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リバーシブル

嘘をついた時に吐く白い息がなくなってしまった
みんなが透明な嘘を吐くので
濁った色ばかりが流行る都会の満員電車は
憂鬱を換気しながら走ることにした

閉じこもった部屋の青白い壁に向かって
怖いものだらけの世界を見ている誰かの
手を取って太陽の下に連れ出したい

そこには花が咲いて
鳥が飛んでいる
生きる意味なんてないかも知れないね
私たちは生きる意味について考えすぎた

マッチを擦って火をつけるような魔法を見せるよ
小麦をこねて膨らむような誰かの作った喜びでいいかな

甘すぎて割れたクッキーの味
でたらめなメロディーの鼻歌
錆びた弦と埃の匂い
ノートのすみの落書き
カーテンから差し込む夕暮れ
眠たくて曖昧な返事
天井の上にある宇宙


(詩人の会提出詩、課題テーマ、一年間)

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