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透明であること(2)

 「透明であること(1)」で書いた通り、透明であるためには、可視光を吸収して透過する必要があります。どういう構造だと光が通り抜けるようになるのでしょうか?

 可視光が通り抜けられるようになるには、条件があります。それは、可視光の波長よりも、ものを構成している塊の単位が小さい必要があります。可視光の波長は、「光沢とは何を見ているのだろう?(2)」で書いたように数百nm(ナノメータと読み、1nmは、1/1000,000,000m)ぐらいの長さです。可視光の長さよりも、ものを構成している塊の方が小さければ、可視光は塊にぶつかることなく通り抜けてしまいます。つまり反射に必要な大きさの塊が無いため反射されないのです。

 ここでいっている塊とは、分子や分子がいくつか集まってできたものです。分子の大きさはいろいろですが、金属や鉱物のように結晶構造をとらない限り可視光の波長よりもかなり小さくなります。ほとんどのものは、人間から見るとぎっしりと中身が詰まっているように見えますが、可視光の波長レベルの大きさで見ることができるとすれば、かなりすかすかの状態にあります。従って、可視光はものを通り抜けてしまうのです。

 水を考えてみます。水の分子は酸素原子ひとつと水素原子2つで分子を作っています。その大きさは1nmよりも小さい。従って、水分子が数十個集まって塊を作っていても、可視光の波長よりかなり小さいので可視光は水の中を透過します。従って透明に見えるのです。

 では、牛乳はどうでしょう? 牛乳には水の他に、脂肪球という塊があります。この脂肪球は1ミクロン(1000nm)から15ミクロン(15000nm)の大きさをもっています。可視光の波長よりも大きいため、可視光は脂肪球で反射され白く見えます。

 続いて墨汁です。墨汁は、墨を硯にこすりつけて水に混ぜたものです。墨の主成分は炭で炭素原子の塊です。この炭素の塊も可視光レベルからみればかなり大きさです。従って、可視光は通り抜けることができません。そして、牛乳と大きく異なるのは、炭素原子の塊は、可視光のエネルギーを全て吸収してしまいます。従って、可視光は炭素の塊に吸収されてしまい反射しないので黒く見えるのです。吸収された可視光のエネルギーは、人間には見ることのできない赤外線となってものから放射されます。

 最後に白い花です。「透明であること(1)」で書いた通り、白い花の花びらは透明です。透明の花びらの中に可視光よりも大きな気泡が入っています。この気泡の中身は、空気なので透明です。しかし空気を包んでいる表面が可視光よりも大きいためその部分で反射が起こります。

 このように、純粋に分子のみでできていて、可視光の波長よりも塊が小さなものは、透明になります。従って、かなりのものが透明のはずです。しかし、ほとんどのものには色がついています。では、どうして色が着いているのでしょうか?
 それについては、次回書きたいと思います。

前回の記事と参考記事

 透明であること(1)

 光沢とは何を見ているのだろう?(1)

 光沢とは何を見ているのだろう?(2)

それ以外の記事

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