り越え、信頼を築く姿は、男の子プリキュアや成人プリキュアに対する評価を上げる一因となったと思います。

物語のカギを握るエルちゃん。メンバーの手で大切に育てられるエルちゃんは、全員を家族のように思っていますが、中でもツバサとの関係は特別でした。
元々はエルちゃんを守りたいとウィングになったツバサは、「ナイト」を名乗りました。それはエルちゃんがキュアマジェスティとして共に戦う仲間になってからも変わりませんでしたが、特に第40話からは2人の絆が伝わってきました。

マジェスティに変身できるといっても、エルちゃんは赤ちゃんです。赤ちゃんが結婚式ごっこをしようとするだけでも微笑ましいのですが、ツバサがエルちゃんの真意を理解し、単に赤ちゃんの遊びに付き合うというだけではない、プリンセスへの敬意を表する場面は、まさにナイトとしての振る舞いでした。

スカイランド出身で、ひろプリチームにアドバイスを与えるヨヨさんも素晴らしいキャラクターでした。
特に、ツバサに学びがつながっていくことを教える第21話はとても良かったです。

以前、私はこのお話について、ツバサがプリキュアとして飛べるようになったことに満足した点を「拍子抜けした」と書きました。

今でも、プニバードの姿で飛ぶツバサを見てみたかった気持ちはあります。
ただ、プリキュアの力をずるいもののように言うのも違うし、プリキュアになれたのもまたツバサの実力である、とも考えるようになりました。

また、敵の一人・バッタモンダーがましろと交流する展開も、意外性があり楽しめました。
以前、バッタモンダーがどのように退場したか分からず、行方が気になっていた私としては、その無事を確認して胸をなで下ろすと共に、彼にいい影響を与え続けるましろに感心しました。

ストーリー

【挑戦は上手くいったのか?】

一方ストーリーについては、残念ながら、納得できない部分が多々ありました。

ひろプリはこれまでの作品と明らかに違う流れになっていました。
私自身は、いつも同じことをするより時には意外性も楽しみたいと思っているので、その姿勢は支持します。
ただし、それがプラスになっているかは別の話です。

例えば、初期メンバーであるキュアバタフライが加入したのは第18話。かなり遅かったのですが、何か意味はあったのでしょうか?ただやきもきさせられただけという印象です。
変身するときは割とあっさりしていて、「成人でもプリキュアになれる」と強調するような描き方でなかったのは良かったです。しかし、だったらなおさら、なぜ今まで変身できなかったのだろうとも思いました。

また、公式サイドからは「悪役会議」を意図的に描いていないと明かされていました。
私にはこの方針が上手くいったようには見えませんでした。

戦う理由が徐々に明かされる流れがないので、全体が途切れ途切れに見えてしまったんです。
各メンバーの担当回では、そのメンバーの成長が分かったり、伏線が回収されたりすることもあり、それだけ見ればおもしろいとも感じましたが、1年間続く戦いの流れに乗っていないように見えました。
エルちゃん絡みの話の時だけ、急に物語が進展する印象でした。

敵のトップであるカイゼリン・アンダーグが、残り10話を切ってから姿を現すまで、シルエットの登場はおろか名前すらほとんど呼ばれないというのは、ちょっと疑問です。会議を描かないにしても、少しずつ何かの形でヒントが出てくると良かったのですが……。

スキアヘッドの立ち位置が予想外に変化していったのはおもしろかったのですが、やはりアンダーグ帝国の設定や背景は、最終戦でさらっと説明された感があり、結局何だったのかはっきりしない部分が多いように思います。

【設定がもったいない】

スカイランドという異世界があり、メンバーがその関係者だらけなのに、どういう世界なのか分かる話があまりなかった気がします。
こちらの世界との比較はあるにしろ、あまり深く触れられていない感じでした。

ソラやツバサのように時々こっちに来てしまう人がいたり、スカイジュエルが落ちてきたりするのは何だったのでしょうか。色々深読みしていたのですが、特に伏線にはなっていなかったようです。

また、ソラの恩人であるシャララ隊長や、ベリィベリー、アリリ副隊長など、一目で魅力的だと分かるキャラクターがたくさんいたにもかかわらず、あまり出てこなかったのも残念でした。

スカイランドに行かない分学校の風景が出てくるかというと、そうでもありません。ソラと仲良くなった中学校の友人たちがもっと絡んでくれるといいのに、と思いました。
たまに出てくる学校行事や、最終回の様子を見るに、ソラはかなり馴染んでいたようなので、その馴染んでいく様子が見たかったです。

【流れの悪さ】

悪役会議のなさのせいなのか、設定のもったいなさのせいなのか、話の流れ自体があまり良くないと感じることもありました。

特に挙げたいのは第44・45話。やっとアンダーグ帝国について深掘りされ始める重要な回でした。

この時ツバサとあげはが置き去りにされた展開を、未だに私は飲み込めません。
原因として思い当たるのは、不自然に生えた草むらに遮られていたことくらいで、残って何か役割を背負っているわけでもなく、ただ止まった時の中で倒れたままでした。エルちゃんの立場が特殊なことを考えれば、ソラとましろだけが大切な役目に選ばれたように見えます。
これまでの作品でも、チーム内でコンビが強調されることは何度かありましたが、重要なお話で、それも何の役割も与えないまま他を無視するような場面には思い当たりません。
一体何のための5人チームなのかと、疑問に思いました。

逆に、終盤でアンダーグ帝国に向かった際は、誰もがそれぞれの役割で分散していったので、演出として分かりやすかったのですが……。

また、前後編に渡ったにもかかわらず、カイゼリンが何故変わってしまったのかという肝心なところまでは明かされず、モヤモヤしてしまいました。
最終戦で説明が駆け足になってしまうのだったら、ここでもう少し真実が分かれば良かったと思います。

まとめ

まとめると、キャラクターはとても魅力的で、「初めて」の要素も上手く馴染んでいましたが、ストーリーは試みた部分がプラスにならず、惜しいと感じる部分が多くあった、というのが私の感想です。

ただ、時にこうして挑戦する姿勢は応援していきたいと思います。
シリーズを続けていくには挑戦は必要ですし、続いてきたからこそ挑戦する余地もあるのでしょう。

プリキュア20周年には、ひろプリ以外にも様々な新しいことがありました。
最初はどうなるか分からないと感じたことも、結果的には素晴らしいものになっていることばかりで、私はこれからのプリキュアも楽しみになりました。
成功しているものの方が多いのですから、挑戦をやめないでほしいと思います。

いよいよ新作「わんだふるぷりきゅあ!」が始まります。
今回はペットが飼い主と共にプリキュアとなり、主人公は犬ということで、「初めて」人間ではない主人公です。今回もキャラクターには「初めて」がありますが、ストーリーはどうなるのでしょうか。

なお、私はもともと感想を発信したいと思う方ではありません。
男の子プリキュアを巡る議論で思わず始めてしまったブログなので、続けるかどうかは未定です。
私の記事を読んでくれている方がいらっしゃったら、もしわんぷりについて投稿しなくても、プリキュアのファンをやめたわけではないと考えていてください。


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