グーグル効果|人間価値の低下と記憶力という武器を磨く
パソコンやスマホの中に役立つ情報やメモを大量に保存してるけど、正直全然覚えてない、そこのあなた!
わかります分かります、その気持ち。有益な情報はネット上に溢れているのでとにかく保存したい。しないと損をした気分になりますよね。
しかし、実はその行為「あなたの脳を溶かして記憶力の低下をもたらしている」なんて事に繋がっているとしたらどうしますか?
「グーグル効果」というものがあります。これはスマホやパソコンなどのオンラインデバイスに情報を保存すると「知識はいつでも取り出せる」という安心感から、人はその情報を積極的に覚えようとせず、むしろ忘れやすくなる心理傾向のことです。
「情報を保存したから自分はまた1つ賢くなった!」というお得感や優越感は幻想だったというわけです。
今回はグーグル効果がもたらす影響やそれらを踏まえて価値が高まる記憶力の重要性について考えてみます。
保存による安心感:なぜ人は記憶することを放棄するのか?
なぜ僕たちは情報が保存されていると、記憶する意欲を失うのでしょうか?それは脳がとても「倹約家」だからです。
膨大な情報をすべて記憶しておくことは、脳にとって大きな負担となります。 そこで僕らは「重要性の低い情報」や「簡単にアクセスできる情報」を優先的に切り捨て忘れるという合理的な戦略をとるのです。
かつては図書館に出向いたり、百科事典をめくったりする必要があった情報も今ではポケットからスマホを取り出して検索すれば、瞬時に手に入る。
つまり情報へのアクセスコストが劇的に低下したことで、脳は「わざわざ記憶しておく必要がない」と判断し、記憶へのモチベーションを低下させているのです。
記憶力低下の先に待つもの:創造性の衰退、思考の硬直化
この話を聞くと「別にすぐ取り出せるんだから人は記憶しなくてもいいんじゃない?」と思う人もいるかもしれません。取り出す回数が多ければ結果、記憶に繋がるので良きです。
しかし保存の安堵からくる記憶の放棄は、やはり人に深刻なデメリットをもたらす可能性があります。具体的には、創造性が衰え、「思考の硬直化」「アイデアの不足」「自分軸の欠如」などを引き起こす要因になり得ます。
例えばタクシーの運転手は、複雑な街並みを記憶する必要性から、一般の人に比べて脳にある海馬の体積が大きいという研究結果があります。これは日常的に記憶する活動が海馬を鍛え、発達させることを示唆しています。
逆に言えば、記憶する行為を怠ることで、海馬の機能は衰え、記憶力は低下していくと言えます。使わない筋肉が衰えていくのと同じ現象です。
また記憶は人間的価値と密接な関係があります。例えばチェスプレイヤーは、膨大な数の棋譜を記憶することで、瞬時に最適な手を判断します。それが彼らの人間的価値であり、社会が認める魅力です。
しかし、もし彼らが記憶に頼らなくなったら?もしAIや保存されたチェスの必勝法をリアルタイムで参考にしながらプレイしていい世界観になったら?それはもう僕らの知るチェスではなく、もはや人がチェスをする意味もなくなります。
このように考えると「記憶」とは、人にとって価値を生み出す重要な資源の1つだと言えます。あらゆる分野において、人は過去の知識や経験を記憶して、その土台の上で自由な発想や技術を展開していく、それがこの世界では価値になる。
少しまとめます。人が求める価値には提供者の「記憶」が材料になっている。記憶する機会の放棄はその人の記憶力の低下を招く恐れがあり、それは人間的価値の低下にもつながるのでは?という仮説。
デジタル時代にこそ輝く「記憶力」という武器
さてAIや情報空間が加速する社会では保存の回数ばかり増え、グーグル効果から逃れられない一方、「記憶力」という武器を磨くことの重要性はより高まっていくと考えます。
AIがすごいからAI技術を学ぼうとか、より記憶しなくていい世界が来るとか考える人が増加すると思うんですが、逆張りで人間らしく「記憶力」を勉強しまくるのが実はいいのかもしれません。
例えば古代ギリシャ時代から伝わる「記憶術」には、情報を効率的に記憶するための技術体系があります。これは単なる暗記術とは異なり、情報を整理し、関連付け、イメージ化することで、脳に記憶を定着させる高度な技術です。
具体的には「場所法」というのがあって、馴染みのある場所を思い浮かべ、そこに記憶したい情報を配置していくみたいな方法があります。 この方法を使うと、抽象的な概念や数字の羅列なども、視覚的なイメージとして記憶できるそうで。
「ストーリー法」も有名です。記憶したい情報をストーリーに織り込み、物語として記憶する。学歴いい人はよく使う印象あります。 物語は感情移入を促し、記憶に残りやすいため、歴史上の出来事や人物名を覚える際とかにも効果を発揮します。
こんな感じで記憶術にも色々あるので、AI時代だからこそ、記憶の専門家になれば活躍の幅は広がりそう。僕の領域ではないのでやりませんが(笑) 誰か代わりに実行したら教えてください。
まとめ:記憶の真価と創造性を駆使した人間らしい未来へ
グーグル効果は、僕らに「記憶」の真の意味、そして人の価値について改めて問いかけています。
僕たちはインターネットという巨大な図書館を手に入れましたが、その図書館を使いこなすために自ら思考し、創造し、行動する力が必要です。
便利なツールは頼る、でも頼りすぎるのではなく記憶も磨き、情報を創造的に活用することで、より豊かでより人間らしい未来を創造していくことができるのではないでしょうか。
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