見出し画像

『歓喜の歌』岐阜県ピアノ講師・高岡紀美子🎼エッセイ作品

 大晦日。テレビの前で“年越しそば”を食べながら、ベートーヴェンの『第九交響曲』に耳を傾ける。「友よ、歌おう!喜びに満ちた調べを…」。そんな華やかな歌詞で始まる第4楽章『歓喜の歌』は聴衆の心を高揚させ、鼓舞させる。

                                   🎶

 断りもなく、壁をぶちぬいたり、窓を作ったりして、家主と大ゲンカするベートーヴェン。ところかまわず唾を吐き、汚れた食器と楽譜が散乱する下宿部屋で、「入浴だ!」と言っては、バケツの水を着衣のまま頭からぶっかける。階下の住人から苦情が相次いでも、知らんぷり。浮世の制約と倫理に拘束されない自己虫(チュー)の実践者であった。

                                 🎶

 自由・平等・博愛を唱えて『歓喜の歌』を書き上げるベートーヴェン。人類愛の権化のように、「互いに手をとり合おう、世界の人々よ!」と高級なスローガンをかかげながらも、「小銭をごまかしたな」と言っては家政婦の背中めがけて生卵を投げつける。言行不一致、支離滅裂だが構ったことじゃない。万物は自分を中心に回っているのだから…。口を一文字に結び、髪を振り乱しながら、「兄弟よ、おのれの道を突き進め!英雄が勝利の道を行くがごとく」と、高らかに歌いあげる大作曲家。そんな凄まじいほどの情熱と才能は、彼の数々の愚行を一気に燃やし尽くしてしまう。私たち日本人にとって、年末の『第九』は1年間の鬱憤を晴らす“カンフル剤”であり、新年を迎えるための打上花火なのかもしれない。

岐阜新聞掲載

最後までお読みいただき、ありがとうございます!早いもので、、2020年も残り1日となってしまいました。ベートーヴェンのエネルギーが爆発している『歓喜の歌』を聴いて、パワーを充電して、来年もピアノ上達の道を歩いていきたいと思います!来年は発表会でお会いできると良いですね🤗では、よいお年をお迎えください🎶くらびあはな🌸

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?