屑の立場から医者の過重労働について考える

クズの目線から医者の過重労働について考える

研修医として働き始めてから最初の2ヶ月間、23時より前に帰った事は殆どなかった。みんなそうなのだと思っていたしそれに疑問は感じていなかった。25時26時とかいうことも数回あった。

何をしてたかというと、色々してたんだけど、大した事はしていなかった。医者らしい業務で時間がかかっていたわけではなくて、いろいろわからないから時間がかかっていただけだ。真面目に考えればまだまだいくらでも学ぶ事はあっただろうと思うが、それを言ってもきりがない。

なぜそんなに帰りが遅かったのか?

先輩方が日中他の仕事をしていたから、というのも、かなり有力な理由の一つである。

当たり前の話で、一部の例外を除いて日中に新人の指導をするためだけの時間など先輩方も与えられていなかった。だから、指導を待つような場合、18時以降、もしかしたら19時以降、下手したら21時から全てが始まるのだった。当然待っていた。

それはもう先輩方も災難といえば災難で、同様に帰れない訳だ。先輩方には先輩方で、さらに研究業務などもあって、それらは当然のものとして日勤帯の業務の外にあった。

21時から少し指導を受ける。それからまた、パワーポイントなんかを作り直したりする。オーダーしたりもする。なんかほんとによくわからかいけどやる。

研修医時代、土日の出勤は当然の事だった。ほとんどの研修医は朝早く行っていた。自分は基本的に朝早くはあんまり行っていなかったが、それでもまあ行ってはいた。(朝早く行く事もたまにはありました)

研修医が終わってからも長らくそれは続いたが、やっぱり最近は働き方改革の波みたいなのが押し寄せてきているので少しずつは改善してきている。

歪んだ環境で育った先輩に今まで言われたそれはダメだと思うっていう言葉の中で、深く心に残っている言葉を三つあげよう。

その1
21:30?それは帰るの早いよ。僕らの時はいつも日を跨いでいたよ。
(その日はたまたま早くて21:30だった。他の日は23時越えていた)

その2
もっと早くくればいいんじゃないの?
(日曜のお昼くらいに回診しててわからない事あって先輩に電話した時。そんなん休日に行ってるだけでえらいでしょ。時間まで指定しないでくださいよ)

その3
日中に病棟業務をするな
(日中は検査、処置の時間だからとのこと。ほんとに数年それが正しいのだと信じていた。)

それらの先輩方はみんな多分素晴らしい医者だ。それに異論はない。しかし、歪んでいるものは歪んでいるのだ。そこに真面目な人は合わせていく。それが脈々と受け継がれてきた文化なのだが、もう無理だ。理不尽なものは理不尽であることがちゃんと明らかにされる世界になってきた。だれでも情報を簡単に発信できるし、簡単に不正を告発できる。だからこそ男女平等も叫ばれるし労働時間の適正化も叫ばれる。

それによって世の中の歪みはさらに大きくなっており、さまざまな不都合が生じていると思う。歪んだシステムが強制的に正常化されようとしている過程で一時的に、今、いっそう歪みが強くなっている。

死ぬほど働かされてきた世代の先輩方は今なお死ぬほど働かされているのかもしれない。

新人はドライだという。定時で帰るという。そう言われている。でもそれが普通だ。上もそれはわかっている。

どこの世界も中間が抜ける傾向にあると思う。

新人は、過剰な労働は過剰なものだと知っている。最近は世の中も正常化されているから過剰に働かなくてもそんなに責められはしない。
上の人は、過剰な労働は過剰なものだと薄々感じるようになってきつつも、過剰な労働は必要なものだと今も思っている。
中間層は、過剰な労働が当然のものであった時代を知りつつも、それが異常なものであったことにもう気づいている。

そこで何が起きているか。

過剰な労働に嫌気が差した中間層は、辞めていくのだ。

普通に働けばいいのに。

普通に働いてるだけじゃ居心地が悪いからだ。

多くの業務は日中に処理する時間がそもそも全く用意されていない。

普通に働いてるだけじゃ、過剰に働いている先輩方に対して申し訳が立たないから辞めていくのだ。

そして中間層が抜けると上の仕事がまた増えるのだ。

そこで思うのだ。過剰労働のストレスで人がやめるくらいなら、普通労働でいいからそのまま居てくれたほうが皆楽だったんじゃないかと。普通に働いていると居心地が悪い環境が何より悪いんじゃないかと。

働いても働かなくても給料は変わらない。

働かない方がもらえるというよう立ち位置も下手したら存在する。

もうそんなシステムがどうしようもないもの。

学会発表のたびに直前数週間はなかなか帰れない日々は当たり前だった。一番きつかったのは昨年の3月から4月にかけて、ある業務で、連日24時を越え、数日は徹夜した。個人的に時々ある脳内麻薬的な過集中でなんとかやり過ごしたけれども、あとから思えばそれは決定的だった。

今、希望としては普通に家でご飯食べたいなってだけなんですが

だから、そのまま居ようと思うんです。


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