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生物のサイズはなぜ今のサイズなのか?(4)

 前回は、「気まぐれな分子の動きに影響を受けないためにはある程度の大きさが必要なのだが、どうも遺伝子のサイズはこれに当てはまらない」という話で終わりました。そして遺伝子に記録されている内容が世代を超えて継承されていくことを考えるとただ大きいサイズにすればいい、ということではないらしいことも最後に述べました。

 いままで、分子についてあまり説明してきませんでしたが、もう少し分子について説明する必要がありそうです。分子は、同じ元素(酸素原子とか炭素原子とか水素原子)である必要はないのですが、原子同士がくっついたものの総称です。従って原子がいくつ含まれていてもすべて分子と言えます。また、分子は、原子よりも安定している状態です。そう、原子はそれぞれがくっついて、分子になった方が単独でいるよりも落ち着いていることができます。

 ちょっと例えを変えると、原子が点もしは球のようなものだとすると、分子は線または糸のようなものです。原子が点でありそれ以上形を変えることができないのに対し、線は長く延びていくことができます。また輪のようにもなれますし、くしゃくしゃになってまとまることもできます。

 短い糸(分子)ほど、温度が高いと活発に動き回れます。一般的にいうと、気体や液体といわれる状態です。そして長い糸ほど動きにくくなり、常温では固定として振る舞いまうようになります。

 また、同じ原子や分子が結晶をつくってたくさん集まった状態をつくる場合もあります。金属はこうして結晶構造をとったものです。岩塩は塩の結晶です。

 そして、糸を断ち切るためにはある程度のエネルギーが必要です。つまり、分子を分解するには、はさみの役割をするエネルギーが必要になります。

 同じ長さの分子でも、直線でいる場合と弓状になった場合とがあるとします(実際はこんな風にはなっていないのですがこれはあくまで例えとして聞いて下さい)。実は分子は、直線の状態から弓状の状態に連続的にゆっくりと変化しません。一定のエネルギーをもらって一気に直線から弓状の状態へ移ることしかできないのです。コマ飛びのように飛び飛びでしか形を変えることができません。

 従って、分子を切断するときのはさみもどんなエネルギー量でもいいわけではありません。切断するのに最低限必要な量のエネルギーがないと切断ができません。なおかつ、切断できる場所もある程度制限を受けます。

 では、分子を切断するにはどれくらいのエネルギーが必要なのでしょうか。ここで言っているエネルギーとは太陽光の光だと思って下さい。それ以外のエネルギーももちろんあるのですが、地球上で影響を受けるエネルギーの代表が光です。

 光にはいろいろな種類があります。人間が見ることができる可視光や、リモコンなどに使われている赤外線、お肌の天敵と言われる紫外線などがあります。光は波長という光の周期で分類されています。この中では赤外線が一番は波長が長く、エネルギー量が少なく、次に波長が長く、エネルギーが低いのが、可視光、そして、一番エネルギーが高いのが紫外線と言うことになります。光(電磁波)は波長が短い方がエネルギーが高くなります。紫外線よりも短いものとしては、レントゲンで使用されるX線やガンマー線など放射線というものもあります。

※ 光の波長の種類については、このページをご覧ください。

 分子に影響を与えるほど高いエネルギーを持った光は紫外線と放射線を含めた波長の短い光です。可視光を含む波長の長い光は、分子を切断したりする力はありません。

 これまでの話は、分子が飛び飛びのエネルギー準位(量子化)で安定していて、それを壊すのには紫外線以上の高いエネルギー量が必要であることを例えています。

 こうしてみると、ものが安定している状態を保つためには、分子になっていることが非常に重要に思われてきます。

 ここで、シュレーディンガーは、「遺伝子が原子数が100万程度の1つの分子であることがわかっていることを伝えます。

 原子数が数千個程度繋がった分子を高分子といいます。高分子の代表的な例は、ポリエチレンとか塩ビなどのプラスチックです。これらのプラスチックは普段の生活でごく普通に使われていますが、不当に放置されるとすぐには土中で分解せずに残ってしまうため、やっかいもの扱いされることもあります。見方を変えると非常に長持ちするものということがいえます。

 実は、遺伝子もタンパク質という高分子でできていて、非常に安定した分子なのです。遺伝子ぐらい大きくなると、紫外線ではあまり影響を受けません。X線などの放射線が一定量以上照射されたときにしか影響を受けないのです。

 普段の生活でX線を遺伝子が影響を受けるほど浴びる確率は非常に小さいため、遺伝子に突然変異が起きることは非常に希なことになります。だから、遺伝子は末永く継承されていくのです。

 こうしてい見ると、原子が分子をつくることで原子よりも安定な状態となり、特に重要な分子はたくさんの原子が結合した高分子というかたちをとっていることも生命を維持するのに重要であることがわかります。

 この原子と原子との結合は原子に含まれている電子を共有することで結びついていますので共有結合と呼ばれています。

 生き物は、共有結合で高分子をつくることと物質代謝でいらなくなったものを外へ上手に捨てることで体を維持していることになります。そして、これらの役割をヒトの寿命の間維持するために今のサイズでなければならないということになります。

前回までの内容は下記を参照ください。

生物のサイズはなぜ今のサイズなのか?(1)

生物のサイズはなぜ今のサイズなのか?(2)

生物のサイズはなぜ今のサイズなのか?(3)

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