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光沢とは何を見ているのだろう?(2)

 前回の話で、「金属光沢は、光をほぼ100%反射することで輝いて見える」と書きました。そして、「自由電子の動きが金属光沢を作っている」とも書きました。今回は、この2つを結びつけます。

 まず、光です。光って、なんかつかみどころのないものですよね。目には見えているけれど実際に手に取ることができない。そう、光には質量がないので実際にそれを持つことができません。その上、すごいスピードで移動しています。光は1秒間に地球を七周半します。なにせ、光よりも早い速度のものはこの宇宙にはないらしいのです。そして、光の発生源は原子や分子です。原子や分子が何らかの反応でエネルギーを放出するときに光なって外部へ飛び出します。

 いつもお世話になっている太陽の光も、水素原子が核融合してヘリウムになるときに放出されたエネルギーが光となって地球に届いているのです。

 光のもう一つの特徴は、光自体が振動していることです。この振動を1秒間に何回振動するかで表したのが周波数です。ラジオなどでよく「〇〇〇Hz(ヘルツと読む)でお送りしています」などといいますがあれはそのラジオ局が使っている電波の周波数を知らせて、その周波数にラジオのメモリを合わせてもらうために放送しています。

 このような光や電波と同じ特徴を持つものを総称して電磁波といいます。電磁波は波長によって図のように分類されます(だだし、X線とγ線は発生源に起因する名前のため波長では線引きできません)。

 この中で我々の目で見えるのは、水色で示してある可視光という部分です。電磁波全体から見れば、非常に狭い範囲(約400nm~約800nm前後)の電磁波しかヒトは見えていないことになります。

 さて、話が少しそれていますので、元に戻すと、太陽光をはじめとした金属に降りそそぐ光は、常に振動しています。そして、その振動は波長が短いほど早く振動します。図では、右の方が波長が長いので振動が遅く、左にいくにつれ波長が短くなり振動が速くなっていきます。

 前回説明した金属にはたくさんの自由電子が存在します。この自由電子は、降りそそぐ光の振動の影響を受けて自らも振動します。ただし、どの振動にも追従できるわけではなく、振動が速くなっていくと追従できなくなります。図では、ちょうど可視光あたりが、自由電子が追従できる限界にあたります。

 光の振動に追従できているときは、金属の内部に光は届かず、全て金属表面で反射されます。そう、光沢とは、降りそそがれた光に呼応し自由電子が、振動することで、降りそそがれた光を金属表面で反射したものだったのです。

 銀の場合、我々に見える可視光の領域の光をほぼ全て反射します。そのため、反射された光は普通の光と同じ透明な光となって輝くのです。

 金の場合は、600nm(ナノメートルと読む)よりも波長の長い(振動数が低い)光を100%反射していますが、それよりも波長の短い(振動数が高い)光には追従できなくなり、光を吸収します。そのため黄味がかった輝きになります。銅は金よりももう少し波長の長い部分までしか100%反射できないので、赤みを帯びた輝きになります。

 参考までに可視光の波長と色を載せた図を示します(ただし、グラディエーションを使って作っているため正確ではありません。あくまでもイメージとして利用下さい)。

 このように、光沢とは、金属が金属結晶を作る過程で自由に動けるようになった電子が外部からやってきた光に対して、光と同じ周波数で振動することで、光を表面で跳ね返すことで光っている現象です。そして、金属によって輝きかたや色が違うのは、金属によって呼応できる光の周波数領域が異なるためだったのです。

 一応、ここまでで、話は終わりなのですが、次回は光沢に関してちょっとした余談を書いてみたいと思いますので、おつき合い頂けるとうれしいです。

前回の内容は こちらです。

光沢とは何を見ているのだろう?(1)

参考として、

生物のサイズはなぜ今のサイズなのか?(1)

生物のサイズはなぜ今のサイズなのか?(2)

生物のサイズはなぜ今のサイズなのか?(3)

生物のサイズはなぜ今のサイズなのか?(4)

をご覧下さい。

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