昇格と降格
人事評価において「昇格」「降格」を決めることは非常にデリケートで難しいイシューです。
昇格については、年功序列的な評価制度だと、
・能力のアップ=経験年数に比例
という考え方から、事実上、年齢や年数で「昇格」させることが多いです。
実際には、能力評価によって若干の差をつけていきますが、
「もうあいつも〇年目だから、そろそろ主任にしないと辞めちゃうよね」「同期はみな課長になっているし、あんまり腐らしてもよくないので、来年は課長にしよう」
という良くない意味での”情実人事”の温床になったりします。
これに対してジョブ型や役割型は、組織で求められる業務レベルや役割と等級が紐づきますので、上のレベルや役割が果たせるかどうかで判断して昇格を決めていきます。年齢や経験も多少は考慮されるものの、基本的には組織貢献目線ですすめられます。
次は「降格」。
年功序列の大きな問題は「降格」のロジックが難しいことです。
出勤日数や勤務態度というわかりやすい崩れ方だと降格も納得いくのですが、年功序列のベースである能力評価が年齢や経験で決まる以上、降格させるとなると、”能力が落ちた””能力を発揮できなくなった”という理由になりますが、本人にとってはなかなか納得いくものではないようです。
プロ野球でいえば往年のホームラン王がほとんど出場機会がなくなったのに過去の実績とオーラーで高年俸を維持しているような人たちです(プロ野球ではいまはそんなことはなさそうですが)。
この問題も、ジョブ型や役割型である程度の合理性をもって「降格」をすすめることができます。
但し、日本の場合、あまりドライにできないことも考慮に入れないといけないようです。
そのポイントとしては、
・人事評価だけで機械的に降格ということにはしない
・あくまで降格候補者を継続的に抽出し、本人と話し合いの機会をつくる
・配置転換など、パフォーマンスが発揮できる部門への配置換えを模索する
だと考えます。
基本的には、頑張ればわかりやすく昇格し、頑張らなければわかりやすく降格になる、降格してもわかりやすく復活できる、という人事制度が理想的だと思っています。
一方、労働力人口が急加速で減少し、優秀な人材は不足し、エンゲージメントも低い日本企業においては、合理的な人事評価をすすめつつ、少しだけ情実人事も残していくことが、いまは必要ではないでしょうか。
人事制度改革は重要な企業戦略です。
時代の変化に呼応しながら、企業の持続的成長を目的として、かたや算盤、かたや論語ですすめていきたいと考えます。